2014年05月15日

喘息の治療(2)

●喘息の治療(2)

その他の薬物 が特定の状況下でまれに使用される。

症状がアレルギーにより誘発される場合には,病歴によって示唆されてアレルギー検査で確定されれば,免疫療法が適応となりうる。

免疫療法は成人よりも小児において成功する場合が多い。

24カ月経過するまでに症状に有意の改善がみられなければ,治療を中止する。

症状が軽減すれば,少なくとも3年間は治療を継続すべきであるが,治療の最適継続期間は分かっていない。

高用量の経口コルチコステロイドへの依存を減らすために,コルチコステロイドの減量が可能な薬物がときに処方される。

それはどれも全て明らかな毒性をもっている。



低用量メトトレキサート(5〜15mg/週)はFEV1 を軽度に改善し,毎日の経口コルチコステロイドの使用量を若干減少(3.3mg/日)させうる。


金およびシクロスポリンもある程度有効であるが,毒性とモニタリングの必要性からその利用は限られている。

オマリズマブは抗IgE抗体で,IgEレベルが高い重症のアレルギー性喘息患者が使用するために開発されたものである。

これは経口コルチコステロイドの必要性を減らし,症状を緩和する。

投与量は患者の体重およびIgEレベルに基づいた用量チャートで決定される;薬剤は2週間毎に皮下注射にて投与される。


慢性喘息の管理のためのその他の治療法には,ネブライザーを用いたリドカインやヘパリン,コルヒチン,高用量の静注免疫グロブリンがある。

これらの薬物療法の有用性を裏づける証拠は限られており,その有効性も証明されていないため,いずれも臨床での使用はまだ推奨できない。




治療に対する反応のモニタリング: 最大呼気流量(PEF)検査(気流と気道閉塞の測定)は,治療に対する反応を記録すること,および患者の記録による日誌を通し,実生活の環境における疾患の重症度の変化の傾向をモニタリングすることによって,喘息増悪の重症度を確定するのに役立つ。家庭におけるPEFのモニタリングは,中等症から重症持続型喘息患者において疾患の進行および治療に対する反応を記録するのに特に有用である。

喘息の症状がないときは,朝1回のPEF測定で十分である。

PEFが患者の最良値の80%未満まで減少した場合,1日に2回測定して日内変動を評価することは有用である。

20%を超える日内変動は,気道の不安定性および治療計画を再検討する必要性を示唆する。





●患者教育: 患者教育の重要性はいかに強調してもし過ぎることはない。

患者は,何が発作を誘発するのか,どの薬をいつ使用するのか,適切な吸入器使用の技術,スペーサーはどのようにして定量噴霧吸入器(MDI)と一緒に使用するのか,増悪時のコルチコステロイドによる早期治療の重要性など,喘息についてよく知れば知るほど,よりよく対処できる。

個々の患者は,日々の管理に対する,特に急性発作時の管理に対する文書化した治療計画をもっているべきであり,その計画は予測正常値よりも患者個人の最良ピークフローに基づくものであるべきである。

そうした計画は喘息のコントロールを大いに改善するが,それは主に治療法がより忠実に守られることによる。




●急性増悪の治療: 喘息増悪の治療の目標は,症状を軽減し,患者のPEFが自己最良値に回復することである。

急性増悪に対しては,吸入アルブテロールまたは類似の短時間作用型β作動薬を自己投与し,可能ならPEFを測定するように患者に指導すべきである。

MDIによる2?4パフを最大20分の間隔で最高で3回投与すると気分がよくなる患者,およびPEFが基準の80%以上を示す患者は,在宅で急性増悪を管理できる。

反応しないか,重度の症状があるか,またはPEFが80%未満である患者は,医師の作成した治療管理プログラムに従うか,薬物による治療のため救急診療部を受診すべきである。



吸入気管支拡張薬(β作動薬および抗コリン薬)が救急診療部における喘息治療の主力である。

成人および児童において,アルブテロールのMDIとスペーサーによる投与は,ネブライザーによる投与と効果は同じである。

幼児では,MDIとスペーサーをうまく使いこなすのが難しいため,ネブライザーによる治療が優先される;ネブライザーがO2よりヘリウム-O2. (heliox)で噴射されると,気管支拡張薬に対する反応が向上することが最近の証拠から示唆される。


小児にはエピネフリン1:1000溶液またはテルブタリンの皮下注射が代替となる。

テルブタリンは,心血管作用がより少なく,作用期間がより長いため,エピネフリンより好ましいが,大量生産されなくなり,高価である。



β 作動薬の皮下投与は,心刺激性の有害作用があるため,理論上成人には問題がある。

しかしながら,臨床的に明らかな有害作用は少ないので,皮下投与は,最高用量の吸入療法にも反応しない患者,または効果的な噴霧式治療が受けられない患者(例,過度の咳が出る,低換気がある,または非協力的な患者)には有益となりうる。


アルブテロール単独では十分に反応しない患者には,噴霧イプラトロピウムと噴霧アルブテロールの同時投与が行える;第1選択の治療に高用量β作動薬とイプラトロピウムの同時投与が好ましいことを示す証拠が一部あるが,β作動薬の連続噴霧投与が間欠投与より好ましいとするデータはない。

テオフィリンは治療にはほとんど役立たない。




全身投与コルチコステロイド(プレドニゾン,プレドニゾロン,メチルプレドニゾロン)は非常に軽い急性増悪を除いて,全ての患者に投与すべきである;気管支拡張薬の1回または2回の投与でPEFが正常になる患者には必要ない。

静注および経口の投与経路は同等に効果がある。



メチルプレドニゾロンは,静脈ラインがすでに確保されている場合は静注投与できるが,経口に変更する必要があるとき,もしくはそのほうが都合のよいときはいつでも経口投与に変更できる。

通常7〜10日目以降に用量を減らしはじめ,2〜3週間かけて漸減すべきである。





抗生物質の適応は,病歴,診察,または胸部X線により細菌感染が背景にあることが示唆される場合だけである;喘息増悪の背景にある感染症のほとんどはウイルスによるが,マイコプラズマやクラミジアも最近の研究対象集団において証明されている。

O2が適応となるのは,喘息増悪の患者がパルスオキシメトリーによる測定またはABG測定でO2satが90%未満である場合である;O2は低酸素血症を是正するのに十分な流量または濃度を鼻カニューレかフェイスマスクにより投与すべきである。



不安が喘息増悪の原因である場合は,安心させることが最良の治療である。

抗不安薬およびモルヒネは,死亡率の増加や機械的人工換気の必要性と関連があるので,相対的禁忌である。


(続く)




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2014年05月14日

喘息の治療

●喘息の治療

喘息―慢性疾患および急性増悪ともに―の治療には,誘発因子のコントロール,疾患の重症度に合わせた薬物治療,治療への反応と疾患の進行のモニタリング,疾患の自己管理が最大限できるようにする患者教育などがある。

治療の目的は,増悪および夜間覚醒などの慢性症状の予防,救急診療部の受診や入院の必要性の最小化,ベースラインの(正常の)肺機能と活動レベルの維持,治療による有害作用の回避などである。



●誘発因子のコントロール: 誘発因子は,一部の患者では,合成繊維の枕および不浸透性の敷布団カバーの使用,シーツ,枕カバー,毛布を湯で頻繁に洗うことで抑制される。

布張りの家具,ぬいぐるみ,絨毯,ペットは避けるべきで(チリダニ,動物のふけ),除湿機を地下室やその他の通気が悪く湿気の多い部屋では使用すべきである(カビ)。

住宅のスチームによるケアによってチリダニアレルゲンは減少する。

誘発因子の抑制が都市環境の中では困難であるからといって,こうした措置の重要性が減るわけではない;ゴキブリへの暴露を住宅の清掃や駆除により回避することは特に重要である。

高性能微粒子(HEPA)電気掃除機やフィルターにより症状は緩和しうるが,それが肺機能および薬物投与の必要性に影響を及ぼすかは証明されていない。



亜硫酸塩に感受性のある患者は赤ワインを避けるべきである。

タバコの煙,強い香り,刺激ガス,低温,高湿度,運動などの非アレルギー性の誘因も,可能なら回避または抑制すべきである。



アスピリン誘発性喘息患者には,アセトアミノフェン,サルチル酸コリンマグネシウム,またはシクロオキシゲナーゼ(COX)-2阻害薬をNSAIDの代わりに使用できる。

喘息は,局所製剤を含む非選択的β遮断薬の使用の相対的禁忌であるが,心選択性薬(例,メトプロロール,アテノロール)では,おそらく有害作用は起こらない。

薬物療法: 慢性喘息および喘息増悪の治療に一般的に用いられる主な薬物群には,気管支拡張薬(β作動薬,抗コリン薬),コルチコステロイド,肥満細胞安定薬,ロイコトリエン修飾薬,メチルキサンチン類がある。

これら薬物群の薬物は吸入または経口で投与される;吸入薬には霧状および粉末状のものがある。

霧状の吸入薬をスペーサーまたはチャンバーを付けた吸入器で投与すると,薬剤が喉頭よりも気道に沈着しやすくなる;細菌汚染を防ぐために,スペーサーは使用するたびに洗って乾かすよう,患者に指示すべきである。

さらに,霧状の吸入薬を使用するには,吸入器の作動(薬剤の供給)と患者の吸入を一致させる必要がある;粉末状の吸入薬は,患者が吸入するときにだけ薬剤が供給されるので調整の必要性は少ない。

さらに,粉末状の吸入薬では,過フッ化炭化水素噴霧剤の環境への放出が軽減される。





β作動薬(βアドレナリン作動薬)は気管支平滑筋を弛緩させ,肥満細胞の脱顆粒およびヒスタミン放出を減らし,気道への微小血管からの漏出を抑制し,粘膜線毛クリアランスを高める。

β作動薬には短時間作用型および長時間作用型がある。



短時間作用型のβ作動薬(例,アルブテロール)は,急性の気管支収縮の緩和および運動誘発性気管支収縮の予防のための選択薬で,必要に応じて2〜8パフの吸入投与を行う。

数分以内に効果が現れ,薬によって最大6?8時間作用する。

長時間作用型の薬物(就寝時に,または1日2回吸入,最大12時間作用する)は,中等症または重症の喘息ばかりではなく,夜間の覚醒を引き起こす軽症の喘息にも用いられる。

また,長時間作用型β作動薬は,吸入コルチコステロイドと相乗的に作用するので,コルチコステロイドの用量を減量できる。



経口β作動薬は全身作用がより強いので,一般には避けるべきである。

頻脈および振戦が,吸入β作動薬の最も一般的な急性の有害作用で,用量に依存する。低カリウム血症がまれに起こるが,その程度は軽い。



β作動薬の長期常用の安全性には議論がある;常用は,おそらく過剰使用の可能性もあり,死亡率の上昇に関連するが,それが有害作用なのか,あるいは他の薬物では治療が十分ではないため常用しているのかは不明である。

β作動薬の毎日の使用,用量の増加または効果の減弱,もしくは1カ月月に1缶またはそれ以上の使用は,喘息のコントロールが不十分であり,他の治療法を開始または強化する必要があることを示唆する。

レバルブテロール(アルブテロールのR-異性体を含む溶液)の使用は,理論的には有害作用を最小化するが,その長期的効果と安全性は証明されていない。




抗コリン薬は,ムスカリン性(M3)コリン受容体の競合的阻害により気管支平滑筋を弛緩させる。

イプラトロピウムは,喘息に単独で使用すると効果は小さいが,短時間作用型β作動薬と併用すると相加効果がありうる。

有害作用には,散瞳,眼のかすみ,口渇がある。チオトロピウムは24時間作用型の吸入抗コリン薬であるが,喘息への使用は評価が十分に行われていない。



コルチコステロイドは,気道の炎症を阻害し,β受容体のダウンレギュレーションを回復させ,ロイコトリエン合成を遮断し,サイトカインの産生および接着蛋白の活性化を阻害する。

