その他の薬物 が特定の状況下でまれに使用される。
症状がアレルギーにより誘発される場合には,病歴によって示唆されてアレルギー検査で確定されれば,免疫療法が適応となりうる。
免疫療法は成人よりも小児において成功する場合が多い。
24カ月経過するまでに症状に有意の改善がみられなければ,治療を中止する。
症状が軽減すれば,少なくとも3年間は治療を継続すべきであるが,治療の最適継続期間は分かっていない。
高用量の経口コルチコステロイドへの依存を減らすために,コルチコステロイドの減量が可能な薬物がときに処方される。
それはどれも全て明らかな毒性をもっている。
低用量メトトレキサート(5〜15mg/週)はFEV1 を軽度に改善し,毎日の経口コルチコステロイドの使用量を若干減少(3.3mg/日)させうる。
金およびシクロスポリンもある程度有効であるが,毒性とモニタリングの必要性からその利用は限られている。
オマリズマブは抗IgE抗体で,IgEレベルが高い重症のアレルギー性喘息患者が使用するために開発されたものである。
これは経口コルチコステロイドの必要性を減らし,症状を緩和する。
投与量は患者の体重およびIgEレベルに基づいた用量チャートで決定される;薬剤は2週間毎に皮下注射にて投与される。
慢性喘息の管理のためのその他の治療法には,ネブライザーを用いたリドカインやヘパリン,コルヒチン,高用量の静注免疫グロブリンがある。
これらの薬物療法の有用性を裏づける証拠は限られており,その有効性も証明されていないため,いずれも臨床での使用はまだ推奨できない。
治療に対する反応のモニタリング: 最大呼気流量(PEF)検査(気流と気道閉塞の測定)は,治療に対する反応を記録すること,および患者の記録による日誌を通し,実生活の環境における疾患の重症度の変化の傾向をモニタリングすることによって,喘息増悪の重症度を確定するのに役立つ。家庭におけるPEFのモニタリングは,中等症から重症持続型喘息患者において疾患の進行および治療に対する反応を記録するのに特に有用である。
喘息の症状がないときは,朝1回のPEF測定で十分である。
PEFが患者の最良値の80%未満まで減少した場合,1日に2回測定して日内変動を評価することは有用である。
20%を超える日内変動は,気道の不安定性および治療計画を再検討する必要性を示唆する。
●患者教育: 患者教育の重要性はいかに強調してもし過ぎることはない。
患者は,何が発作を誘発するのか,どの薬をいつ使用するのか,適切な吸入器使用の技術,スペーサーはどのようにして定量噴霧吸入器(MDI)と一緒に使用するのか,増悪時のコルチコステロイドによる早期治療の重要性など,喘息についてよく知れば知るほど,よりよく対処できる。
個々の患者は,日々の管理に対する,特に急性発作時の管理に対する文書化した治療計画をもっているべきであり,その計画は予測正常値よりも患者個人の最良ピークフローに基づくものであるべきである。
そうした計画は喘息のコントロールを大いに改善するが,それは主に治療法がより忠実に守られることによる。
●急性増悪の治療: 喘息増悪の治療の目標は,症状を軽減し,患者のPEFが自己最良値に回復することである。
急性増悪に対しては,吸入アルブテロールまたは類似の短時間作用型β作動薬を自己投与し,可能ならPEFを測定するように患者に指導すべきである。
MDIによる2?4パフを最大20分の間隔で最高で3回投与すると気分がよくなる患者,およびPEFが基準の80%以上を示す患者は,在宅で急性増悪を管理できる。
反応しないか,重度の症状があるか,またはPEFが80%未満である患者は,医師の作成した治療管理プログラムに従うか,薬物による治療のため救急診療部を受診すべきである。
吸入気管支拡張薬(β作動薬および抗コリン薬)が救急診療部における喘息治療の主力である。
成人および児童において,アルブテロールのMDIとスペーサーによる投与は,ネブライザーによる投与と効果は同じである。
幼児では,MDIとスペーサーをうまく使いこなすのが難しいため,ネブライザーによる治療が優先される;ネブライザーがO2よりヘリウム-O2. (heliox)で噴射されると,気管支拡張薬に対する反応が向上することが最近の証拠から示唆される。
小児にはエピネフリン1:1000溶液またはテルブタリンの皮下注射が代替となる。
テルブタリンは,心血管作用がより少なく,作用期間がより長いため,エピネフリンより好ましいが,大量生産されなくなり,高価である。
β 作動薬の皮下投与は,心刺激性の有害作用があるため,理論上成人には問題がある。
しかしながら,臨床的に明らかな有害作用は少ないので,皮下投与は,最高用量の吸入療法にも反応しない患者,または効果的な噴霧式治療が受けられない患者(例,過度の咳が出る,低換気がある,または非協力的な患者)には有益となりうる。
アルブテロール単独では十分に反応しない患者には,噴霧イプラトロピウムと噴霧アルブテロールの同時投与が行える;第1選択の治療に高用量β作動薬とイプラトロピウムの同時投与が好ましいことを示す証拠が一部あるが,β作動薬の連続噴霧投与が間欠投与より好ましいとするデータはない。
テオフィリンは治療にはほとんど役立たない。
全身投与コルチコステロイド(プレドニゾン,プレドニゾロン,メチルプレドニゾロン)は非常に軽い急性増悪を除いて,全ての患者に投与すべきである;気管支拡張薬の1回または2回の投与でPEFが正常になる患者には必要ない。
静注および経口の投与経路は同等に効果がある。
メチルプレドニゾロンは,静脈ラインがすでに確保されている場合は静注投与できるが,経口に変更する必要があるとき,もしくはそのほうが都合のよいときはいつでも経口投与に変更できる。
通常7〜10日目以降に用量を減らしはじめ,2〜3週間かけて漸減すべきである。
抗生物質の適応は,病歴,診察,または胸部X線により細菌感染が背景にあることが示唆される場合だけである;喘息増悪の背景にある感染症のほとんどはウイルスによるが,マイコプラズマやクラミジアも最近の研究対象集団において証明されている。
O2が適応となるのは,喘息増悪の患者がパルスオキシメトリーによる測定またはABG測定でO2satが90%未満である場合である;O2は低酸素血症を是正するのに十分な流量または濃度を鼻カニューレかフェイスマスクにより投与すべきである。
不安が喘息増悪の原因である場合は,安心させることが最良の治療である。
抗不安薬およびモルヒネは,死亡率の増加や機械的人工換気の必要性と関連があるので,相対的禁忌である。
(続く)
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