診断は病歴と身体診察に基づき,肺機能検査を用いて確認する。基礎疾患の診断,および喘鳴の原因となる疾患の除外も,重要である。
肺機能検査: 喘息が疑われる患者には,気道閉塞の重症度,および可逆性の判定ならびに定量化のため,肺機能検査を行うべきである。
肺機能検査のデータの質は,患者の努力に左右されるため,検査前には患者の教育が必要である。
気管支拡張薬は,中止しても問題がないのであれば,検査前に中止すべきである:アルブテロールなどの短時間作用型β作動薬では6時間前;イプラトロピウムでは8時間前;テオフィリンでは12?36時間前;サルメテロールおよびフォルモテロールなどの長時間作用型β作動薬では24時間前;チオトロピウムでは48時間前に中止する。
肺活量測定(肺機能検査を参照 )は,短時間作用型気管支拡張薬の吸入の前後に行うべきである。
気管支拡張薬吸入前の気道閉塞の徴候には,最初の1秒間の努力呼気量(FEV1)の減少およびFEV1の努力肺活量に対する比(FEV1/FVC)の低下などがある。
FVCも減少しうる。肺気量測定では,エアトラッピングによる残気量および/または機能残気量の上昇が示されうる。
気管支拡張薬による治療に反応してFEV1が12%以上または0.2L以上改善すれば,可逆性の気道閉塞が確定されるが,この所見がなくても気管支拡張薬による治療の試みを除外すべきではない。
肺活量測定は,喘息と診断されている患者では少なくとも年1回,疾患の進行を監視するために,行うべきである。
フローボリューム曲線も,上気道閉塞(喘息に似ている)の一般的な原因である声帯機能障害の診断または除外のために調べるべきである。
誘発検査では,吸入メタコリン(または代わりに吸入ヒスタミン,アデノシン,ブラジキニン,または運動負荷検査など)を使用して気管支収縮を誘発するが,検査が適応となるのは,喘息が疑われる患者で肺活量測定およびフローボリューム検査が正常である場合,咳喘息である場合,禁忌がない場合である。
禁忌には,FEV1が1L未満または50%未満,最近発症の心筋梗塞または脳卒中,重度の高血圧(収縮期血圧200mmHg以上,拡張期血圧100mmHg以上)が含まれる。
FEV1が20%以上低下していれば,喘息の診断が裏づけられる。
しかしながら,FEV1はCOPDなど他の疾患でも,これらの薬物に反応して減少しうる。
●その他の検査: その他の検査は状況によっては有用である。
一酸化炭素拡散能(DLco)検査はCOPDと喘息との鑑別に有用である。
数値は,喘息では正常か上昇しており,COPDでは,通常低下しており,特に肺気腫があれば低下している。
胸部X線は,喘息の背景にある原因,またはその他の診断,例えば心不全もしくは肺炎などを除外するのに有用である。
喘息の胸部X線は通常正常であるが,粘液栓の徴候である過膨張または区域性無気肺を示すこともある。
浸潤影は,特に出没し,中枢気管支拡張の所見と関連する場合,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症を示唆する。
病歴からアレルギー性誘因が示唆される小児は全て,(免疫療法の対象となる可能性があるため)アレルギー検査が適応される。
病歴がアレルゲン回避により症状が緩和されたことを示唆する成人,および治療的抗IgE抗体療法(喘息: 薬物療法を参照 )の試用が検討されている人には,アレルギー検査を考慮すべきである。
皮膚検査および放射性アレルゲン吸着試験(RAST)によるアレルゲン特異的IgEの測定によって,アレルギーの特異的誘因を同定できる(アレルギー性およびその他の過敏性疾患: 特異的検査を参照 )。
血中好酸球数の上昇(400/μL以上)および非特異的IgEの上昇(150IU以上)は,アレルギー性喘息を示唆するが診断を確定しない,なぜなら他の種々の病態でも上昇しうるからである。
喀痰の好酸球検査は一般的には行われていない;好酸球が多数見つかれば喘息を示唆するが,感度がよいわけでも特異的でもない。
安価な携帯型の流量計を用いたピークフロー(PEF)測定は,疾患の重症度の在宅モニタリングや治療の参考にするために推奨される。
●増悪の評価: 喘息と分かっている患者が急性増悪を起こした場合は,パルスオキシメトリー,およびPEFまたはFEV1のいずれかを測定すべきである。
これらの測定は3つとも,増悪の重症度の判定,および治療に対する反応の記録に有用である。
PEF値は患者の自己最良値を対象に評価するが,これは同じくらい十分にコントロールされている患者の間でも大きく異なる。
ベースラインからの15?20%の低下は,有意な増悪を表す。
基準値が分からないときは,%予測値によって,気流量制限のおおよその見当はつくが,個々の患者の悪化度は不明である。
ほとんどの増悪では胸部X線検査を行う必要はないが,肺炎または気胸を示唆する症状のある患者には行うべきである。
ABG測定は,著しい呼吸促迫,または切迫した呼吸不全の徴候や症状のある患者には行うべきである。
●予後
喘息のある小児のほとんどで喘息は治るが,4人に1人は喘鳴が成人まで持続するか,数年後に再発する。
女性であること,喫煙,若年での発症,住宅のチリダニへの感作,気道過敏性は,持続および再発の危険因子である。
米国では,喘息が原因となる死亡者数は年間に約5000人で,その大半は治療すれば回避できる。
したがって,適切な治療を受け,医師の指示を守ると,予後は良好である。
死亡の危険因子には,入院前に経口コルチコステロイドの必要量が増えること,急性増悪による入院歴,診察時のピークフロー低下がある。
いくつかの研究は,吸入コルチコステロイドの使用が入院および死亡率を減少させることを示している。
一部の喘息患者では,時間の経過とともに気道が永久的な構造的変化(リモデリング)を起こし,正常な肺機能に戻るのを妨げる。
抗炎症薬の早期の積極的使用が,このリモデリングを防ぐのに有用な可能性がある。
(続く)
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