関節リウマチは慢性的な自己免疫疾患であり,サイトカイン,ケモカイン,メタロプロテアーゼによって仲介される障害を引き起こす。
末梢関節(例,手関節,中手指節関節)に対称的に炎症を起こし,関節構造に進行性の破壊をしばしば生じ,通常は全身症状を伴う。
診断には,特定の臨床的,検査室的,放射線学的な判定基準を必要とする。
治療には,薬物療法,理学療法,ときに手術がある。
薬物療法は,NSAID(症状の軽減を助ける)と病態修飾性抗リウマチ薬(病状の進行を遅らせる)を併用する。
関節リウマチ(RA)には,全人口の約1%が罹患する。
女性の患者数は男性の2〜3倍である。
いずれの年代でも発症するが,35〜50歳の間に最も多発する。
小児または高齢者も罹患しうる。
●関節リウマチ(RA)の病因と病態生理
RAには自己免疫反応が含まれるけれども,正確な原因は不明であり,多数の要因が寄与しうる。
遺伝的素因が確認されており,白人集団ではクラスU組織適合抗原のHLA-DRβ1座位の共有エピトープに限局化されている。
喫煙がそうであるように,未知の環境要因(例,ウイルス感染)が病因の役割を果たしていると考えられる。
顕著な免疫異常には,滑膜表層細胞によって炎症性血管で産生される免疫複合体が含まれる。
プラスマ細胞は,これらの複合体に寄与する抗体(例,リウマチ因子[RF])を生じる。
マクロファージは,疾病初期にさらに病的な関節滑膜に移動し,マクロファージ由来の表層細胞は,血管炎症とともに顕著に増加する。
滑膜組織に浸潤するリンパ球は本来,CD4+T細胞である。
マクロファージおよびリンパ球は,関節滑膜で炎症誘発性サイトカインおよびケモカイン(例,腫瘍壊死因子[TNF],顆粒球マクロファージコロニー刺激因子,様々なインターロイキン[IL],インターフェロン-γ)を産生する。炎症伝達物質の放出は,おそらくRAの全身および関節の症状の一因となる。
慢性的に侵された関節では,正常の薄い繊細な関節滑膜が肥厚して多くの絨毛様ヒダを生じる。
滑膜表層細胞は様々な物質を生じ,それらには軟骨の破壊に寄与するコラーゲナーゼやストロメライシン;軟骨破壊,破骨細胞の仲介する骨吸収,滑膜の炎症,(炎症を増強する)プロスタグランジンを刺激するIL-1やTNF-αが含まれる。
フィブリン沈着,線維化,壊死もみられる。これらの炎症伝達物質を通して,過形成性滑膜組織(パンヌス)は,軟骨,軟骨下骨,関節包,靭帯を侵す。
多形核球(PMN)はしばしば滑液中で優位を占める。
リウマチ小結節は,RA患者の約30%に発症する。
それらは柵状の組織球性のマクロファージによって囲まれる中央が壊死性の領域からなる肉芽腫であり,全てがリンパ球,プラスマ細胞,線維芽細胞によって包まれている。
小結節および脈管炎は,多くの内臓に発症することもありうる。
●関節リウマチ(RA)の症状と徴候
RAの発病は通常潜行性であり,全身症状から始まり関節症状に進行するが,症状は同時に生じうる。
全身症状は,侵された関節の早朝のこわばり,全身性の午後の疲労と倦怠感,食欲不振,全身性脱力,微熱である。関節症状には痛みとこわばりがある。
関節症状は対称的であることが特徴である。
典型的症例では,こわばりは朝の起床時に60分以上持続するが,長い不活動状態の後にはいつでも起こりうる。
侵された関節は,発赤,熱感,腫脹,運動制限とともに圧痛をはっきりと感ずるようになる。
手根関節と示指および中指の中手指節関節は,最もよく侵される。
その他に近位指節間[PIP]関節,中足趾節関節,肘関節,足関節が侵されるが,いずれの関節も侵されうる。
体軸骨格は頸椎上部を除いて侵されることはまれである。
滑膜の肥厚が認められる。関節は痛みを最小限にするためにしばしば屈曲位で保たれるが,その痛みは関節包の膨張から起こる。
拘縮変形,特に屈曲拘縮は急速に進行しうることがある;中手指節関節部での伸筋腱の尺側への滑脱を伴う指の尺側偏位は,スワン-ネック変形やボタン穴変形のように典型的である。
関節の不安定性も生じうる。
手根管症候群は,手関節部の滑膜炎の結果として正申神経を圧迫して生じることがある。
断裂した膝窩嚢胞(ベーカー嚢胞)を発現することがあり,深部静脈血栓症を示唆する腓腹部腫脹と圧痛を生じる。
皮下のリウマチ結節は通常初期の徴候ではないが,最終的には患者の最大30%に生じ,大抵は圧力や慢性的な刺激を受ける部位にみられる(例,前腕の伸側面)。
内臓の結節は,通常は無症状であり,重度のRA患者によくある。
その他の関節外徴候には,下腿潰瘍を引き起こす脈管炎または多発性単神経炎,胸膜または心内膜の液浸出,肺結節,肺線維症,心膜炎,心筋炎,リンパ節症,フェルティー症候群,シェーグレン症候群,上強膜炎がある。
頸椎の障害は,環軸関節亜脱臼(頸部痛および背痛: 環軸関節亜脱臼を参照 )や脊髄圧迫(脊髄障害: 脊髄圧迫を参照 )を起こすことがあり,頸部の伸展で悪化することがある(例,気管内挿管中)。
RAの臨床的経過は予測不可能である。
RAは最初の6年,特に1年目に最も急速に進行し,80%の患者は,10年以内に何らかの永久的な関節異常を発症する。
●関節リウマチ(RA)の診断
多関節性の対称的な関節炎のある患者では,RAを疑うべきである。
RAの診断基準は,関節疾患: 関節リウマチの診断: 表に記載されており,4つ以上の基準が存在していれば,診断は確定する。
患者にリウマチ因子(RF)テストを行い,手および手根部のX線像,侵された関節のベースラインのX線像を撮影し,びらん性の変化をみるために記録すべきである。