統合失調症の決定的な検査法はない。
診断は病歴,症状,徴候の包括的評価に基づいて下される。
家族,友人,教師,および同僚など付帯的情報源からの情報はしばしば重要である。
精神疾患の診断・統計マニュアル第4版(DSM-IV)によれば,診断には,2つ以上の特徴的症状(妄想,幻覚,会話の解体,行動の解体,陰性症状)が1カ月のうちかなりの割合で存在することが必要であり,なおかつ社会的,職業的,もしくは自己管理面の問題を伴う前駆期ないしは残遺期の疾病徴候が6カ月間明らかに存在し,そのうち1カ月間は活動期の症状を含むことが必要である。
病歴と,臨床検査および神経画像検査を含む検査により,他の身体疾患または物質乱用による精神病を除外することが必要である(精神的な訴えがある患者へのアプローチ: 精神症状を示す患者の医学的評価を参照 )。
統合失調症の一部の患者には,画像検査で構造的な脳の異常が認められるが,これらは診断的価値をもつほど特異的なものではない。
同様の症状を示す他の精神疾患には,統合失調症に関連するものがいくつかある:すなわち,短期精神病性障害,統合失調症様障害,統合失調感情障害,および妄想性障害である。
さらに,気分障害は一部の人々に精神病を引き起こすことがある。
ある種の人格障害(特に統合失調型)は統合失調症と同様の症状を呈することがあるが,通常はより軽度で精神病とは関連がない。
●統合失調症の予後
症状が発現してから最初の5年間に,次第に自分のことを構わなくなり,それとともに機能面は悪化し,社会的・職業的技能も低下することがある。
陰性症状は重症度を増し,認知機能は低下することがある。
その後,能力障害のレベルは横這いとなる傾向がある。
一部の証拠では,疾患の重症度は晩年,特に女性の場合,軽快することが示唆されている。
重度の陰性症状と認知機能障害のある患者では,抗精神病薬を投与していなくとも,随意運動の障害が発現することがある。
予後は亜型によって異なる。
妄想型統合失調症患者は能力障害が軽度であり,現行の治療法が奏効することが多い。
欠陥型の患者は,能力障害が重く,予後も不良で,治療に対して抵抗性を示すのが典型である。
統合失調症は他の精神疾患を併発することがある。
顕著な強迫症状(不安障害: 症状と徴候を参照 )を伴う場合には,予後は特に不良である;境界性人格障害(人格障害: B群を参照 )の症状を伴う場合の方が予後はよい。
統合失調症患者の約80%は,生涯のどこかの時点で大うつ病のエピソードを1回以上経験する。
診断後最初の1年間,予後は処方された向精神薬の服薬遵守と密接に関係する。
全体として,3分の1の患者は著明で持続的な改善を示す;3分の1はいくらか改善するが,間欠的な再発と残遺的な能力障害がみられる;3分の1は能力が永久的に大きく失われる。
発病前の機能水準まで完全に回復するのは全患者の約15%のみである。
良好な予後に結びつく要因は,良好な病前機能(例,優秀な学生,有能な職業歴),遅いおよび/または急激な発病,統合失調症ではなく気分障害の家族歴があること,認知障害がほとんどないこと,陰性症状が少ないこと,妄想型または非欠陥型であることなどである。
予後不良に結びつく要因は,早期発症,病前機能の不良,統合失調症の家族歴,および解体型または欠陥型で多くの陰性症状を示すことなどである。
男性は女性よりも転帰不良である;女性の方が抗精神病薬治療への反応がよい。
物質乱用は,50%もの統合失調症患者にみられる重大な問題である。
事例証拠から,マリファナおよび他の幻覚薬の使用は統合失調症患者にきわめて破壊的な影響を及ぼすことが示唆されており,これらの使用は強く阻止すべきである。
物質乱用の併存は転帰不良の重要な予測因子であり,服薬不遵守や再発の繰り返し,頻繁な再入院,機能の低下,およびホームレスになるといった社会的支援の喪失などをもたらす。
以上