パーキンソン病は,運動緩慢,寡動,筋固縮,安静時振戦,姿勢不安定を特徴とする,特発性で緩徐に進行するCNS変性疾患である。
診断は臨床的に行う。治療はレボドパとカルビドパの併用,他の薬物投与,さらに難治性の症状には手術を行う。
パーキンソン病は65歳以上の人々の約1%,40歳を超えた人々の0.4%が罹患する。
平均発症年齢は約57歳である。
まれに,小児期や青年期に発症するものもある(若年性パーキンソン症候群)。
●病因と病態生理
パーキンソン病では,黒質,青斑,および他の脳幹ドパミン作動性細胞群の色素性ニューロンが消失する。
黒質ニューロンは尾状核と被殻に放射しており,黒質ニューロンが失われると,これらの領域におけるドパミンが涸渇する。
原因は不明である。
続発性パーキンソン症候群は,他の変性疾患,薬物,または外因性毒素により大脳基底核におけるドパミン作用の消失または阻害が生じるために起こる。
最も一般的な原因は,フェノチアジン,チオキサンテン,ブチロフェノン系抗精神病薬,またはレセルピンの摂取であり,これらの薬物はドパミン受容体を遮断する。
頻度は低いが,一酸化炭素またはマンガン中毒,水頭症,脳の構造的病変(例,腫瘍,中脳または基底核の梗塞),硬膜下血腫,ウィルソン病,特発性変性疾患(例,線条体黒質変性症,多系統萎縮症)により生じることもある。
メペリジン合成の失敗によって意図せず作られ,非経口使用されている違法薬物,N-MPTP(n-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロピリジン)により,重度で不可逆性のパーキンソン症候群が突発的に生じることがある。
基底核に生じた脳炎により,パーキンソン症候群が起こることもある。
●症状と徴候
大部分の患者では,疾患は片手の安静時振戦(丸薬丸め振戦)として潜行性に発症する。
振戦は緩徐で粗大である。振戦は安静時に最大となり,運動時には減少し,睡眠時には消失する;情緒的緊張や疲労により増大する。
通常は手,腕,脚が最も侵されやすく,この順に侵される。顎,舌,額,瞼も侵されることがあるが,声には波及しない。疾患が進行するにつれ,振戦は目立たなくなることもある。
多くの患者で,振戦のない固縮が生じる。
固縮が進行するにつれて動きが鈍くなり(運動緩徐),減少し(運動減少),始動困難(無動)になる。
固縮および運動減少は筋肉痛や疲労感の一因となることがある。
口を開けたままで瞬きが減る仮面様顔貌を呈する。
顔の表情が失われ,動きが少なく緩慢になるため,最初はうつ状態にあるようにみえる。
発声不全が生じ,独特の単調で吃音調の構音障害がみられる。
運動減少と遠位筋の制御障害により小字症(非常に小さな文字を書くこと)が起こり,日常生活活動が次第に困難になる。
こわばった関節を医師が動かすと,固縮の度合いが変動して,律動的なぴくぴくした動きが突然生じ,つめ車のような効果をもたらすこともある(歯車様硬直)。
姿勢は前かがみになる。歩行を開始する・向きを変える・止まるという動作が困難になる;小刻みに足を引きずって歩くようになり,腕は腰の方へ屈曲し,歩きながら腕を振らなくなる。
足取りが不意に速くなり,倒れないようにするために急に走り出すことがある(加速歩行)。
重心を移すと前や後ろに倒れそうになる(前方突進,後方突進)が,これは姿勢反射の消失によるものである。
認知症および抑うつがよくみられる。
起立性低血圧,便秘,排尿遅延が生じることもある。
多くの患者に嚥下困難と,したがって誤嚥がみられる。
患者は複数の動作を交互に迅速に行うことができない。
通常,感覚や力は正常である。
反射は正常だが,著明な振戦または固縮のために生じにくくなることがある。
脂漏性皮膚炎がよくみられる。
脳炎後パーキンソン症候群では,頭部および眼の強制的,持続的な偏位(注視クリーゼ),その他のジストニア,自律神経不安定,人格変化が生じる。
(続く)
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