コルチコステロイドは,吸入アレルゲンに対する遅延反応を遮断する(しかし早期反応は遮断しない)。

投与経路には経口,静注,吸入がある。

急性喘息増悪では,初期における全身投与コルチコステロイドの使用がしばしば増悪を回避させ,入院の必要性を減らし,再発を防止し,回復を早める。

経口投与と静注投与は,同等の効果がある。



吸入コルチコステロイドは,急性増悪では有用ではないが,長期の抑制,コントロール,炎症や症状の回復には適応となる。

吸入コルチコステロイドは,経口コルチコステロイドによる維持療法の必要性をかなり減らし,未治療の喘息に特徴的な肺機能の悪化を遅らせたり止めたりすることから,疾患修飾薬と考えられている。

吸入コルチコステロイドの局所の有害作用には,発声障害および口腔カンジダ症があるが,スペーサーの使用および/またはコルチコステロイド吸入後のうがいによって,防止または最小限にできる。

全身性の有害作用は全て用量依存性で,経口でも吸入でも起こりうるし,主に吸入量が800μg/日を超えると起こる。

それらには,副腎-下垂体軸の抑制,骨粗鬆症,白内障,皮膚萎縮,過食症,易傷性などがある。吸入コルチコステロイドが小児の成長を抑制するかは議論がある:ほとんどの子供は予測された成人身長に達する。

非活動性結核がコルチコステロイドの全身投与によって再活性化しうる。





肥満細胞安定薬は肥満細胞からのヒスタミン放出を阻害し,気道反応性亢進を軽減し,アレルゲンに対する早期反応や遅延反応を遮断する。

この薬は運動誘発性およびアレルゲン誘発性の喘息患者に予防的に吸入される;しかし,一度症状が出現してしまうと効果はない。

全ての抗喘息薬の中で最も安全であるが,最も効果が少ない。



ロイコトリエン修飾物質は経口で投与され,軽症持続型から重症持続型までの喘息患者において,長期管理および症状の予防に用いることができる。

主な有害作用は肝酵素の上昇である;極めてまれにチャーグ-ストラウス症候群に似た症候群を発症させる。



メチルキサンチン類は(おそらく非選択的にホスホジエステラーゼを阻害することによって)気管支平滑筋を弛緩させ,また,機序は不明であるが,心筋および横隔膜の収縮能を改善させうる。

メチルキサンチン類はカルシウムの細胞内放出を阻害し,微小血管からの気道粘膜への漏出を減少させ,アレルゲンに対する遅延反応を阻止するようである。

また,気管支粘膜への好酸球の浸潤や上皮へのTリンパ球の浸潤を減少させる。


メチルキサンチン類はβ作動薬の補助薬として長期のコントロールに使用される;徐放性テオフィリンは夜間覚醒の管理に有用である。

この薬は他の薬に比べて有害作用および相互作用が多いため,使用されなくなってきている。有害作用には,頭痛,嘔吐,不整脈,痙攣などがある。


メチルキサンチン類の治療域は狭い;また,複数の薬物(チトクロムP450経路により代謝されるものはどれでも,例,マクロライド系抗生物質)および病態(例,発熱,肝疾患,心不全)がメチルキサンチンの代謝と排泄を変化させる。

血清テオフィリン濃度は定期的にモニターし,濃度は5?15 μg/mL(28〜83 μmol/L)に維持すべきである。


(続く)


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2014年05月13日

喘息の診断

●喘息の診断

診断は病歴と身体診察に基づき,肺機能検査を用いて確認する。基礎疾患の診断,および喘鳴の原因となる疾患の除外も,重要である。

肺機能検査: 喘息が疑われる患者には,気道閉塞の重症度,および可逆性の判定ならびに定量化のため,肺機能検査を行うべきである。

肺機能検査のデータの質は,患者の努力に左右されるため,検査前には患者の教育が必要である。


気管支拡張薬は,中止しても問題がないのであれば,検査前に中止すべきである:アルブテロールなどの短時間作用型β作動薬では6時間前;イプラトロピウムでは8時間前;テオフィリンでは12?36時間前;サルメテロールおよびフォルモテロールなどの長時間作用型β作動薬では24時間前;チオトロピウムでは48時間前に中止する。


肺活量測定(肺機能検査を参照 )は,短時間作用型気管支拡張薬の吸入の前後に行うべきである。

気管支拡張薬吸入前の気道閉塞の徴候には,最初の1秒間の努力呼気量(FEV1)の減少およびFEV1の努力肺活量に対する比(FEV1/FVC)の低下などがある。

FVCも減少しうる。肺気量測定では,エアトラッピングによる残気量および/または機能残気量の上昇が示されうる。



気管支拡張薬による治療に反応してFEV1が12%以上または0.2L以上改善すれば,可逆性の気道閉塞が確定されるが,この所見がなくても気管支拡張薬による治療の試みを除外すべきではない。

肺活量測定は,喘息と診断されている患者では少なくとも年1回,疾患の進行を監視するために,行うべきである。



フローボリューム曲線も,上気道閉塞(喘息に似ている)の一般的な原因である声帯機能障害の診断または除外のために調べるべきである。

誘発検査では,吸入メタコリン(または代わりに吸入ヒスタミン,アデノシン,ブラジキニン,または運動負荷検査など)を使用して気管支収縮を誘発するが,検査が適応となるのは,喘息が疑われる患者で肺活量測定およびフローボリューム検査が正常である場合,咳喘息である場合,禁忌がない場合である。

禁忌には,FEV1が1L未満または50%未満,最近発症の心筋梗塞または脳卒中,重度の高血圧(収縮期血圧200mmHg以上,拡張期血圧100mmHg以上)が含まれる。

FEV1が20%以上低下していれば,喘息の診断が裏づけられる。

しかしながら,FEV1はCOPDなど他の疾患でも,これらの薬物に反応して減少しうる。





●その他の検査: その他の検査は状況によっては有用である。

一酸化炭素拡散能(DLco)検査はCOPDと喘息との鑑別に有用である。

数値は,喘息では正常か上昇しており,COPDでは,通常低下しており,特に肺気腫があれば低下している。



胸部X線は,喘息の背景にある原因,またはその他の診断,例えば心不全もしくは肺炎などを除外するのに有用である。

喘息の胸部X線は通常正常であるが,粘液栓の徴候である過膨張または区域性無気肺を示すこともある。

浸潤影は,特に出没し,中枢気管支拡張の所見と関連する場合,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症を示唆する。



