●診断(2)
シリングテスト: 古典的悪性貧血のように,内因子欠乏症の診断が重要な場合にのみ,シリングテストは有用となる。
このテストは,ほとんどの高齢患者には必要ではない。
シリングテストでは,経口投与された遊離型の放射性標識ビタミンB12の吸収量を測定する。
放射性標識ビタミンB12を経口投与した後,1〜6時間内に1000μg(1mg)のビタミンB12を非経口にて投与するが,これは肝臓による放射性標識ビタミンB12の取り込みを減少させるためである。
吸収された放射性標識ビタミンB12は,その後尿中に排泄されるが,その尿を24時間採取する。
そして,尿中の全放射性標識ビタミンB12量の割合を測定する。吸収が正常であれば,投与された量の9%以上が尿中に現れる。
尿中への排泄が低下していれば(腎機能が正常の場合5%未満),ビタミンB12吸収不十分が示唆される。尿の採取が不完全の場合や,腎不全の場合,しばしばシリングテストを行うことや,結果の解釈が困難になる。
さらに,シリングテストでは,蛋白結合ビタミンB12の吸収を測定しないため,高齢者によくみられる,食物から摂取したビタミンB12の遊離障害は検出されない。
シリングテストは,ビタミンB12を補給することになり,欠乏症を覆い隠すことがあるので,他の全ての診断検査および試験的治療を行った後に初めて遂行されるべきである。
経口にて抗生物質を2週間試験投与した後,シリングテストを繰り返してもよい。
抗生物質による治療で吸収不良が改善されれば,可能性のある原因として,腸管での細菌の過剰繁殖(例,盲管症候群)が考えられる。
●治療
重度の欠乏症または神経症状や徴候がない患者には,ビタミンB12,1000〜2000μgを経口にて,1日1回投与してもよい。この大量経口投与は,内因子が欠如している場合にも,質量作用により吸収される。MMA値(ときに治療をモニタリングするために使用される)が低下していない場合は,患者がビタミンB12を服用していない可能性がある。より重度の欠乏症には通常,血液学的異常が改善するまで,ビタミンB12,1mgを1週間に1〜4回,数週間筋注投与し,その後,同用量を1カ月に1回投与する。血液学的異常は通常,6週間以内に改善するが(網状赤血球数は1週間以内に改善しうる),神経症状の消散にはさらに時間を要することがある。数カ月または数年間持続する神経症状は,非可逆的になる。ほとんどのビタミンB12欠乏症と認知症のある高齢者では,治療後に認知力は改善されない。ビタミンB12療法は,同欠乏症の病態生理学的機序が是正されない限り,一生涯続けなければならない。
完全菜食の母親をもつ乳児は,出生時よりビタミンB12の補給を受けなければならない。
以上