2014年05月05日

閉塞性動脈硬化症について

閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう、ASO: arteriosclerosis obliterans)は、主に下肢の、主に大血管が慢性に閉塞することによって、軽い場合には冷感、重症の場合には下肢の壊死にまで至ることがある病気である。


【疫学】

中年以降、特に50歳以降の男性に多い。


【症状】

病気の進行に従って、様々な症状を呈する。

Fontaine分類(フォンテイン分類)は、病期と症状を結びつけたものとして広く用いられている。


●Fontaine 1度(もっとも軽症) 下肢の冷感や色調の変化

●Fontaine 2度 間歇性跛行(かんけつせいはこう) - 数十から数百m歩くと痛みのため歩行継続不可能になる症状。

なお、腰部脊柱管狭窄症でもみられるため鑑別が必要。

●Fontaine 3度 安静時疼痛

●Fontaine 4度(もっとも重症) 下肢の壊死、皮膚潰瘍。糖尿病などによる末梢神経障害がない限り、患者は激痛を訴える。

その他の症状として、陰萎がある




【診断】

特徴的な病歴や、下肢の色調・冷感などから、診断は比較的容易である。

ankle brachial index (ABI) の低下。

ABIとは下肢と上肢の血圧の比であり、正常では下肢が下にあるぶんやや下肢の方が血圧が高い(ABI > 1)。

ASO患者では、しばしばこの比が1未満、場合によっては0.5未満にまで低下する。

動脈造影では動脈の狭窄像や側副血行路の発達がみられる。




【危険因子と予防】

●喫煙

●高脂血症

●性別(男性であること)

●高血圧

●糖尿病等との合併

●肥満(まれに、女性では皮下脂肪型肥満の方がなりやすい。)

などがリスクファクターであり、生活習慣病のひとつと考えられている。



【治療】

病期の進行に応じて、軽症では内服による治療が第一選択として考慮される。

抗血小板剤、魚油やプロスタサイクリンがある。

プロスタグランジンE1製剤や抗トロンビン剤の点滴が次に試みられる。

Fontaine 2度以上では、外科的手術による血管バイパスや、バルーン拡張やステント留置による血管内治療が考慮される。

下肢の壊死が重症である場合は、下肢の切断となることもあるが、合併症がない例でここまで至ることは稀である。

内服処方例(保険適応のあるもの)

プラビックス75mg 1錠 1x朝食後

アンプラーグ100mg 3錠 3x朝昼夕食後

プレタール100mg 2錠 2x朝夕食後

エパデールS900 2包 2x朝夕食後

ドルナー20μg 6錠 3x毎食後

注射処方例 プロスタンディン20μg 2〜3A + 生食500mL divリプル10μg 1A iv

生活指導も重要であり、特に、禁煙の必要性が非常に高い。

実験的治療:血管新生を促進するために、造血幹細胞移植が試みられている。

骨髄細胞、末梢幹細胞 (PBSCT, peripheral blood stem cell transplantaion) を患部に数十カ所にわけ注入する。

CD34陽性細胞を特に純化させている施設もある。

また血管新生を促すホルモンを産生させる遺伝子(HGF, VEGF)を筋肉注射して血管の誘導をはかる治験も行われている。

骨髄細胞移植、末梢血幹細胞移植、末梢血単核球移植については、厚生労働省が規定する先進医療として認められており、一部医療機関で保険診療との併用が認められている。




【鑑別】

●間歇性跛行(間欠跛行)を呈する疾患としては、腰部脊柱管狭窄症があり、鑑別のために画像検査などが追加されることがある。

●下肢の慢性動脈閉塞をきたす疾患としては、バージャー病があり、病歴や血管造影検査の結果などから鑑別する必要がある。

●下肢の急性動脈閉塞症は、血栓や塞栓によって下肢の大血管が突然完全閉塞することにより、激痛が生じ、急速に壊死に陥る。




【予後】

ASO自体の予後は良好。

手術療法などにより治療可能であり直接の死因とはなりづらい。

しかし患者は全身の動脈硬化をきたしていることが多く、10年程度で何らかの合併症により過半数が死亡するという報告もある。


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2014年05月04日

狭心症は(     )等にアクシデントが発生し、心臓への(      )の供給が減少し、胸痛がおこる。

問題1.次の文章のかっこを埋めよ

狭心症は(     )等にアクシデントが発生し、心臓への(      )の供給が減少し、胸痛がおこる。








=================
   正解
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狭心症は( 冠動脈 )等にアクシデントが発生し、心臓への( 酸素 )の供給が減少し、胸痛がおこる。








問題2.次の問いに答えよ

狭心症にニトログリセリンの舌下錠が使われるが何故か?









=================
   正解
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・即効性を確保するため。 

・初回通過効果を防ぐため・・・など






問題3.

通常の心拍数は次のどれか(単位:回/分)

1)40〜50

2)80〜90

3)110〜120








=================
   正解
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正解は2)です。


脈拍 hart rate (HR)

基準値 
80〜90回/分

高値を示す病態
頻脈 ; tachycardia 100以上

低値を示す病態
徐脈; bradycardia 50以下
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2014年05月02日

■■■ 心不全について(5) ■■■

【手術】

特定の基礎疾患が認められるときには手術が適切であると考えられる。

通常,心不全患者の手術は専門施設で実施するべきである。

先天性または後天性の心内シャントは外科的縫合により治療できる。

虚血を軽減するための冠動脈バイパスグラフト術は一部の虚血性心筋症患者に有用である。

もし心不全が主に弁膜異常によるものであれば,弁修復術または移植を考慮する。

原発性僧帽弁逆流症患者は,心筋機能不良が術後も継続する可能性のある,左室拡張に続発する僧帽弁逆流の患者よりも利益を得られる可能性が高い。

手術は,心筋の拡大および損傷が不可逆的になる前に行うことが望ましい。



心臓移植(移植: 心臓移植を参照 )は,重度の難治性心不全を有し,他に生命を脅かす疾患のない60歳未満の患者に対する最適な治療法である。

生存率は1年目で82%,3年目で75%である;しかしながら,ドナー待機中の死亡率は12〜15%に上る。

ヒトの臓器提供は依然として少ない。

左室補助装置は移植までの橋渡しとなるが,ごく一部の特定患者では恒久的に使用される場合もある。

人工心臓はまだ実行可能な代替治療ではない。

現在研究中の手術の選択肢には,拡張の進行を減少させる抑制装置の植込みおよび心室修復術と呼ばれる改良型の心室瘤切除術がある。

力学的心筋形成術および拡大心筋部分切除術(バチスタ手術)はもはや推奨されない。



【薬物】

症状緩和のための薬物には利尿薬,硝酸薬,ジゴキシンがある。

ACE阻害薬,β遮断薬,アルドステロン受容体拮抗薬,およびアンジオテンシンU受容体拮抗薬は長期管理に有効であり,生存を改善する。

収縮機能不全と拡張機能不全とでは異なる戦略が用いられる。

重度の拡張機能不全を呈する患者は血圧や血漿量の低下に十分に耐えられないため,利尿薬や硝酸薬は低用量で用いるべきである。

肥大型心筋症患者(心不全および心筋症: 肥大型心筋症を参照 )では,ジゴキシンは有効でなく,有害となりうる。


●利尿薬:

利尿薬は症候性の収縮機能不全の患者全員に投与される;用量は,体重が安定し症状が緩和される最低用量に調節する。

ループ利尿薬が望ましい。

フロセミドが最も頻用されており,20〜40mg,1日1回で経口投与を開始し,もし反応および腎機能に基づいて必要であれば120mg,1日1回(または60mg,1日2回)まで増量する。

ブメタニドは代替薬である。

難治例では,フロセミド40〜160mg静注,エタクリン酸50〜100mg静注,ブメタニド0.5〜2mg経口もしくは0.5〜1.0mg静注,またはメトラゾン2.5〜10mg経口が相加作用を示すことがある。

ループ利尿薬(特にメトラゾンと併用時)は,低血圧症,低ナトリウム血症,低マグネシウム血症,および重度の低カリウム血症を伴う循環血液量減少を引き起こすことがある。



●ACE阻害薬:

禁忌(例,血漿クレアチニン> 2.8mg/dL[250μmol/L],両側腎動脈狭窄,片腎の腎動脈狭窄,またはACE阻害薬による血管性浮腫の既往)でなければ,収縮機能不全患者全員にACE阻害薬を経口投与する。

ACE阻害薬は,アンジオテンシンUの産生およびブラジキニンの分解を抑制し,これらは交感神経系,内皮機能,血管緊張,および心筋機能に影響を及ぼすメディエーターである。

血行動態作用には,動脈および静脈の拡張,安静時および労作時の持続的な左室充満圧低下,全身血管抵抗の低下,心室リモデリングに及ぼす好ましい作用がある。

ACE阻害薬は生存期間を延長し,心不全による入院を減らす。

粥状動脈硬化および血管障害の患者では,これらの薬物は心筋梗塞および脳卒中のリスクを低下させうる。

糖尿病患者では腎症の発症を遅らせる。

したがって,ACE阻害薬は拡張機能不全およびこれらの障害のいずれかを有する患者に用いられる。




●アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB):

ARBがACE阻害薬よりも優れているとは証明されていないが,咳嗽および血管性浮腫の発生頻度は低いようである;ARBは,このような副作用によりACE阻害薬の使用が禁じられるときに使用できる。

ACE阻害薬およびARBが慢性心不全に同等の効果を示すかは不明であり,その最適用量はいまだ研究中である。

通常の経口標的用量は,バルサルタン160mg,1日2回,カンデサルタン32mg,1日1回,ロサルタン50〜100mg,1日1回である。ARBおよびACE阻害薬の導入,漸増,モニタリングの方法は同様である。

ACE阻害薬と同様,ARBは可逆的な腎機能不全を引き起こしうる。

急性疾患による脱水または腎機能不良が生じた場合は,ARBの一時的な中止が必要となりうる。

症状が持続し入院を繰り返す心不全患者に対しては,ACE阻害薬,β遮断薬,および利尿薬にARBの追加を考慮するべきである。

このような併用療法では,血圧,血漿電解質,および腎機能のモニタリング回数を増やす必要がある。



以上


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2014年05月01日

■■■ 心不全について(4) ■■■

【治療】

特定の障害(例,急性心筋梗塞,心室拍動数の増加を伴う心房細動,重度高血圧症,急性弁逆流)による心不全を有する患者,ならびに肺水腫(心不全および心筋症: 肺水腫を参照 ),重度の症状,新規発症の心不全,または外来治療に不応の心不全を有する患者では,早急な入院治療が必要である。

過去に心不全と診断され,それが軽度増悪した患者は在宅で治療可能である。

主要な目標は心不全に至る障害を診断して修正または治療することである。



短期の目標としては,症状および血行動態を改善すること,低カリウム血症,腎機能不全,および症候性低血圧症を回避すること,神経液性因子の活性化を修正することが挙げられる。

長期の目標としては,高血圧症を修正すること,心筋梗塞およびアテローム硬化を予防すること,入院回数を減らすこと,生存率および生活の質を改善することが挙げられる。

治療には,食事および生活習慣の変更,薬物(心不全および心筋症: 薬物を参照 ),ときに手術が必要となる。



食事性Naの摂取制限は体液貯留の制限に役立つ。

全ての患者は,調理時の食塩使用をやめ,食卓に食塩を置かず,塩分の多い食品を控えるべきである;最重症患者では,減塩食品のみを摂取することでNaを1g/日未満に制限すべきである。

毎朝の体重モニタリングはNaおよび水分貯留の早期検出に役立つ;もし体重が4.4kgを超えて増加したならば,患者自身が利尿薬の用量を調整することも可能であるが,体重が増加し続けたり症状が生じたりするようであれば医療機関を受診するべきである。

粥状動脈硬化または糖尿病の患者は各自の障害に応じた適切な食事を厳守すべきである。

肥満が生じる場合があり,これは常に心不全の症状を悪化させる;患者はBMIで21〜25を目指すべきである。



症状に合わせた定期的な軽い運動(例,歩行)が一般に推奨される。

骨格筋の機能低下は機能的状態を悪化させるが,運動はこれを予防する;この方法が生存を改善するかは研究中である。急性増悪期には安静が適切である。



治療は患者に合わせて行い,原因,症状,および副作用を含む薬物に対する反応を考慮する。

収縮機能不全と拡張機能不全とで治療はいくぶん異なるが,重複する部分もある。

患者や家族は治療選択に参加するべきである。

患者や家族には,服薬遵守の重要性,代償不全を警告する徴候,および症状緩和のための追加薬物の使用について指導するべきである。

症例の一元管理,特に服薬遵守ならびに予定外の来院や救急搬送および入院の頻度をモニタリングすることで,介入が必要な局面を同定できる。

心不全を専門とする看護師は,事前に設定されたプロトコールに従って教育,経過観察,用量調整を行う際にきわめて役立つ。

多くの医療施設(例,専門外来クリニック)では,様々な分野の医療従事者(例,心不全を専門とする看護師,薬剤師,ソーシャルワーカー,リハビリテーション専門家)を集学的治療チームまたは外来心不全管理プログラムに組み入れている。

このような試みにより転帰を改善して入院を減少させることが可能で,最重症患者では非常に効果的である。



高血圧症,重度の貧血,ヘモクロマトーシス,コントロール不良の糖尿病,甲状腺中毒,脚気,アルコール中毒,シャーガス病,またはトキソプラズマ症の治療が成功すれば,患者は劇的に改善する可能性がある。

広範な心室浸潤(例,アミロイドーシスにおける)の管理は依然として不満足な状況である。



(明日へ続く)

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2014年04月30日

■■■ 心不全について(3) ■■■

【分類と病因】

心臓因子および全身因子のいずれもが心機能を障害し,心不全を惹起しうる。

心臓因子には心筋障害(例,心筋梗塞または心筋炎では急性,種々の障害による線維化では慢性),弁膜異常,不整脈(頻拍性不整脈または徐脈性不整脈),および基質供給量の減少(すなわち虚血)がある。

全身因子には,全身性高血圧など,CO要求量の増加(高拍出性心不全を来す)や拍出抵抗(後負荷)の増加をもたらすあらゆる障害が含まれる。



心臓は統合されたポンプであり,1心腔の変化は最終的に心臓全体に影響するため,従来の左室不全および右室不全の区別にはいくぶん誤りがある。

しかしながら,これらの用語は心不全につながる主要な病変の位置を示しており,初期の評価および治療に有用となりうる。


左室不全は,虚血性心疾患,高血圧,大動脈弁狭窄症,心筋症の大半の病型,後天性の僧帽弁逆流または大動脈弁逆流,および先天性心疾患(例,心室中隔欠損症,シャント量の多い動脈管開存症)において発症することを特徴とする。


右室不全は一般的に,陳旧性左室不全(肺静脈圧を上昇させて肺動脈性肺高血圧を来し,したがって右室に過剰な負荷をかける)により,または重度の肺疾患により引き起こされる。

他には,多発性肺塞栓,肺静脈閉塞,右室梗塞,原発性肺高血圧,三尖弁の逆流または狭窄,僧帽弁狭窄,肺動脈または肺動脈弁の狭窄が原因となる。

ある種の状態は,心機能が正常であることを除けば,右室不全に類似する;この状態には,赤血球増多症または輸血過剰における体液量過剰および全身静脈圧上昇,NaおよびH2O貯留に誘発される水分過剰を伴う急性腎不全,ならびに上下いずれかの大静脈閉塞がある。



両心室不全は,心筋全体を冒す障害に起因する(例,ウイルス性心筋炎,アミロイドーシス,シャーガス病)。


(明日へ続く)


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2014年04月29日

■■■ 心不全について(2) ■■■

【病態生理】

心不全では,心臓が代謝要求に適う量の血液を組織に供給できないことがあり,心臓との関連で上昇した肺または全身の静脈圧が臓器うっ血をもたらすことがある。

この状態は,収縮機能,拡張機能,または一般的には両機能の異常に起因しうる。


収縮機能不全では,心室収縮不良や心室駆出不十分がまず拡張期容量および拡張期圧の上昇をもたらす。

その後,EFが低下する。

エネルギー利用,エネルギー供給,電気生理学的機能,および収縮要素の相互作用に様々な欠陥が生じるが,これは細胞内Ca調節やサイクリックアデノシン1リン酸(cAMP)産生の異常に伴うものである。

心筋梗塞による心不全では,顕著な収縮機能不全が一般的にみられる。

収縮機能不全は主に左室または右室(RV)に生じる;左室不全はしばしば右室不全につながる。



拡張機能不全では心室の充満が障害され,心室拡張終期容量の減少,拡張終期圧の増加,または両方が生じる。

収縮性,ひいてはEFは正常に保たれる;充満不良の左室において,駆出が完全に近く,COが維持されれば,EFは増加することもある。

左室充満の著しい低下は低COおよび全身症状をもたらす。

左房圧の上昇は肺うっ血を惹起しうる。

拡張機能不全は通常,心室弛緩の障害(能動的な過程),心室スティッフネスの増加,収縮性心膜炎,または房室弁狭窄から生じる。

充満抵抗は加齢とともに上昇するが,これは恐らく心筋細胞の喪失および間質性コラーゲン沈着の増加を反映している;したがって,拡張機能不全は特に高齢者で一般的にみられる。

肥大型心筋症,心室肥大を伴う障害(例,高血圧,重度の大動脈弁狭窄),およびアミロイドの心筋浸潤では,拡張機能不全が優勢であると考えられる。

もし右室圧が著明に上昇して心室中隔が左側へ移動すれば,左室の充満および機能も障害されうる。





左室不全 ではCOは減少し,肺静脈圧は上昇する。

肺毛細血管圧が血漿蛋白コロイド浸透圧(約24mmHg)を超えると,体液が毛細血管から間質および肺胞へと漏出し,肺コンプライアンスが減少し,呼吸仕事量が増加する。

リンパドレナージは増加するが,胸水の増加は代償されない。

肺胞への著明な液貯留(肺水腫)により,換気-血流比(肺胞換気量[V]/肺血流量[Q])が著しく変化する:非酸素化肺動脈血は換気の低下した肺胞を通過し,全身動脈血の酸素化(PaO2)が低下して呼吸困難が生じる。

しかしながら,呼吸困難はV/Q異常に先立って起こることがあり,恐らくは肺静脈圧の上昇および呼吸仕事量の増加が原因であるが,その正確な機序は不明である。

重度または慢性の左室不全では,胸水はまず右胸郭内に,その後両側に貯留することを特徴とし,呼吸困難をさらに悪化させる。

分時換気量は増加する;そのため,PaCO2が低下し,血液pHが上昇する(呼吸性アルカローシス)。

細気管支の著明な間質性浮腫は換気を妨げ,PaCO2を上昇させることがある(呼吸不全切迫の徴候)。



右室不全 では全身静脈圧が上昇し,主に荷重のかかる組織(歩行可能な患者の足や足首)や腹腔内臓器に体液が滲出して浮腫が起こる。

肝臓が最も影響を受けるが,胃や腸もうっ血する;腹膜腔の液貯留(腹水)が起こることがある。

右室不全は一般に,中等度の肝機能不全を引き起こし,通常,抱合型および非抱合型ビリルビンの軽度上昇,プロトロンビン時間(PT)の軽度延長,および肝酵素(例,アルカリホスファターゼ,AST,ALT)の軽度上昇を伴う。

肝障害によりアルドステロン分解能が低下し,体液貯留をさらに亢進させる。

臓器における慢性静脈うっ血は,食欲不振,吸収不良および蛋白漏出性腸症(下痢および著明な低アルブミン血症を特徴とする),消化管の慢性失血,そしてまれに腸管の虚血性梗塞を引き起こす可能性がある。





心臓の反応: 心室機能が障害されると,COを維持するためにより大きな前負荷が必要となる。

結果として,左室は徐々にリモデリングされる:左室は卵形から球形となり,拡張し,肥大する。

初期には代償性であるが,これらの変化は最終的に拡張期スティッフネスおよび壁張力を増強させ,これにより特に身体的ストレスがかかったときに心機能が低下する。

壁応力の上昇により,O2要求量が増大し,心筋細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)が加速する。


(明日へ続く)


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2014年04月26日

■■■ 心不全について(1) ■■■

心不全は心室機能不全症候群である。

左室不全では息切れおよび疲労が生じ,右室不全では末梢および腹部の体液貯留が生じる;通常,両心室がある程度関連する。


診断は臨床的に行われ,胸部X線および心エコー検査により裏づけられる。

治療には,利尿薬,ACE阻害薬,β遮断薬,および基礎疾患の修正がある。



【生理】

心収縮性(収縮力および収縮速度),心室機能,および心筋O2要求量は,前負荷,後負荷,基質の供給量(例,O2 ,脂肪酸,ブドウ糖),心拍数および調律,ならびに生存心筋量によって決まる。

心拍出量(CO)は1回拍出量と心拍数の積に等しい;COはまた,静脈還流量,末梢血管緊張度,および神経液性因子の影響を受ける。

前負荷は,収縮期直前である弛緩相(拡張期)終期に,心臓にかかる負荷条件である。前負荷は拡張終期心筋線維伸展の程度および拡張終期容量を表し,これは心室拡張期圧および心筋壁組成の影響を受ける。

典型的には,左室(LV)拡張終期圧は,特に正常値を超えていれば,前負荷の妥当な指標である。

左室拡張,肥大,および心筋伸展性の変化(コンプライアンス)は前負荷に影響する。


後負荷は収縮期開始時に心筋線維収縮に抵抗する力である;これは大動脈弁開口時の室圧,容量,および壁厚により決まる。

臨床的には,大動脈弁開口時または直後の全身血圧は最大収縮期壁応力を表し,後負荷にほぼ等しい。

フランク-スターリングの法則は前負荷と心機能との関係を表す。

正常では収縮期収縮機能(1回拍出量またはCOによって表される)は標準的な生理範囲内の前負荷に比例することを,この法則は説明している(心不全および心筋症: フランク-スターリングの法則。)

収縮性は,心臓カテーテル法を用いなければ測定困難であるが駆出率(EF)にある程度反映され,これは収縮毎に駆出される拡張終期容量のパーセンテージ(左室1回拍出量/拡張終期容量)である。




心予備能とは,情動ストレスや身体的ストレスに反応して安静時の水準を超えて心機能を上昇させる能力である;最大労作中に,身体のO2消費量は250mL/分から1500mL/分以上に増加しうる。

その機序には,心拍数,収縮期容量,拡張期容量,1回拍出量,および組織O2抽出量(動脈血と混合静脈血または肺動脈血とのO2含量較差)の増加がある。

十分に鍛えられた若年成人では,心拍数は安静時の55〜70/分から最大運動時には180拍/分まで増加し,COは6L/分から25L/分以上に増加する。

安静時には,動脈血は約18mL/dLのO2を含み,混合静脈血または肺動脈血は約14mL/dLのO2を含む。

したがって,O2抽出量は約4.0mL/dLであるが,需要が増加すると抽出量は12〜14mL/dLまで増加しうる。

これらの機序は心不全の代償にも役立つ。


(明日へ続く)
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2014年04月25日

不整脈について(5)

■■■ 不整脈について(5) ■■■

●不整脈の治療(2)

ペースメーカー:

ペースメーカーは電気的事象を感知して,電気刺激を心臓に送ることが必要な場合に反応する。

恒久的ペースメーカーのリードは開胸術により,または経静脈的に設置されるが,緊急時の一時的ペースメーカーのリードは胸壁に設置されることもある。

適応は数多いが,一般に症候性徐脈または高度の房室ブロックが含まれる。

一部の頻脈性不整脈はオーバードライブペーシングにより停止でき,これはより速い心拍で短時間のペーシングを行うことで心室を捕捉するものである;

その後,ペースメーカーは望ましい心拍数まで緩徐化する。

とはいえ,心室性頻拍性不整脈は,植え込み型除細動器のようなペーシングだけでなく心変換および除細動も可能な器具を用いることでより良好に治療される。



ペースメーカーのタイプは3〜5つの文字により示されており,これらの文字は,ペーシングされる心腔,センシングされる心腔,センシング事象に対するペースメーカーの反応(抑制または誘発ペーシング),労作中の心拍数増加の可否(速度変調),多部位ペーシングの可能性(両心房,両心室において,または1つの心腔に2つ以上のペーシングリード)を表している。

例えば,VVIRペースメーカーは心室の事象をペーシング(V)およびセンシング(V)し,センシングされた事象に反応してペーシングを抑制して(I),労作中はレートを増加できる(R)。



VVIおよびDDDペースメーカーは最も一般的に使用されている器具である。

これらは,同等の延命効果をもたらすが,VVIペースメーカーと比較して,生理的ペースメーカー(AAI,DDD,VDD)はAFおよび心不全のリスクを低下させ,生活の質をわずかに改善するようである。


ペースメーカーのデザインの進歩には,低エネルギー回路,新しい電池デザイン,およびコルチコステロイド溶出リード(これはペーシングの閾値を低下させる)が含まれ,これら全てがペースメーカーの寿命を延ばす。

モード切り替えとは,センシング事象に反応してペーシングのモードを自動的に変更することである(例,心房細動中にDDDRからVVIRへ)。


ペースメーカーは,事象の過剰感知や感知低下,ペーシングや捕捉の失敗,または異常レートでのペーシングによる誤作動を生じうる。

頻拍は特に頻度の高い合併症である。

レート変調ペースメーカーは振動,心筋活動,またはMRIの磁場により誘発される電位に反応して刺激を増加させることがある。

ペースメーカー起因性頻拍では,正常に機能している二腔ペースメーカーが,房室結節または逆行性副伝導路を介して心房に伝導される心室性期外収縮またはペーシング拍動を感知し,これが速い周期で反復して心室刺激を誘発する。

正常に機能している装置に関連する合併症にはさらに,二腔ペースメーカーの心室チャネルが心房ペーシングパルスを感知することで心室ペーシングが抑制されるクロストーク抑制や,心室ペーシングが誘発する房室非同期によって漠然とした変動性の脳症状(例,浮遊感),頸部症状(例,頸部拍動),または呼吸器症状(例,呼吸困難)が起こるペースメーカー症候群がある。



外界からの干渉は,外科用電気焼灼器やMRIなどの電磁気源に由来するが,ペースメーカーのジェネレータおよびリードがMRIの磁石の内側にない場合,MRIは安全である。

携帯電話および電子セキュリティ装置は干渉源となる可能性がある;

電話をペースメーカーの近くに置くべきではないが,通常の会話に使用するときは問題にならない。


金属探知機を通過する場合,患者が立ち止まらない限りはペースメーカーの誤作動は起こらない。

移植中の合併症はまれであるが,心筋穿孔,出血,気胸が生じうる。

術後合併症には,感染症,リードの移動,およびパルスジェネレータの移動がある。



以上


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2014年04月24日

不整脈について(4)

■■■ 不整脈について(4) ■■■

●不整脈の治療(1)

治療の必要性は様々で,不整脈の症状およびリスクにより左右される。

例え悪化しても,重篤なリスクを伴わない無症候性の不整脈は治療の必要はない。

症候性の不整脈は生活の質を改善するために治療が必要となりうる。

致死的となる恐れのある不整脈は治療を要する。

治療は原因に向けられる。

もし必要であれば,抗不整脈薬,カルジオバージョン除細動,ペースメーカー,またはこれらの併用を含む直接的な抗不整脈療法が用いられる。

血行動態不全症状を起こしている,または起こすと思われる不整脈患者では,治療に対する反応が評価されるまで車の運転を制限する必要があることがある。






●●● 不整脈に対する薬物 ●●●

ほとんどの抗不整脈薬は,主要な細胞電気生理学的作用に基づいて(ヴォーン-ウイリアムズ分類)主に4クラスに分類される(不整脈および伝導障害: 抗不整脈薬(ヴォーン-ウイリアムズ分類))。

ジゴキシンおよびアデノシンはヴォーン-ウイリアムズ分類には含まれない。

ジゴキシンは心房や心室の不応期を短縮し,迷走神経刺激性を有するので,その結果房室結節伝導および房室結節不応期を延長させる。

アデノシンは房室結節伝導を遅延または遮断し,房室結節伝導に依存して持続する頻脈性不整脈を停止できる。




●クラスI:

Naチャネル遮断薬(膜安定化薬)は速いNaチャネルを遮断し,速いチャネル組織(活動中の心房および心室の筋細胞,ヒス-プルキンエ系)での伝導を遅延させる。

心電図では,この作用はP波の拡大,QRS群の拡大,PR間隔の延長,またはこれらの組み合わせとして反映される。

クラスIの薬物はNaチャネル作用の動態に基づいて細分される。

クラスIbの薬物は速い動態を,クラスIcの薬物は遅い動態を,クラスIaの薬物は中等度の動態を示す。

Naチャネル遮断の動態は,電気生理学的作用が現れる時点の心拍数を決定する。

クラスIbの薬物は速い動態を有するため,その電気生理学的作用は速い心拍数でのみ発現する。

したがって,正常心拍数の正常調律中に得た心電図は,速いチャネル組織の伝導遅延の証拠を通常は示さない。

クラスIbの薬物はそれほど強力な抗不整脈薬ではなく,ごくわずかな作用を心房組織に及ぼす。

クラスIcの薬物は遅い動態を有するため,あらゆる心拍数でその電気生理学的作用を発現する。

したがって,正常心拍数の正常調律中に得た心電図は通常,速いチャネル組織の伝導遅延を示す。

クラスIcの薬物はより強力な抗不整脈薬である。

クラスIaの薬物は中等度の動態を有するため,速いチャネル組織の伝導を遅延させる作用は,正常心拍数の正常調律中に得た心電図上に認められることも認められないこともある。

クラスIaの薬物はKチャネル再分極も遮断し,速いチャネル組織の不応期を延長する。

心拍数が正常でも,心電図上でこの作用はQT間隔延長として反映される。

クラスIbの薬物およびクラスIcの薬物はKチャネルを直接遮断しない。

主な適応は,クラスIaおよびIcの薬物が上室性頻拍,クラスIの全薬物が心室頻拍である。

最も懸念される副作用は,治療中の不整脈以上に悪性の薬物関連不整脈を引き起こす催不整脈作用である。

クラスIaの薬物はtorsade point型心室頻拍を惹起しうる;クラスIaおよびクラスIcの薬物は心房性頻脈性不整脈を十分に抑制,緩徐化して,心室拍数の著明な増加を伴う1:1の房室伝導を生じさせる。

クラスIの薬物は全て心室頻拍を悪化させうる。

これらはまた,心室の収縮性を抑制する傾向がある。

クラスIの薬物のこうした副作用は構造的心疾患の患者に起こりやすいので,クラスIの薬物は一般にそのような患者には勧められない。

したがって,これらの薬物は通常,構造的心疾患のない患者または構造的な心疾患を有するが他に治療選択肢のない患者にのみ用いられる。




●クラスII:

クラスIIの薬物はβ遮断薬であり,これらは主に遅いチャネル組織(洞房および房室結節)に作用して,自動能を低下させ,伝導速度を遅延させ,不応期を延長する。

したがって,心拍数は低下し,PR間隔は延長して,房室結節では速い心房脱分極が低い頻度で伝導する。

クラスIIの薬物は主に,洞頻脈,房室結節回帰,心房細動,および心房粗動を含む上室性頻拍の治療に用いられる。

これらの薬物は心室頻拍の治療にも用いられ,心室細動の閾値を上げ,βアドレナリン受容体刺激の心室性催不整脈作用を抑制する。

β遮断薬の忍容性は一般に良好である;副作用には,倦怠感,睡眠障害,および消化管障害がある。これらの薬物は喘息患者には禁忌である。



●クラスIII:

クラスIIIの薬物は主にKチャネル遮断薬であり,これは遅いチャネル組織および速いチャネル組織において活動電位持続時間や不応期を延長する。

したがって,高頻度でパルスを伝導する心臓組織全体の機能は低下するが,伝導速度はさほど影響を受けない。

活動電位が延長するため,自動能は低下する。

心電図に及ぼす主な作用はQT間隔の延長である。

これらの薬物は上室性頻拍および心室頻拍の治療に用いられる。

クラスIIIの薬物には心室性催不整脈,特にトルサードドポアンツ心室頻拍のリスクがある。



●クラスIV:

クラスIVの薬物は非ジヒドロピリジン系カルシウムチャネル拮抗薬であり,これは遅いチャネル組織においてCa依存性活動電位を抑制するので,自動能および伝導速度は低下し,不応期が延長する。

心拍数は低下して,PR間隔は延長し,房室結節では速い心房脱分極が低い頻度で伝導する。

これらの薬物は主に上室性頻拍の治療に用いられる。


(明日へ続く)
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2014年04月23日

不整脈について(3)

■■■ 不整脈について(3) ■■■


●●● 診断 ●●●

既往歴および身体診察によって不整脈が検出され,考えられる原因が示唆されるが,診断には12誘導心電図,または信頼度は低いがモニター心電図が必要であり,これは症状と調律との関係を確立するために症状発現中に実施することが望ましい。



心電図は系統的に判読する;

キャリパーで間隔を計測し,微細な不規則性を同定する。

診断上の重要な特徴は心房興奮の頻度,心室興奮の頻度および規則性,ならびにこの2つの関係である。

不規則な興奮シグナルは,規則的な不規則または不規則な不規則(検出可能なパターンなし)に分類される。

規則的な不規則性は,それ以外は正常な調律における間欠的な不規則性(例,期外収縮),または予測可能な不規則性パターン(例,拍動群間の反復的な関係)である。

幅の狭いQRS波(0.12秒未満)は上室起源を示す(ヒス束分岐部より上部)。幅の広いQRS波(0.12秒以上)は,心室起源(ヒス束分岐部より下部)を示すか,または心室内伝導障害やWolff-Parkinson-White症候群の心室早期興奮により誘発される上室性調律を示す。




●徐脈性不整脈:

徐脈性不整脈の心電図診断は,P波の有無,P波の形態,およびP波とQRS波との関係による。

P波とQRS波との間に関係のない徐脈性不整脈は房室解離を示す;

その補充調律は接合部性の場合(幅の狭いQRS波)と心室性(幅の広いQRS波)の場合とがある。

P波とQRS波との関係が1:1の規則的なQRS調律は房室ブロックの不在を示す。

QRS波に先行するP波は,洞徐脈(P波が正常の場合)または心房性補充調律を伴う洞停止(P波が異常の場合)を示す。

QRS波の後ろにくるP波は,心室補充調律および逆行性室房伝導を伴う洞停止を示す。この場合,QRS波は幅広となる。

QRS調律が不規則な場合,P波の数は通常QRS波よりも多い;

