2014年05月11日

喘息とは?

●喘息とは?

喘息は,気道のびまん性炎症による疾患で,部分的または完全に可逆的な気管支収縮を生じさせる様々な誘発的刺激により引き起こされる。

症状と徴候には,呼吸困難,胸部圧迫感,喘鳴などがある。診断は病歴,身体診察,肺機能検査に基づく。

治療には誘発因子の制御および薬物療法が必要で,吸入β作動薬および吸入コルチコステロイドを用いるのが最も一般的である。

治療を行えば予後は良好である。



●疫学

喘息の有病率は1970年代以来増加し続けており,現在,世界人口の推定4?7%が喘息にかかっている。

米国では約1200万?1700万人が喘息にかかっている;1982年から1992年の間に有病者数は1000人当たり34.7人から49.4人に増加した。

有病率は,18歳未満(6.1%)が18?64歳(4.1%)より高く,思春期前では男性が,思春期後では女性が高い。

都市部の住民,黒人,および一部のヒスパニック系集団で高い。

喘息による死亡率も上昇しており,米国では喘息による死亡者は年間に約5000人である。

死亡率は黒人が白人よりも5倍高い。喘息は,小児の入院の主たる原因であり,小学校の不登校の原因となっている第1の慢性疾患である。

2002年の喘息の医療費は,総額140億ドル(約1兆5000億円)であった。




●病因

喘息の発症は多因子によるもので,複数の感受性遺伝子と環境因子の相互作用による。

感受性遺伝子には,ヘルパーT2(TH2)細胞とそのサイトカイン(IL-4,IL-5,IL-9,IL-13)の遺伝子,および最近同定されたADAM33遺伝子(気道の平滑筋および線維芽細胞の増殖を刺激したり,サイトカインの産生を調節している可能性がある)が含まれていると考えられている。



住宅(チリダニ,ゴキブリ,ペット)およびその他の環境(花粉)アレルゲンが,児童や成人の喘息発症に関連していることを示すはっきりした証拠がある。

生涯の早い時期の内毒素感染または暴露は,耐性を引き起こすこともあり,防御ともなりうる。大気汚染と喘息発症との関連は決定的ではないが,大気汚染は増悪を誘発しうる。


ビタミンCとE,およびω-3脂肪酸が少ない食事は,肥満と同様に,喘息と関連があるとされている。

喘息は周産期の要因,例えば若年の母親,母親の栄養不良,早産,出産時低体重,母乳不足などとも関連があるとされている。

小児期のタバコの煙への暴露については,寄与効果があるとする研究と防御効果があるとするものと両論ある。

窒素酸化物および揮発性有機化合物の室内暴露は,喘息の既往歴のない人における持続性の可逆性気道閉塞症候群である反応性気道機能不全症候群(RADS)の発症と関連がある。

RADSが喘息とは別のものなのか,職業性喘息の一形態なのかには議論の余地があるが,2つの病態には類似点(例,喘鳴,呼吸困難,咳)が多く,コルチコステロイドに反応する。




●病態生理と分類

遺伝的要素および環境的要素は,ヘルパーT1(TH1)細胞系とTH2細胞系のバランスを決定するという機序で,相互に作用する可能性がある。

専門家の考えによれば,乳児は,好酸球の発育と活性化およびIgE産生に特徴づけられる,アレルギー誘発性および炎症誘発性TH2免疫応答の素因をもって生まれるが,幼児期早期の細菌感染,ウイルス感染,および内毒素への暴露で,体はTH1応答へと移行し,それによってTH2細胞が抑制され,免疫寛容が起きる。先進国における小家族化と少子化,清潔な室内環境,ワクチンや抗生物質の早期使用の傾向は,これらTH2抑制性の,寛容誘発の暴露の機会を小児から奪うことにもなっており,先進国において喘息の有病率が上昇し続けている理由の一部を説明する(衛生仮説)。



喘息患者では,これらTH2細胞およびその他の細胞系―とりわけ好酸球および肥満細胞,そして他のCD4+亜型および好中球も―が,広範な炎症性浸潤を気道上皮および平滑筋に形成し,落屑,上皮下の線維化,平滑筋肥厚を引き起こす。

平滑筋の肥厚は気道を狭窄し,アレルゲン,感染,刺激物,副交感神経系刺激(サブスタンスP,ニューロキニンA,カルシトニン遺伝子関連ペプチドなどの炎症誘発性神経ペプチドの放出を引き起こす),および,その他の気管支収縮の誘因への反応性を増大させる。



気道の反応性亢進の他の要因には,気管支収縮抑制因子(上皮由来弛緩因子,プロスタグランジンE2)の欠損,および上皮や粘膜浮腫が剥離した結果生じた内因性気管支収縮物質(エンドペプチダーゼ)を代謝するその他の物質の欠損なども含まれる。

