旅行者の予防接種:
感染症が風土病である地域の旅行には予防接種が要求されることがある。
米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)から情報が提供され,24時間体制のテレホンサービス(404-332-4559)およびウェブサイト(www.cdc.gov/travel/vaccinat.htm)を終日利用できる。
●リスク,制限,およびハイリスクグループ
生きている微生物を使った生ワクチンは,期待される抗体産生に干渉する恐れのある血液,血漿,免疫グロブリンと同時投与するべきではなく,そのようなワクチンは理想的には免疫グロブリン投与の2週間前または6〜12週間後に投与するべきである。
免疫不全患者は重度のまたは致死的な感染症を引き起こす恐れがあるため,生ウイルスワクチンを投与してはならない。
短期間(すなわち,14日未満)の免疫抑制療法(例,コルチコステロイド,代謝拮抗薬,アルキル化薬,放射線)を受けている患者においては,治療終了まで生ウイルスワクチンを控えるべきである。
長期間の免疫抑制療法中の患者に対してDTaPまたはDTwPなどの不活性化ワクチンを投与することがあるが,免疫抑制療法終了から3カ月以上経過後に不活化ワクチンの追加用量を投与するべきであり,またこの時期に生ウイルスワクチン投与を行ってもよい。
無脾症患者は通常,肺炎レンサ球菌,髄膜炎菌,またはインフルエンザ菌b型に起因する重篤な細菌感染に罹患しやすい。
彼らにはHbCVワクチン,髄膜炎菌多糖体ワクチン,年1回のインフルエンザワクチン,肺炎球菌結合型(5歳未満の場合)または多糖体(5歳以上の場合)ワクチンを投与するべきである。
臓器移植実施前の患者には適切なワクチン接種を全て行うべきである。
造血細胞の移植を受けた患者は未免疫であると考え,適切なワクチンを全て反復投与するべきである。
AIDS患者には一般に不活化ワクチン(例,DTP,IPV,HbCV)を投与するべきであり,通常は生ウイルスおよび生菌ワクチン(例,麻疹-ムンプス-風疹,OPV,BCG)を投与してはならない。
しかしながら,もし免疫抑制が重度でなければ麻疹-ムンプス-風疹ワクチンを例外としてもよい。
AIDS患者において,自然発生する麻疹は重症でしばしば致死的な感染症の原因となりうるが,麻疹-ムンプス-風疹ワクチンが重篤な合併症を引き起こすことはまれである。
AIDS患者にはルーチンの推奨に従ってワクチン接種を行うべきである。
ワクチンのリスクを患者に説明するべきである。
親は子供のワクチン接種に関する同意書を提出する必要がある。
米国では,定期的ワクチン接種後に発生した特定事象を製造業者,米国保健福祉省(Department of Health and Human Services),米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)のワクチン副作用報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System)(VAERS)に報告しなければならない。
書式および記入要領は電話800-822-7967(保健福祉省,Department of Health and Human Services)で,またはウェブサイト(www.vaers.org)から入手できる。
39°Cを超える体温はワクチン接種の延期を必要とするが,感冒などの軽症の感染では(微熱を伴う場合も)延期の必要はない。
細胞培養系で生産される一部のワクチンは微量の卵抗原を含む。
卵アレルギーはしばしばこれらのワクチンの禁忌とされるが,パンまたはクッキーのような卵を含む食物を摂食できる患者においては,これらのワクチンは重大な有害反応を引き起こさないようである。
その他のアレルギー反応の既往では,ある種のワクチンが使用禁止となりうる。
妊娠は麻疹-ムンプス-風疹,肺炎球菌性肺炎,水痘および他の生ウイルスワクチン接種の相対的禁忌である。
一部のワクチンに含まれる水銀ベースの防腐剤,チメロサールの乳児に対する安全性の問題が提起されているが,有害性の証拠はない。
それにもかかわらず,ほとんどの製造業者がチメロサールを含まない乳児用ワクチンを開発している。
ギラン-バレー症候群のような変動性または進行性の神経学的疾患を有する患者は,脳を刺激するリスクがあるため,状態が少なくとも1年間安定するまではワクチンを接種してはならない。
もし神経学的疾患が安定しているなら,ワクチン接種を通常どおり進めるべきである。
多発性硬化症におけるリスクは知られていない。
以上