●●● 診断 ●●●
既往歴および身体診察によって不整脈が検出され,考えられる原因が示唆されるが,診断には12誘導心電図,または信頼度は低いがモニター心電図が必要であり,これは症状と調律との関係を確立するために症状発現中に実施することが望ましい。
心電図は系統的に判読する;
キャリパーで間隔を計測し,微細な不規則性を同定する。
診断上の重要な特徴は心房興奮の頻度,心室興奮の頻度および規則性,ならびにこの2つの関係である。
不規則な興奮シグナルは,規則的な不規則または不規則な不規則(検出可能なパターンなし)に分類される。
規則的な不規則性は,それ以外は正常な調律における間欠的な不規則性(例,期外収縮),または予測可能な不規則性パターン(例,拍動群間の反復的な関係)である。
幅の狭いQRS波(0.12秒未満)は上室起源を示す(ヒス束分岐部より上部)。幅の広いQRS波(0.12秒以上)は,心室起源(ヒス束分岐部より下部)を示すか,または心室内伝導障害やWolff-Parkinson-White症候群の心室早期興奮により誘発される上室性調律を示す。
●徐脈性不整脈:
徐脈性不整脈の心電図診断は,P波の有無,P波の形態,およびP波とQRS波との関係による。
P波とQRS波との間に関係のない徐脈性不整脈は房室解離を示す;
その補充調律は接合部性の場合(幅の狭いQRS波)と心室性(幅の広いQRS波)の場合とがある。
P波とQRS波との関係が1:1の規則的なQRS調律は房室ブロックの不在を示す。
QRS波に先行するP波は,洞徐脈(P波が正常の場合)または心房性補充調律を伴う洞停止(P波が異常の場合)を示す。
QRS波の後ろにくるP波は,心室補充調律および逆行性室房伝導を伴う洞停止を示す。この場合,QRS波は幅広となる。
QRS調律が不規則な場合,P波の数は通常QRS波よりも多い;
すなわち,一部のP波はQRS波を生むが,一部はこれを生まない(第2度房室ブロックを示す―不整脈および伝導障害: 第2度房室ブロックを参照 )。
P波とそれに続くQRS波との間に1:1の関係を呈する不規則なQRS調律は,通常,洞性拍動の緩徐な促進および抑制を伴う洞性不整脈を示す(P波が正常な場合)。
それ以外の点では規則的なQRS調律における休止期は,第2度房室ブロックによるものだけでなく,非伝導性P波(異常P波は通常,先行するT波の直後に認識されたり,先行するT波の形態を変形させる),洞停止,または洞進出ブロック(不整脈および伝導障害: 洞結節機能不全を参照 )によっても引き起こされうる。
●頻拍性不整脈:
拍性不整脈は4群に分類され,明らかに規則的か不規則か,QRS波の幅が狭いか広いかで定義される。
不規則で幅の狭いQRS波の頻脈性不整脈には,心房細動,心房粗動または種々の房室伝導を伴う真性心房頻拍,および多源性心房頻拍がある。
鑑別は心房の心電図信号に基づいて行われ,これはQRS波間の休止期が長くなった際に最もよくみられる。
独立したP波を伴わず,連続性で,出現時期および形態が不規則で非常に速い(300/分を超える)心房の心電図信号はAFを示す。
収縮毎に異なる少なくとも3種類の形態を伴う独立したP波は,多源性心房頻拍を示唆する。
途中に等電期が介在しない,規則的で独立した一様の心房シグナルは,心房粗動を示唆する。
不規則で幅の広いQRS波の頻拍性不整脈には,脚ブロックまたは心室早期興奮のいずれかを伴って伝導される前述の心房性頻脈性不整脈4種,および多形性の心室頻拍がある。
鑑別は,心房の心電図信号および心拍数の非常に速い(250/分を超える)多形性心室頻拍の存在に基づいて行われる。
規則的で幅の狭いQRS波の頻脈性不整脈には,洞頻脈,一定の房室伝導比を伴う心房粗動または心房頻拍,および発作性上室性頻拍症(房室結節回帰性頻拍,房室副伝導路による順行性房室回帰性頻拍,洞結節回帰性上室性頻拍)がある。
迷走神経刺激または薬理的房室結節伝導遮断は,これらの頻拍の鑑別に役立つ場合がある。
これらの手法を用いても洞頻脈は停止しないが,洞頻脈が緩徐化するかまたは房室ブロックが発現して正常P波が露呈する。
同様に,心房粗動および真性心房頻拍は通常停止しないが,房室ブロックにより粗動波または異常P波が露呈する。
最も一般的な型の発作性上室性頻拍(房室結節回帰性および順行性回帰性頻拍)は,もし房室ブロックが起こるならば,停止するはずである。
規則的で幅の広いQRS波の頻脈性不整脈には,規則的で幅の狭いQRS波の頻脈性不整脈で挙げた不整脈(それぞれが脚ブロックまたは心室早期興奮を伴う)および単形性心室頻拍がある。
迷走神経刺激はこれらの鑑別に役立てられる。
心室頻拍と心室内伝導障害を伴う上室性頻拍とを鑑別する心電図基準が提案されている。
疑わしい場合,調律が心室頻拍であれば上室性頻拍用の一部の薬物により臨床状態が悪化するため,その調律は心室頻拍であるとみなす;しかしながら,その逆は真ではない。
(明日へ続く)