病歴からアレルギー性誘因が示唆される小児は全て,(免疫療法の対象となる可能性があるため)アレルギー検査が適応される。

病歴がアレルゲン回避により症状が緩和されたことを示唆する成人,および治療的抗IgE抗体療法(喘息: 薬物療法を参照 )の試用が検討されている人には,アレルギー検査を考慮すべきである。

皮膚検査および放射性アレルゲン吸着試験(RAST)によるアレルゲン特異的IgEの測定によって,アレルギーの特異的誘因を同定できる(アレルギー性およびその他の過敏性疾患: 特異的検査を参照 )。


血中好酸球数の上昇(400/μL以上)および非特異的IgEの上昇(150IU以上)は,アレルギー性喘息を示唆するが診断を確定しない,なぜなら他の種々の病態でも上昇しうるからである。


喀痰の好酸球検査は一般的には行われていない;好酸球が多数見つかれば喘息を示唆するが,感度がよいわけでも特異的でもない。

安価な携帯型の流量計を用いたピークフロー(PEF)測定は,疾患の重症度の在宅モニタリングや治療の参考にするために推奨される。




●増悪の評価: 喘息と分かっている患者が急性増悪を起こした場合は,パルスオキシメトリー,およびPEFまたはFEV1のいずれかを測定すべきである。

これらの測定は3つとも,増悪の重症度の判定,および治療に対する反応の記録に有用である。

PEF値は患者の自己最良値を対象に評価するが,これは同じくらい十分にコントロールされている患者の間でも大きく異なる。

ベースラインからの15?20%の低下は,有意な増悪を表す。

基準値が分からないときは,%予測値によって,気流量制限のおおよその見当はつくが,個々の患者の悪化度は不明である。

ほとんどの増悪では胸部X線検査を行う必要はないが,肺炎または気胸を示唆する症状のある患者には行うべきである。

ABG測定は,著しい呼吸促迫,または切迫した呼吸不全の徴候や症状のある患者には行うべきである。





●予後

喘息のある小児のほとんどで喘息は治るが,4人に1人は喘鳴が成人まで持続するか,数年後に再発する。

女性であること,喫煙,若年での発症,住宅のチリダニへの感作,気道過敏性は,持続および再発の危険因子である。



米国では,喘息が原因となる死亡者数は年間に約5000人で,その大半は治療すれば回避できる。

したがって,適切な治療を受け,医師の指示を守ると,予後は良好である。

死亡の危険因子には,入院前に経口コルチコステロイドの必要量が増えること,急性増悪による入院歴,診察時のピークフロー低下がある。

いくつかの研究は,吸入コルチコステロイドの使用が入院および死亡率を減少させることを示している。



一部の喘息患者では,時間の経過とともに気道が永久的な構造的変化(リモデリング)を起こし,正常な肺機能に戻るのを妨げる。

抗炎症薬の早期の積極的使用が,このリモデリングを防ぐのに有用な可能性がある。


(続く)

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2014年05月11日

喘息とは?

●喘息とは?

喘息は,気道のびまん性炎症による疾患で,部分的または完全に可逆的な気管支収縮を生じさせる様々な誘発的刺激により引き起こされる。

症状と徴候には,呼吸困難,胸部圧迫感,喘鳴などがある。診断は病歴,身体診察,肺機能検査に基づく。

治療には誘発因子の制御および薬物療法が必要で,吸入β作動薬および吸入コルチコステロイドを用いるのが最も一般的である。

治療を行えば予後は良好である。



●疫学

喘息の有病率は1970年代以来増加し続けており,現在,世界人口の推定4?7%が喘息にかかっている。

米国では約1200万?1700万人が喘息にかかっている;1982年から1992年の間に有病者数は1000人当たり34.7人から49.4人に増加した。

有病率は,18歳未満(6.1%)が18?64歳(4.1%)より高く,思春期前では男性が,思春期後では女性が高い。

都市部の住民,黒人,および一部のヒスパニック系集団で高い。

喘息による死亡率も上昇しており,米国では喘息による死亡者は年間に約5000人である。

死亡率は黒人が白人よりも5倍高い。喘息は,小児の入院の主たる原因であり,小学校の不登校の原因となっている第1の慢性疾患である。

2002年の喘息の医療費は,総額140億ドル(約1兆5000億円)であった。




●病因

喘息の発症は多因子によるもので,複数の感受性遺伝子と環境因子の相互作用による。

感受性遺伝子には,ヘルパーT2(TH2)細胞とそのサイトカイン(IL-4,IL-5,IL-9,IL-13)の遺伝子,および最近同定されたADAM33遺伝子(気道の平滑筋および線維芽細胞の増殖を刺激したり,サイトカインの産生を調節している可能性がある)が含まれていると考えられている。



住宅(チリダニ,ゴキブリ,ペット)およびその他の環境(花粉)アレルゲンが,児童や成人の喘息発症に関連していることを示すはっきりした証拠がある。

生涯の早い時期の内毒素感染または暴露は,耐性を引き起こすこともあり,防御ともなりうる。大気汚染と喘息発症との関連は決定的ではないが,大気汚染は増悪を誘発しうる。


ビタミンCとE,およびω-3脂肪酸が少ない食事は,肥満と同様に,喘息と関連があるとされている。

喘息は周産期の要因,例えば若年の母親,母親の栄養不良,早産,出産時低体重,母乳不足などとも関連があるとされている。

小児期のタバコの煙への暴露については,寄与効果があるとする研究と防御効果があるとするものと両論ある。

窒素酸化物および揮発性有機化合物の室内暴露は,喘息の既往歴のない人における持続性の可逆性気道閉塞症候群である反応性気道機能不全症候群(RADS)の発症と関連がある。