粘液塞栓および末梢血好酸球増加もまた喘息における古典的所見であり,気道炎症の随伴徴候でありうる。



喘息発作の一般的な誘因には,環境性および職業性アレルゲン;感染(幼児におけるRSウイルスおよびパラインフルエンザ感染,児童および成人における上気道感染および肺炎);運動,特に寒冷または乾燥した環境において;刺激物の吸入(大気汚染);不安,怒り,興奮などがある。

アスピリンは,より年齢の高い喘息患者の最大30%において,またはより重症の喘息患者において誘因となり,典型的に鼻および副鼻腔のうっ血を伴う鼻ポリープとつながりがある。



胃食道逆流症(GERD)は,最近,喘息の一般的な誘因として認識されている(おそらく食道の酸による反射性気管支収縮を経て,または酸の微小吸引によって喘息を引き起こす)。

アレルギー性鼻炎はしばしば喘息と共存する;しかし,両者が同じアレルギー反応の過程で生じる異なった症状なのか,または鼻炎が1つの個別的な喘息誘因なのかは不明である。


誘因が存在すると,喘息に特徴的な病態生理学的変化により,可逆性の気道閉塞や不均等な肺換気が起こる。

閉塞した領域では相対的な血流量が相対的な換気量を上回り,その結果として肺胞O2分圧が低下し,肺胞CO2分圧が上昇する。ほとんどの患者は過換気により代償することができ,それによってPaco2を正常値の範囲内に維持する。

しかし重度の増悪では,びまん性の気管支収縮が重度のエアトラッピングを引き起こし,呼吸筋は力学的に著しく障害され,吸気力を発生させられず,呼吸仕事量が増加する。

これらの状態の下では,低酸素血症および過度の労作がさらに悪化し,Paco2が上昇する。



呼吸性および代謝性アシドーシスが生じることもあり,治療しないまま放置すると,呼吸停止および心停止に至る。

喘息は症状により4つに分類される―軽症間欠型,軽症持続型,中等症持続型,重症持続型である。

喘息は様々な経過を辿るので,1人の患者の間でも分類が変わることもある。

分類に関係なく,患者には軽症,中等症,重症の増悪が起こりうる。

例えば,軽症間欠型の喘息患者の一部では,肺機能が正常で,症状がないときと軽症のときがある期間が長く続いた後に,生命を脅かす重症の増悪が起こる。

喘息発作重積状態という用語は,治療抵抗性の,重篤で激しい持続性の気管支痙攣を意味している。

喘息とCOPDはときに混同されやすい;両者は類似した症状を引き起こし,肺機能検査も類似した結果を示すが,必ずしも臨床的には明白ではない重要な生物学的機序が異なっていると考えられる。




●症状と徴候

軽症間欠型または軽症持続型の喘息患者では,通常,症状のあるときの合間に無症状のときがある。

さらに重症の患者または増悪患者では,呼吸困難,胸部圧迫感,喘鳴の聴取,咳の症状がある;しかし,一部の患者では,咳が唯一の症状となりうる(咳喘息)。

症状は日周期リズムで変化し,睡眠中(しばしば午前4時頃)に悪化する。

さらに重症の患者の多くは,夜間覚醒を伴う(夜間喘息)。



徴候には喘鳴,奇脈(吸気中に収縮期血圧が10mmHg以上低下―心疾患患者へのアプローチ: 奇脈を参照 ),頻呼吸,頻脈,目に見える努力呼吸(首や胸骨の筋肉[補助筋]の使用,直立姿勢,すぼめた唇,会話不能)がある。

呼吸の呼気相が長くなり,吸気:呼気の比は少なくとも1:3となる。


喘鳴は両相で,または呼気相だけで存在することもある。

重症の気管支収縮患者では,著しく気流が制限されているため,喘鳴が聞こえないこともある。


重症の増悪および切迫呼吸不全患者は,典型的に,意識変化;チアノーゼ;15mmHg以上の奇脈;O2飽和度(O2sat)が90%未満;Paco2が45mmHg以上(海面レベル);過膨張のうち,いくつかを有する。

まれに,気胸または気縦隔が胸部X線上でみられる。



症状および徴候は,急性喘息の発作と発作の間では消失するが,一部の無症状患者では軽微な喘鳴が,強制呼気時,運動後,および安静時に聞こえうる。

長期間コントロールされていない喘息患者では,肺の過膨張が胸壁を変化させ,樽状胸郭を来す。

全ての症状や徴候は非特異的であり,時宜を得た治療を行えば可逆的であり,典型的には1つまたはそれ以上の誘因への暴露により引き起こされる。


(続く)


posted by ホーライ at 09:30| Comment(0) | TrackBack(0) | アレルギー性疾患 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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