原因は不明だが,遺伝的要素を示す証拠が有力である。
症状は通常,青年期または成人早期に始まる。
診断には,症状のエピソードが1回以上あり,それが6カ月以上持続していなければならない。
治療は薬物療法,精神療法,リハビリテーションからなる。
世界的にみて,統合失調症の有病率はおよそ1%である。
割合は男女同等で,文化間でも比較的一定している。
割合は都市部の社会経済的下層でより高いが,恐らくこれは,能力障害の影響が失業と貧困をもたらすためだと思われる。
同様に,単身者の方が有病率が高いが,これはこの病気ないしその前駆症状が社会的機能に与える影響を反映していると思われる。
平均発症年齢は男性18歳,女性25歳である。
小児期における発症はまれだが,青年期早期または晩年の発症(この場合にはパラフレニーと呼ばれることがある)もありうる。
●統合失調症の病因
特異的な原因は不明だが,脳室の拡大と海馬前部およびその他の脳領域の大きさの縮小といった脳構造の変化と,特にドパミンとグルタミン酸の活性変化に関連する神経伝達物質の変化から明らかなように,統合失調症には生物学的基盤がある。
統合失調症は神経発達上の脆弱性を有する人々に発症し,症状の発現,寛解,および再発はこれら脆弱性の持続と環境ストレス要因との相互作用の産物であると示唆する専門家もいる。
統合失調症に罹患しやすい神経発達上の脆弱性は,遺伝的素因,子宮内・出生時・出生後の合併症,または中枢神経系のウイルス感染が原因である可能性もある。
妊娠第2トライメスターにおける母体の飢餓体験およびインフルエンザ暴露,出生時体重が2500g未満,2度目の妊娠におけるRh不適合,および低酸素症はリスクを高める。
統合失調症を有する人のほとんどは家族歴をもたないが,遺伝的要因が示唆されている。
統合失調症の第1度近親者をもつ人は,この障害を発症するリスクが約10%であるのに対し,一般集団でのリスクは1%である。
一卵性双生児は約50%の一致率を示す。感度の高い神経学的検査と神経精神医学的検査では,眼球の円滑追跡運動の異常,認知と注意力の障害,そして感覚ゲーティングの不全が,一般集団よりも統合失調症患者に多くみられることが示唆されている。
このようなマーカー(中間表現型)は統合失調症患者の第1度近親者にもみられ,脆弱性の遺伝的要素を示すと思われる。
環境ストレス因子は,脆弱性を有する人々における症状発現や再発の引き金となりうる。
ストレス因子には主として生化学的(例,物質乱用,特にマリファナ)または社会的なもの(例,失業あるいは貧困に陥る,大学に行くために家を出る,恋愛関係が破綻する,軍隊に入る)があると思われる;しかしながら,これらのストレス因子は原因となるものではない。
親の育て方が悪いために統合失調症になるという証拠はない。
症状の形成や悪化に対するストレスの影響を緩和する保護的要因には,良好な社会的支援,対処技術,および抗精神病薬がある(統合失調症と関連障害: 治療を参照 )。
(続く)