RADSが喘息とは別のものなのか,職業性喘息の一形態なのかには議論の余地があるが,2つの病態には類似点(例,喘鳴,呼吸困難,咳)が多く,コルチコステロイドに反応する。




●病態生理と分類

遺伝的要素および環境的要素は,ヘルパーT1(TH1)細胞系とTH2細胞系のバランスを決定するという機序で,相互に作用する可能性がある。

専門家の考えによれば,乳児は,好酸球の発育と活性化およびIgE産生に特徴づけられる,アレルギー誘発性および炎症誘発性TH2免疫応答の素因をもって生まれるが,幼児期早期の細菌感染,ウイルス感染,および内毒素への暴露で,体はTH1応答へと移行し,それによってTH2細胞が抑制され,免疫寛容が起きる。先進国における小家族化と少子化,清潔な室内環境,ワクチンや抗生物質の早期使用の傾向は,これらTH2抑制性の,寛容誘発の暴露の機会を小児から奪うことにもなっており,先進国において喘息の有病率が上昇し続けている理由の一部を説明する(衛生仮説)。



喘息患者では,これらTH2細胞およびその他の細胞系―とりわけ好酸球および肥満細胞,そして他のCD4+亜型および好中球も―が,広範な炎症性浸潤を気道上皮および平滑筋に形成し,落屑,上皮下の線維化,平滑筋肥厚を引き起こす。

平滑筋の肥厚は気道を狭窄し,アレルゲン,感染,刺激物,副交感神経系刺激(サブスタンスP,ニューロキニンA,カルシトニン遺伝子関連ペプチドなどの炎症誘発性神経ペプチドの放出を引き起こす),および,その他の気管支収縮の誘因への反応性を増大させる。



気道の反応性亢進の他の要因には,気管支収縮抑制因子(上皮由来弛緩因子,プロスタグランジンE2)の欠損,および上皮や粘膜浮腫が剥離した結果生じた内因性気管支収縮物質(エンドペプチダーゼ)を代謝するその他の物質の欠損なども含まれる。

粘液塞栓および末梢血好酸球増加もまた喘息における古典的所見であり,気道炎症の随伴徴候でありうる。



喘息発作の一般的な誘因には,環境性および職業性アレルゲン;感染(幼児におけるRSウイルスおよびパラインフルエンザ感染,児童および成人における上気道感染および肺炎);運動,特に寒冷または乾燥した環境において;刺激物の吸入(大気汚染);不安,怒り,興奮などがある。

アスピリンは,より年齢の高い喘息患者の最大30%において,またはより重症の喘息患者において誘因となり,典型的に鼻および副鼻腔のうっ血を伴う鼻ポリープとつながりがある。



胃食道逆流症(GERD)は,最近,喘息の一般的な誘因として認識されている(おそらく食道の酸による反射性気管支収縮を経て,または酸の微小吸引によって喘息を引き起こす)。

アレルギー性鼻炎はしばしば喘息と共存する;しかし,両者が同じアレルギー反応の過程で生じる異なった症状なのか,または鼻炎が1つの個別的な喘息誘因なのかは不明である。


誘因が存在すると,喘息に特徴的な病態生理学的変化により,可逆性の気道閉塞や不均等な肺換気が起こる。

閉塞した領域では相対的な血流量が相対的な換気量を上回り,その結果として肺胞O2分圧が低下し,肺胞CO2分圧が上昇する。ほとんどの患者は過換気により代償することができ,それによってPaco2を正常値の範囲内に維持する。

しかし重度の増悪では,びまん性の気管支収縮が重度のエアトラッピングを引き起こし,呼吸筋は力学的に著しく障害され,吸気力を発生させられず,呼吸仕事量が増加する。

これらの状態の下では,低酸素血症および過度の労作がさらに悪化し,Paco2が上昇する。



呼吸性および代謝性アシドーシスが生じることもあり,治療しないまま放置すると,呼吸停止および心停止に至る。

喘息は症状により4つに分類される―軽症間欠型,軽症持続型,中等症持続型,重症持続型である。

喘息は様々な経過を辿るので,1人の患者の間でも分類が変わることもある。

分類に関係なく,患者には軽症,中等症,重症の増悪が起こりうる。

例えば,軽症間欠型の喘息患者の一部では,肺機能が正常で,症状がないときと軽症のときがある期間が長く続いた後に,生命を脅かす重症の増悪が起こる。

喘息発作重積状態という用語は,治療抵抗性の,重篤で激しい持続性の気管支痙攣を意味している。

喘息とCOPDはときに混同されやすい;両者は類似した症状を引き起こし,肺機能検査も類似した結果を示すが,必ずしも臨床的には明白ではない重要な生物学的機序が異なっていると考えられる。




●症状と徴候

軽症間欠型または軽症持続型の喘息患者では,通常,症状のあるときの合間に無症状のときがある。

さらに重症の患者または増悪患者では,呼吸困難,胸部圧迫感,喘鳴の聴取,咳の症状がある;しかし,一部の患者では,咳が唯一の症状となりうる(咳喘息)。

症状は日周期リズムで変化し,睡眠中(しばしば午前4時頃)に悪化する。

さらに重症の患者の多くは,夜間覚醒を伴う(夜間喘息)。



徴候には喘鳴,奇脈(吸気中に収縮期血圧が10mmHg以上低下―心疾患患者へのアプローチ: 奇脈を参照 ),頻呼吸,頻脈,目に見える努力呼吸(首や胸骨の筋肉[補助筋]の使用,直立姿勢,すぼめた唇,会話不能)がある。

呼吸の呼気相が長くなり,吸気:呼気の比は少なくとも1:3となる。


喘鳴は両相で,または呼気相だけで存在することもある。

重症の気管支収縮患者では,著しく気流が制限されているため,喘鳴が聞こえないこともある。


重症の増悪および切迫呼吸不全患者は,典型的に,意識変化;チアノーゼ;15mmHg以上の奇脈;O2飽和度(O2sat)が90%未満;Paco2が45mmHg以上(海面レベル);過膨張のうち,いくつかを有する。

まれに,気胸または気縦隔が胸部X線上でみられる。



症状および徴候は,急性喘息の発作と発作の間では消失するが,一部の無症状患者では軽微な喘鳴が,強制呼気時,運動後,および安静時に聞こえうる。

長期間コントロールされていない喘息患者では,肺の過膨張が胸壁を変化させ,樽状胸郭を来す。

全ての症状や徴候は非特異的であり,時宜を得た治療を行えば可逆的であり,典型的には1つまたはそれ以上の誘因への暴露により引き起こされる。


(続く)


posted by ホーライ at 09:30| Comment(0) | TrackBack(0) | アレルギー性疾患 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

次の説明文に該当する項目は?「筋肉内でクレアチンから産生される非蛋白性の窒素化合物。」

問題1.次の説明文に該当する項目は?

