2014年04月20日

不整脈について(1)

■■■ 不整脈について(1)■■■

正常な心臓は規則正しく協調的に拍動するが,これは固有の電気的特性をもつ電気パルスが筋細胞により生成されて広く伝達され,一連の組織的心筋収縮を誘発するからである。

不整脈および伝導障害は,これらの電気パルスの生成や伝導,または両方の異常に起因する。

先天的な構造異常(例,房室副伝導路)または機能異常(例,遺伝性イオンチャネル疾患)を含む心疾患はいずれも調律を障害しうる。

調律障害を引き起こす,またはその一因となる全身要因には,電解質異常(特にKまたはMgの低下),低酸素症,ホルモンの不均衡(甲状腺機能低下症,甲状腺機能亢進症),薬物および毒物(例,アルコール,カフェイン)がある。



●解剖および生理

上大静脈と高位右房外側の接合部には,各正常心拍の最初の電気パルスを生成する細胞群があり,洞房結節または洞結節と呼ばれる。

これらのペースメーカー細胞の放電は隣接細胞を刺激し,連続する心臓領域に規則正しい順序で刺激が伝わる。

パルスは,心房から結節間伝導路および機能の特化されていない通常の心房筋細胞を選択的に経由して房室結節へ伝導する。

房室結節は心房中隔の右側に位置する。房室結節の伝導速度は遅く,したがってパルス伝導が遅延する。

房室結節伝導時間は心拍依存性であり,自律神経緊張および血中カテコールアミンにより調節され,心房拍動数がいくつであっても心拍出量を最大化する。

心房は前壁中隔領域以外では線維輪により心室と電気的に絶縁されている。

前壁中隔領域では,房室結節から連続するヒス束が心室中隔の上端部に進入して左脚と右脚に分岐し,プルキンエ線維で停止する。

右脚ではパルスは右室の前壁および心尖部心内膜領域に伝導する。左脚では心室中隔の左側全体に扇形に広がる。

左脚の前部(左脚前枝)および後部(左脚後枝)は心室中隔の左側を刺激し,これは心室において電気的に興奮する最初の部分である。

したがって,心室中隔は左から右へ脱分極し,それに続いて心内膜表面から心室壁を経て心外膜表面に至る両心室の興奮がほぼ同時に起こる。





●電気生理学:

心筋細胞膜を通るイオンの通過は,心筋細胞の周期的な脱分極および再分極(活動電位と呼ばれる)を引き起こす特異的イオンチャネルを介して制御されている。

活動中の心筋細胞の活動電位は,心筋細胞が収縮期膜電位-90mVから約-50mVに脱分極するときに起こる。

この閾電位で,電位依存性の速いNaチャネルが開口し,その急激な濃度勾配に従ったNa流入が介在して急速な脱分極が生じる。

速いNaチャネルは急速に不活性化されてNa流入が停止するが,時間依存性および電位依存性の他のイオンチャネルが開口し,遅いCaチャネルからCaを流入させ(脱分極事象),KチャネルからKを流出させる(再分極事象)。

最初はこれら2つの過程が均衡を保つので膜電位が正に維持され,活動電位のプラト-相が延長する。

この相の間は,心筋細胞内に流入するCaが電気機械的結合および心筋細胞収縮に関与する。

最終的に,Ca流入は停止してK流出が増加し,心筋細胞の急速な再分極が生じて静止膜電位-90mVに戻る。



心臓組織は一般に2種類ある。

速いチャネルから成る組織(心房および心室の活動中の筋細胞,ヒス-プルキンエ系)にはNaチャネルが高密度に認められ,自発性拡張期脱分極がほとんどまたは全くないこと(したがってペースメーカー活動がきわめて遅い),早期脱分極速度が非常に速いこと(したがって伝導速度が速く),不応期の消失が再分極と同時に生じること(したがって短い不応期で高頻度に反復パルスを伝導できる)を特徴とする活動電位が生じる。

遅いチャネルから成る組織(洞房結節および房室結節)にはNaチャネルが低密度に認められ,自発性拡張期脱分極がより急速であること(したがってペースメーカー活動がより速い),早期脱分極速度が遅いこと(したがって伝導速度が遅い),不応期の消失が再分極より遅れて生じること(したがって不応期が長く,高頻度の反復パルスを伝導できない)を特徴とする活動電位が生じる。

正常では,洞房結節は最も速い自発性拡張期脱分極速度を有するので,その細胞は他の組織よりも高頻度に自発性活動電位を生成する。

したがって,正常心臓では,洞房結節が自動能を有する主要組織(ペースメーカー組織)である。もし洞房結節がパルスを生成しなければ,洞房結節に次いで自動能が高い組織がペースメーカーとして機能し,典型的にはこれは房室結節である。

交感神経刺激はペースメーカー組織の放電頻度を増加させ,副交感神経刺激はこれを減少させる。


(明日へ続く)


posted by ホーライ at 14:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 心臓と血管の病気 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック