2014年06月25日

感染性心内膜炎について(3)

●感染性心内膜炎について(3)


●症状と徴候

SBE: 初期症状は漠然としている:微熱(39°℃未満),寝汗,易疲労性,倦怠感,および体重減少である。

悪寒や関節痛が起こることもある。

弁機能不全の症状と徴候が最初の手がかりとなることがある。

初期に発熱や心雑音を呈する患者は15%未満であるが,最終的にはほとんど全ての患者が両方とも発症する。

身体診察は正常であるか,または蒼白,発熱,既存の心雑音の変化または新たな逆流性雑音の出現,頻拍が認められることがある。



網膜の塞栓により,円形または卵形で白い小さな中心をもつ網膜の出血病変(ロート斑)が生じる場合がある。

皮膚症状には点状出血(体幹の上部,結膜,粘膜および四肢末端),指の先端にみられる有痛性の紅斑性皮下結節(オスラー結節),手掌または足底の圧痛のない出血斑(ジェーンウェー病変),爪下の線状出血がある。



一過性脳虚血発作,脳卒中,中毒性脳症,中枢神経系の真菌性動脈瘤が破裂した場合には脳膿瘍やクモ膜下出血など,中枢神経系の影響が患者の約35%にみられる。

腎塞栓は側腹部痛およびまれに肉眼的血尿を引き起こす場合がある。

脾臓の塞栓は左上腹部痛を引き起こす場合がある。

長期にわたる感染は脾腫や手足の指のばち状化を引き起こす場合がある。




ABEおよびPVE: 症状と徴候はSBEのそれに類似しているが,経過はより速い。

初期の発熱はほぼ必発で,患者は中毒症状を呈する;ときには敗血症性ショックを発症する。

心雑音は初期には約50〜80%においてみられ,最終的には90%を超える。

まれに,化膿性髄膜炎が起こる。



右心系心内膜炎: 敗血症性肺塞栓によって咳や胸膜炎性胸痛が出ることがあり,ときおり喀血がみられる。三尖弁逆流の雑音は典型的である。




●診断

症状や徴候が特異的でなく,変化に富み,潜行性に生じるため,診断には高度の疑いを要する。

発熱があり感染源が不明な患者で,特に心雑音がある場合には,心内膜炎を疑うべきである。


心臓弁疾患の既往がある患者や,最近何らかの侵襲的手技を受けた患者,または静注薬物乱用患者で血液培養が陽性である場合は,心内膜炎の疑いがきわめて強い。

菌血症が確認された患者については,新たな弁性雑音や塞栓の徴候が現れていないか徹底的に何度も診察すべきである。



心内膜炎が疑われる場合,24時間以内に3回の血液培養(各20mL)を行うべきである(症状からABEが示唆される場合は,最初の1〜2時間以内に2回の血液培養を行う)。

心内膜炎を発症しており,前もって抗生物質療法を受けていない場合は,菌血症が持続しているため,通常は3回の血液培養がいずれも陽性となる;少なくとも1回の血液培養が99%の確率で陽性となる。

前もって抗菌薬療法が行われた場合にもやはり血液培養を行う必要があるが,陰性である可能性がある。



通常は,経食道心エコー検査(TEE)ではなく,経胸壁心エコー検査(TTE)を実施する必要がある。

TEEはいくぶん精度が高いが,侵襲的であり費用がより高い。

人工弁を装着している患者で心内膜炎が疑われる場合,TTEで診断が確定できない場合,また,感染性心内膜炎の診断が臨床的に確定されている場合には,TEEを実施すべきである。



血液培養で陽性となる以外に,特異的な臨床検査所見はない。

感染が成立すると,正球性-正色素性貧血,白血球数増加,赤血球沈降速度亢進,免疫グロブリンの増加,循環血液中の免疫複合体,およびリウマトイド因子陽性をしばしば認めるが,これらの所見は診断の助けとはならない。

尿検査結果はしばしば顕微鏡的血尿,ときに赤血球円柱,膿尿,細菌尿を示す。



微生物の同定およびその抗菌薬感受性は治療の方針を決めるために必要である。

ある種の微生物は,血液培養に3〜4週間の培養期間を要する。

培養陽性とならないことがある微生物(例,アスペルギルス属)もある。

血清診断法が必要な微生物(例,コクシエラ-バーネッティ,バルトネラ属,クラミジア-シッタシ,ブルセラ属)や,特別な培地が必要な微生物(例,レジオネラ-ニューモフィラもある。血液培養の結果が陰性のときは,以前の抗菌薬療法による抑制,標準的な培地では増殖しない微生物による感染,または他の診断(例,非感染性心内膜炎,塞栓現象を伴う心房粘液腫,脈管炎)が示唆される。



感染性心内膜炎は,心臓手術時,塞栓摘出術時,または剖検時に採取した心内膜の疣贅中に微生物が組織学的に認められた場合(あるいは疣贅の培養中に認められた場合)に診断が確定される。

通常は疣贅を診察に用いることができないため,診断を確立するための臨床基準(感度と特異度が90%超)が開発された。



ラベル:心臓の病気
posted by ホーライ at 04:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 感染症 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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