血液中に含まれる尿素窒素。腎機能の指標として広く利用され、腎不全、熱傷、消化管出血や高蛋白食摂取で上昇。

(1)尿素窒素(UN)

(2)hANP













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   答え
」」」」」」」」」」」」

(1)尿素窒素(UN)


【参考】

(2)hANP = ヒト心房性Na利尿ポリペプチド












問題2.次の説明文に該当する項目は?

筋肉内でクレアチンから産生される非蛋白性の窒素化合物。

食事など外的因子の影響を受けない腎機能の優れた指標。


(1)カルシトニン

(2)クレアチニン(CRE)












」」」」」」」」」」」」
   答え
」」」」」」」」」」」」

(2)クレアチニン(CRE)

【参考】

(1)カルシトニン 

甲状腺から分泌されるペプチドで、血中カルシウム濃度を低下させる作用がある。

甲状腺髄様癌にて高値。


posted by ホーライ at 03:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 臨床検査 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月09日

『アレルギー性鼻炎』について、ちょっと調べてみる?

アレルギー性鼻炎は,季節性または通年性のかゆみ,くしゃみ,鼻漏,鼻うっ血,ときに結膜炎をさし,花粉または他のアレルゲンへの暴露によって引き起こされる。

診断は病歴と皮膚試験による。

治療は,抗ヒスタミン薬,うっ血除去薬,鼻用コルチコステロイド,および重度で難治性の症例には脱感作の併用により行う。

アレルギー性鼻炎は,季節的に(花粉症)または1年を通じて(通年性鼻炎)起こる。

通年性鼻炎の少なくとも25%は非アレルギー性である。

季節性鼻炎は,春は樹木の花粉(例,カシ,ニレ,カエデ,ハンノキ,カバ,ネズ,オリーブ),夏はイネ科の草の花粉(例,ギョウギシバ,オオアワガエリ,ハルガヤ,カモガヤ,セイバンモロコシ)および雑草の花粉(例,オカヒジキ,オオバコ),秋は雑草の花粉(例,ブタクサ)によって引き起こされる。



原因は地域によって異なり,季節性鼻炎はときに空気中の真菌胞子によって引き起こされる。

通年性鼻炎は,室内の吸入アレルゲン(例,チリダニ,ゴキブリ,動物のふけ,かび)への1年を通じた暴露,または一連の季節の植物の花粉に対する強い反応性によって引き起こされる。


アレルギー性鼻炎および喘息はしばしば共存するが,鼻炎および喘息が同じアレルギーの過程に起因する(one airway,one diseaseの概念)のか,鼻炎は別個の喘息の誘因であるのかは,不明である。

非アレルギー性の通年性鼻炎は,感染性,血管運動性,萎縮性,ホルモン性,薬物性,および味覚性鼻炎を含む。



●症状と徴候

患者には,鼻,眼または口のかゆみ,くしゃみ,鼻漏,ならびに鼻および副鼻腔の閉塞がみられる。

副鼻腔の閉塞は前頭部痛を引き起こすことがあり,副鼻腔炎はよくみられる合併症である。

特に喘息を伴う場合は,咳および喘鳴も起こりうる。

通年性鼻炎の最も顕著な特徴は慢性的な鼻閉塞であり,小児では慢性中耳炎につながることがあるが,1年を通じて症状の重症度は変化する。

かゆみはあまり顕著でない。

徴候は,浮腫状で青みがかった赤色の鼻甲介,および,一部の季節性鼻炎症例においては,結膜充血および眼瞼浮腫を含む。



●診断

アレルギー性鼻炎はほとんど常に病歴のみで診断される。

経験的治療で患者が改善するのであれば診断検査をルーチンに行う必要はないが,皮膚試験で花粉に対する反応(季節性),または,チリダニ,ゴキブリ,動物のふけ,かび,もしくは他の抗原に対する反応(通年性)を示す場合は,追加的治療の指針となりうる。

鼻汁塗抹で好酸球増加が認められ皮膚試験陰性の場合は,アスピリン過敏症または好酸球増多性鼻炎(NARES)が示唆される。

感染性,血管運動性,萎縮性,ホルモン性,薬物性,または味覚性鼻炎の診断は通常,病歴または治療を試みることによって下す。



●治療

季節性および通年性のアレルギー性鼻炎に対する治療は概して同じであるが,通年性鼻炎には環境管理(例,チリダニおよびゴキブリの駆除)を試みることが推奨される。

最も効果的で第一選択となる薬物治療は,経口抗ヒスタミン薬と経口うっ血除去薬の併用,または鼻用コルチコステロイド(アレルギー性およびその他の過敏性疾患: 鼻用吸入コルチコステロイドおよび肥満細胞安定薬表 3: 表参照)の単独投与もしくは経口抗ヒスタミン薬との併用である。


それほど効果的ではないが,代替薬には鼻用肥満細胞安定薬(クロモリンおよびネドクロミル)の1日2回〜1日4回投与,鼻用H1ブロッカーであるアゼラスチンの2噴霧,1日1回投与,および鼻用イプラトロピウム0.03%の2噴霧,4時間〜6時間毎投与があり,鼻漏症状を軽減する。