すなわち,一部のP波はQRS波を生むが,一部はこれを生まない(第2度房室ブロックを示す―不整脈および伝導障害: 第2度房室ブロックを参照 )。

P波とそれに続くQRS波との間に1:1の関係を呈する不規則なQRS調律は,通常,洞性拍動の緩徐な促進および抑制を伴う洞性不整脈を示す(P波が正常な場合)。

それ以外の点では規則的なQRS調律における休止期は,第2度房室ブロックによるものだけでなく,非伝導性P波(異常P波は通常,先行するT波の直後に認識されたり,先行するT波の形態を変形させる),洞停止,または洞進出ブロック(不整脈および伝導障害: 洞結節機能不全を参照 )によっても引き起こされうる。




●頻拍性不整脈:

拍性不整脈は4群に分類され,明らかに規則的か不規則か,QRS波の幅が狭いか広いかで定義される。

不規則で幅の狭いQRS波の頻脈性不整脈には,心房細動,心房粗動または種々の房室伝導を伴う真性心房頻拍,および多源性心房頻拍がある。

鑑別は心房の心電図信号に基づいて行われ,これはQRS波間の休止期が長くなった際に最もよくみられる。

独立したP波を伴わず,連続性で,出現時期および形態が不規則で非常に速い(300/分を超える)心房の心電図信号はAFを示す。

収縮毎に異なる少なくとも3種類の形態を伴う独立したP波は,多源性心房頻拍を示唆する。

途中に等電期が介在しない,規則的で独立した一様の心房シグナルは,心房粗動を示唆する。



不規則で幅の広いQRS波の頻拍性不整脈には,脚ブロックまたは心室早期興奮のいずれかを伴って伝導される前述の心房性頻脈性不整脈4種,および多形性の心室頻拍がある。

鑑別は,心房の心電図信号および心拍数の非常に速い(250/分を超える)多形性心室頻拍の存在に基づいて行われる。



規則的で幅の狭いQRS波の頻脈性不整脈には,洞頻脈,一定の房室伝導比を伴う心房粗動または心房頻拍,および発作性上室性頻拍症(房室結節回帰性頻拍,房室副伝導路による順行性房室回帰性頻拍,洞結節回帰性上室性頻拍)がある。

迷走神経刺激または薬理的房室結節伝導遮断は,これらの頻拍の鑑別に役立つ場合がある。

これらの手法を用いても洞頻脈は停止しないが,洞頻脈が緩徐化するかまたは房室ブロックが発現して正常P波が露呈する。

同様に,心房粗動および真性心房頻拍は通常停止しないが,房室ブロックにより粗動波または異常P波が露呈する。

最も一般的な型の発作性上室性頻拍(房室結節回帰性および順行性回帰性頻拍)は,もし房室ブロックが起こるならば,停止するはずである。



規則的で幅の広いQRS波の頻脈性不整脈には,規則的で幅の狭いQRS波の頻脈性不整脈で挙げた不整脈(それぞれが脚ブロックまたは心室早期興奮を伴う)および単形性心室頻拍がある。

迷走神経刺激はこれらの鑑別に役立てられる。

心室頻拍と心室内伝導障害を伴う上室性頻拍とを鑑別する心電図基準が提案されている。

疑わしい場合,調律が心室頻拍であれば上室性頻拍用の一部の薬物により臨床状態が悪化するため,その調律は心室頻拍であるとみなす;しかしながら,その逆は真ではない。



(明日へ続く)

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2014年04月22日

不整脈について(2)

■■■ 不整脈について(2) ■■■

●正常調律:

成人における安静時の洞心拍数は通常60〜100拍/分である。

心拍数の低下(洞徐脈)は若年者,特に運動選手(スポーツと心臓: 診断を参照 ),および就寝中に起こる。

心拍数の上昇(洞頻脈)は,交感神経および循環カテコールアミンの作用を介して運動,疾患,または情動とともに起こる。

正常では,心拍数の著明な日内変動が起こり,早朝覚醒直前の心拍数が最も低下する。



吸気時のわずかな心拍数増加および呼気時の心拍数減少(呼吸性洞性不整脈)も正常である;

迷走神経緊張の変動がこれを介在し,特に健康な若年者に一般的にみられる。この変動は加齢とともに減少するが,完全には消失しない。

完全に規則的な洞調律拍動は病的であり,自律神経系の脱神経(例,進行した糖尿病)または重度心不全を有する患者に生じる。

ほとんどの心臓電気活動は心電図に現れるが,洞房結節,房室結節,およびヒス-プルキンエ系の脱分極は,関与する組織が少なく検出されない。

P波は心房脱分極を示す。QRS波は心室脱分極を示し,T波は心室再分極を表す。



PR間隔(P波の開始からQRS波の開始まで)は,心房興奮開始から心室興奮開始までの時間である。

この間隔の多くは,房室結節におけるパルス伝導の遅延を反映する。

RR間隔(2つのQRS波間の時間)は心室拍動速度を表す。

QT間隔(QRS波の開始からT波の終了まで)は,心室脱分極の持続時間を表す。

QT間隔の正常値は,女性においてわずかに長く,心拍数が低下しても長くなる。

QT間隔は心拍数の影響について補正する(QTc)。





●●● 病態生理 ●●●

調律障害は,パルス生成,パルス伝導,またはその両方の異常から生じる。

徐脈性不整脈は,主に房室結節やヒス-プルキンエ系内の内因性ペースメーカー機能低下や伝導ブロックから生じる。

ほとんどの頻拍性不整脈はリエントリーに起因するが,一部は,正常自動能の亢進または自動能機序の異常から生じる。



リエントリーとは,伝導特性および不応期が異なる2つの伝導路が相互に連絡し,それをパルスが旋回伝播することである(不整脈および伝導障害: 典型的回帰の機序)。

特定の状況下(典型的には期外収縮によって促進される)で,リエントリーは興奮波面の持続的な旋回を引き起こし,頻拍性不整脈が生じる(不整脈および伝導障害: 房室結節内リエントリー性頻拍の開始)。

正常では,リエントリーは刺激に続いて起こる組織の不応期により阻止される。

しかしながら,次の3状態ではリエントリーが好発する:

組織の不応期の短縮(例,交感神経刺激による),伝導路の延長(例,肥大または伝導路異常による),パルス伝導の遅延(例,虚血による)。





●●● 症状と徴候 ●●●

不整脈および伝導障害は無症候性のこともあるが,動悸(脈の欠滞,速い脈,もしくは激しい脈の感覚―心疾患患者へのアプローチ: 動悸を参照 ),血行動態不全症状(例,呼吸困難,胸部不快感,前失神状態,失神),または心停止を引き起こすこともある。

ときに,遷延性の上室性頻拍中に心房性ナトリウム利尿ペプチドの放出による多尿が生じる。



脈の触診や心臓の聴診により心室拍動およびその規則性や不規則性が明らかにされる。

頸静脈波の診察は,房室ブロックや心房性頻脈性不整脈の診断に有用となる。

例えば,完全房室ブロックでは,房室弁が閉鎖するときに心房が断続的に収縮し,頸静脈波に巨大a(キャノン)波が生じる(心疾患患者へのアプローチ: 静脈を参照 )。

不整脈の身体所見は他にほとんどない。


(明日へ続く)


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2014年04月20日

不整脈について(1)

■■■ 不整脈について(1)■■■

正常な心臓は規則正しく協調的に拍動するが,これは固有の電気的特性をもつ電気パルスが筋細胞により生成されて広く伝達され,一連の組織的心筋収縮を誘発するからである。

不整脈および伝導障害は,これらの電気パルスの生成や伝導,または両方の異常に起因する。

先天的な構造異常(例,房室副伝導路)または機能異常(例,遺伝性イオンチャネル疾患)を含む心疾患はいずれも調律を障害しうる。

調律障害を引き起こす,またはその一因となる全身要因には,電解質異常(特にKまたはMgの低下),低酸素症,ホルモンの不均衡(甲状腺機能低下症,甲状腺機能亢進症),薬物および毒物(例,アルコール,カフェイン)がある。



●解剖および生理

上大静脈と高位右房外側の接合部には,各正常心拍の最初の電気パルスを生成する細胞群があり,洞房結節または洞結節と呼ばれる。

これらのペースメーカー細胞の放電は隣接細胞を刺激し,連続する心臓領域に規則正しい順序で刺激が伝わる。

パルスは,心房から結節間伝導路および機能の特化されていない通常の心房筋細胞を選択的に経由して房室結節へ伝導する。

房室結節は心房中隔の右側に位置する。房室結節の伝導速度は遅く,したがってパルス伝導が遅延する。

房室結節伝導時間は心拍依存性であり,自律神経緊張および血中カテコールアミンにより調節され,心房拍動数がいくつであっても心拍出量を最大化する。

心房は前壁中隔領域以外では線維輪により心室と電気的に絶縁されている。

前壁中隔領域では,房室結節から連続するヒス束が心室中隔の上端部に進入して左脚と右脚に分岐し,プルキンエ線維で停止する。

右脚ではパルスは右室の前壁および心尖部心内膜領域に伝導する。左脚では心室中隔の左側全体に扇形に広がる。

左脚の前部(左脚前枝)および後部(左脚後枝)は心室中隔の左側を刺激し,これは心室において電気的に興奮する最初の部分である。

したがって,心室中隔は左から右へ脱分極し,それに続いて心内膜表面から心室壁を経て心外膜表面に至る両心室の興奮がほぼ同時に起こる。





●電気生理学:

心筋細胞膜を通るイオンの通過は,心筋細胞の周期的な脱分極および再分極(活動電位と呼ばれる)を引き起こす特異的イオンチャネルを介して制御されている。

活動中の心筋細胞の活動電位は,心筋細胞が収縮期膜電位-90mVから約-50mVに脱分極するときに起こる。

この閾電位で,電位依存性の速いNaチャネルが開口し,その急激な濃度勾配に従ったNa流入が介在して急速な脱分極が生じる。

速いNaチャネルは急速に不活性化されてNa流入が停止するが,時間依存性および電位依存性の他のイオンチャネルが開口し,遅いCaチャネルからCaを流入させ(脱分極事象),KチャネルからKを流出させる(再分極事象)。

最初はこれら2つの過程が均衡を保つので膜電位が正に維持され,活動電位のプラト-相が延長する。

この相の間は,心筋細胞内に流入するCaが電気機械的結合および心筋細胞収縮に関与する。

最終的に,Ca流入は停止してK流出が増加し,心筋細胞の急速な再分極が生じて静止膜電位-90mVに戻る。



心臓組織は一般に2種類ある。

速いチャネルから成る組織(心房および心室の活動中の筋細胞,ヒス-プルキンエ系)にはNaチャネルが高密度に認められ,自発性拡張期脱分極がほとんどまたは全くないこと(したがってペースメーカー活動がきわめて遅い),早期脱分極速度が非常に速いこと(したがって伝導速度が速く),不応期の消失が再分極と同時に生じること(したがって短い不応期で高頻度に反復パルスを伝導できる)を特徴とする活動電位が生じる。

遅いチャネルから成る組織(洞房結節および房室結節)にはNaチャネルが低密度に認められ,自発性拡張期脱分極がより急速であること(したがってペースメーカー活動がより速い),早期脱分極速度が遅いこと(したがって伝導速度が遅い),不応期の消失が再分極より遅れて生じること(したがって不応期が長く,高頻度の反復パルスを伝導できない)を特徴とする活動電位が生じる。

正常では,洞房結節は最も速い自発性拡張期脱分極速度を有するので,その細胞は他の組織よりも高頻度に自発性活動電位を生成する。

したがって,正常心臓では,洞房結節が自動能を有する主要組織(ペースメーカー組織)である。もし洞房結節がパルスを生成しなければ,洞房結節に次いで自動能が高い組織がペースメーカーとして機能し,典型的にはこれは房室結節である。

交感神経刺激はペースメーカー組織の放電頻度を増加させ,副交感神経刺激はこれを減少させる。


(明日へ続く)
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