生理食塩水の鼻吸入は,しばしば忘れられているが,粘度の高い鼻汁の流動化および鼻粘膜の水分補給に有用である。



免疫療法は,通年性よりも季節性のアレルギー性鼻炎に対して効果的であり,症状が重度で,アレルゲンを回避することができず,薬物治療の効果が不十分な場合に適応される。

脱感作の初回投与は,花粉の季節が終了したらすぐに次の季節に備えるために始めるべきである;脱感作を花粉の季節中に開始すると,アレルギー性の免疫応答がすでに最大限に刺激されているため,有害反応が強まる。



モンテルカストはアレルギー性鼻炎の症状を軽減するが,他の治療法に比べるとその役割は不正確である。

アレルギー性鼻炎治療用の抗IgE抗体が研究中であるが,より安価で効果的な代替薬が利用可能であるため,その役割はおそらく限られるだろう。

NARESの治療は鼻用コルチコステロイドである。アスピリン過敏症の治療法はアスピリンを回避することであり,必要に応じて脱感作およびロイコトリエンブロッカーを併用する;鼻ポリープは鼻用コルチコステロイドに反応することがある。


以上


ラベル:鼻炎
posted by ホーライ at 20:58| Comment(0) | TrackBack(0) | アレルギー性疾患 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月08日

アレルギー性結膜炎について

(アトピー性結膜炎;アトピー性角結膜炎;花粉症結膜炎;通年性アレルギー性結膜炎;季節性アレルギー性結膜炎;春季カタル)

アレルギー性結膜炎は,急性,間欠性,慢性の結膜の炎症であり,通常空中アレルゲンにより起こる。

症状には,そう痒感,流涙,眼脂,結膜充血がある。

診断は臨床的に行う。

治療は抗ヒスタミン薬および肥満細胞安定薬の局所投与である。



●病因

アレルギー性結膜炎は,特異抗原に対するT型過敏反応による。

季節性アレルギー性結膜炎(花粉症結膜炎)は樹木,イネ科の草,または雑草の風で運ばれる花粉による。

原因となる植物のライフサイクルに一致して,春,晩夏,または初秋にピークを迎え,冬に消失する傾向がある。

通年性アレルギー性結膜炎(アトピー性結膜炎,アトピー性角結膜炎)は,ダニ,動物の鱗屑,およびその他の非季節性の抗原による。

これらの抗原,特に室内の抗原は,通年の症状を引き起こす傾向がある。

春季カタルは,アレルギーが原因である可能性が最も高い,より重症な結膜炎である。

湿疹,喘息,または季節性アレルギーも有する5〜20歳の男性に最も多い。

春季カタルは,典型的には春になるたびに再発し,秋および冬に沈静化する。多くの小児は,成長とともに成人早期までに治まる。




●症状と徴候

患者は,両眼の強いそう痒感,結膜充血,羞明,眼瞼浮腫,水様または糸を引く眼脂を訴える。

一般的に鼻炎を併発する。

多くの患者は湿疹,アレルギー性鼻炎,喘息など,他のアトピー性疾患を有する。

特徴的所見には,結膜の浮腫と充血,しばしば多くの好酸球を含む粘稠な粘液性眼脂がある。

眼球結膜は半透明で青みがかり,肥厚したように見えることがある。

結膜浮腫および下眼瞼の特徴的なブヨブヨした眼瞼浮腫が一般的である。

季節性および通年性アレルギー性結膜炎では,上眼瞼結膜上の微細な乳頭がビロード様の外観を呈する。

慢性的なかゆみにより,慢性的に眼瞼をこすり,眼周囲の色素沈着過剰,皮膚炎を生じる。

さらに重症の通年性アレルギー性結膜炎では,より大きい眼瞼結膜の乳頭,結膜瘢痕化,角膜新生血管,変動する視力障害を伴う角膜瘢痕化を生じることがある。

春季カタルでは通常,上眼瞼の眼瞼結膜が侵されるが,ときに眼球結膜が侵される。

眼瞼型では,四角の硬く扁平で密に詰まった薄桃色から灰色の“石垣状”乳頭を,主に上眼瞼結膜に認める。

侵されていない眼瞼結膜は,乳白色である。眼球(“輪部”)型では,角膜周囲の結膜が肥厚し,灰白色を帯びる。ときに小さい限局性の角膜上皮欠損が起こり,疼痛を生じ,羞明が悪化する。

症状は通常,寒い季節は消失し,年月とともに軽くなる。




●診断と治療

診断は臨床的に行う。下または上眼瞼結膜から採取した結膜擦過標本中に好酸球を認めるが,このような検査はまれにしか適応がない。

既知の抗原の回避および涙液補充薬の使用により,症状を軽減できるが,抗原脱感作がときに有用である。

軽症例では,一般用医薬品の抗ヒスタミン薬/血管収縮薬(例,ナファゾリン/フェニラミン)の局所投与が有用である。

もし,これらの薬物で十分でなければ,局所処方薬の抗ヒスタミン薬(例,オロパタジン,ケトチフェン),非ステロイド性抗炎症薬(例,ケトロラク),または肥満細胞安定薬(例,ペミロラスト,ネドクロミル)を単独または併用して使用できる。

治療抵抗性の症例では,コルチコステロイド(例,ロテプレドノル,0.1%フルオロメトロン,0.12〜1%酢酸プレドニゾロン点眼1日3回)の局所投与が有用なことがある。

コルチコステロイドの局所投与は,眼の単純ヘルペスウイルス感染を悪化させ,場合により角膜潰瘍および角膜穿孔を引き起こし,長期使用により緑内障,場合により白内障を引き起こすため,コルチコステロイドの使用開始と管理は眼科医が行うべきである。

コルチコステロイドが必要であるが使用不可能な場合は,シクロスポリンの局所投与が適応となりうる。

季節性アレルギー性結膜炎では,多剤併用または断続的なコルチコステロイドの局所投与を必要とする可能性は低い。


ラベル:アレルギー
posted by ホーライ at 06:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 眼科疾患 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月05日

閉塞性動脈硬化症について

閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう、ASO: arteriosclerosis obliterans)は、主に下肢の、主に大血管が慢性に閉塞することによって、軽い場合には冷感、重症の場合には下肢の壊死にまで至ることがある病気である。


【疫学】

中年以降、特に50歳以降の男性に多い。


【症状】

病気の進行に従って、様々な症状を呈する。

Fontaine分類(フォンテイン分類)は、病期と症状を結びつけたものとして広く用いられている。


●Fontaine 1度(もっとも軽症) 下肢の冷感や色調の変化

●Fontaine 2度 間歇性跛行(かんけつせいはこう) - 数十から数百m歩くと痛みのため歩行継続不可能になる症状。

なお、腰部脊柱管狭窄症でもみられるため鑑別が必要。

●Fontaine 3度 安静時疼痛

●Fontaine 4度(もっとも重症) 下肢の壊死、皮膚潰瘍。糖尿病などによる末梢神経障害がない限り、患者は激痛を訴える。

その他の症状として、陰萎がある




【診断】

特徴的な病歴や、下肢の色調・冷感などから、診断は比較的容易である。

ankle brachial index (ABI) の低下。

ABIとは下肢と上肢の血圧の比であり、正常では下肢が下にあるぶんやや下肢の方が血圧が高い(ABI > 1)。

ASO患者では、しばしばこの比が1未満、場合によっては0.5未満にまで低下する。

動脈造影では動脈の狭窄像や側副血行路の発達がみられる。




【危険因子と予防】

●喫煙

●高脂血症

●性別(男性であること)

●高血圧

●糖尿病等との合併

●肥満(まれに、女性では皮下脂肪型肥満の方がなりやすい。)

などがリスクファクターであり、生活習慣病のひとつと考えられている。



【治療】

病期の進行に応じて、軽症では内服による治療が第一選択として考慮される。

抗血小板剤、魚油やプロスタサイクリンがある。

プロスタグランジンE1製剤や抗トロンビン剤の点滴が次に試みられる。

Fontaine 2度以上では、外科的手術による血管バイパスや、バルーン拡張やステント留置による血管内治療が考慮される。

下肢の壊死が重症である場合は、下肢の切断となることもあるが、合併症がない例でここまで至ることは稀である。

内服処方例(保険適応のあるもの)

プラビックス75mg 1錠 1x朝食後

アンプラーグ100mg 3錠 3x朝昼夕食後

プレタール100mg 2錠 2x朝夕食後

エパデールS900 2包 2x朝夕食後

ドルナー20μg 6錠 3x毎食後

注射処方例 プロスタンディン20μg 2〜3A + 生食500mL divリプル10μg 1A iv

生活指導も重要であり、特に、禁煙の必要性が非常に高い。

実験的治療:血管新生を促進するために、造血幹細胞移植が試みられている。

骨髄細胞、末梢幹細胞 (PBSCT, peripheral blood stem cell transplantaion) を患部に数十カ所にわけ注入する。

CD34陽性細胞を特に純化させている施設もある。

また血管新生を促すホルモンを産生させる遺伝子(HGF, VEGF)を筋肉注射して血管の誘導をはかる治験も行われている。

骨髄細胞移植、末梢血幹細胞移植、末梢血単核球移植については、厚生労働省が規定する先進医療として認められており、一部医療機関で保険診療との併用が認められている。




【鑑別】

●間歇性跛行(間欠跛行)を呈する疾患としては、腰部脊柱管狭窄症があり、鑑別のために画像検査などが追加されることがある。

●下肢の慢性動脈閉塞をきたす疾患としては、バージャー病があり、病歴や血管造影検査の結果などから鑑別する必要がある。

●下肢の急性動脈閉塞症は、血栓や塞栓によって下肢の大血管が突然完全閉塞することにより、激痛が生じ、急速に壊死に陥る。




【予後】

ASO自体の予後は良好。

手術療法などにより治療可能であり直接の死因とはなりづらい。

しかし患者は全身の動脈硬化をきたしていることが多く、10年程度で何らかの合併症により過半数が死亡するという報告もある。


posted by ホーライ at 10:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 心臓と血管の病気 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月04日

肝臓で合成される血中の主たる輸送体蛋白とは?

問題1.次の説明文に該当する項目は?

肝臓で合成される血中の主たる輸送体蛋白。

栄養状態の悪化や肝障害の程度を反映して低下する。


(A)アルブミン(Alb)   (B)ALT





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   答え
」」」」」」」」」」」」

(A)アルブミン(Alb) 



【参考】

ALTとはalanine aminotransferase 。

肝細胞の破壊に伴い血中に逸脱する酵素。

AST(GOT)よりも肝に特異性が高く、肝炎の病勢指標に用いられる。





問題2.次の説明文に該当する項目は?

血中のアルブミン(A)とグロブリン総量(G)の比を算出したもの。

重症肝疾患やM蛋白血症で低下、無γ-マグロブリン血症で上昇。


(1)A/G   (2)AST





」」」」」」」」」」」」
   答え
」」」」」」」」」」」」

(1)A/G 


【参考】

ASTとはasparate aminotransferase 。

代表的な肝機能の指標。

肝細胞障害で血中に逸脱するが、骨格筋、心筋、赤血球などの破壊でも上昇をみる。


posted by ホーライ at 21:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 臨床検査 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

狭心症は(     )等にアクシデントが発生し、心臓への(      )の供給が減少し、胸痛がおこる。

問題1.次の文章のかっこを埋めよ

狭心症は(     )等にアクシデントが発生し、心臓への(      )の供給が減少し、胸痛がおこる。








=================
   正解
=================
狭心症は( 冠動脈 )等にアクシデントが発生し、心臓への( 酸素 )の供給が減少し、胸痛がおこる。








問題2.次の問いに答えよ

狭心症にニトログリセリンの舌下錠が使われるが何故か?









=================
   正解
=================
・即効性を確保するため。 

・初回通過効果を防ぐため・・・など






問題3.

通常の心拍数は次のどれか(単位:回/分)

1)40〜50

2)80〜90

3)110〜120








=================
   正解
=================

正解は2)です。


脈拍 hart rate (HR)

基準値 
80〜90回/分

高値を示す病態
頻脈 ; tachycardia 100以上

低値を示す病態
徐脈; bradycardia 50以下
posted by ホーライ at 21:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 心臓と血管の病気 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする