2014年04月16日

閉経(更年期障害)の概略と診断、症状と徴候、治療方法を説明せよ

閉経は,卵巣機能の低下による生理的または医原性の月経停止(無月経)である。

発現する症状には,のぼせ,萎縮性腟炎,骨粗鬆症などがある。

診断は臨床症状:1年間の無月経により行う。

症状に対し治療する場合がある(例,ホルモン療法やSSRIにより)。



生理的閉経は,1年間無月経である場合に確定診断される。

米国では,生理的閉経の平均年齢は51歳である。

閉経期とは,最終月経前の数年間(期間は大きく異なる)と後の1年をいう。

閉経期は通常,初めのうちは月経頻度が増加しその後の減少(過少月経)するという特徴があるが,あらゆるパターンが起こりうる;閉経期でも妊娠の可能性はある。



更年期とは,女性が生殖能力を喪失していくより長期間の時期を指す;閉経期の前に始まる。

卵巣が老化するにつれ,下垂体ゴナドトロピンである卵胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)への反応が低下するが,最初に卵胞期が短くなって(周期が短く不規則になる)排卵が少なくなるため,プロゲステロン産生量が減少する(女性の生殖内分泌学: 正常な月経周期に生じる,下垂体ゴナドトロピン,エストラジオール(E2),プロゲステロン(P)および子宮内膜の理想的な周期的変化。を参照 図 5: イラスト)。

最終的には,卵胞が反応しなくなり,エストラジオールをほとんど産生しなくなる。

エストロゲン (この時点では主にエストロン)はまだ循環血中に存在する;エストロゲンは末梢組織(例,脂肪,皮膚)のアンドロゲン(例,アンドロステネジオン, テストステロン )から産生される。しかしながら,総 エストロゲン レベルは非常に低くなる。アンドロステネジオンレベルは閉経前後に半分に低下するが, テストステロン レベルの低下(青年期に徐々に始まる)は閉経期に急速に進むことはなく,それは,卵巣基質および副腎が閉経後も相当量の分泌を持続するためである。

卵巣のインヒビンおよび エストロゲン (これらは下垂体からのLHおよびFSH放出を抑制する)のレベルが低下すると,LHとFSHの血中レベルが大きく増加する。

早発閉経(早発性卵巣機能不全―月経異常: 早発性卵巣機能不全を参照 )は,非医原性の卵巣機能不全による40歳以前の月経停止である。

寄与因子には,喫煙,高地での生活,低栄養などがある。医原性(人工)閉経は,医療行為(例,卵巣摘出,化学療法,骨盤部への放射線照射,その他,卵巣への血流低下を引き起こす処置)により生じる。



●症状と徴候

通常,閉経期の月経の変化は40代で始まる。経血量と周期の長さが変化しうる。

月経は不規則になり,その後間隔があくようになる。

エストロゲン レベルの日内変動は通常閉経の1年以上前から大きくなり,これにより閉経期の症状が生じると考えられる。

症状は,6カ月〜10年余り続いたり,全くないものから重度なものまで様々である。



血管運動の不安定さから生じるのぼせ(ほてり)および発汗は,女性の75〜85%に生じ,通常は月経停止前から始まる。

のぼせは多くの女性で1年以上,50%で5年以上続く。

暖かいまたは暑いと感じ,発汗することがある(ときに大量);深部体温が上昇する。皮膚(特に頭頸部)は紅潮し,温度が上昇することがある。

一時的なのぼせが30秒〜5分ほど続き,その後悪寒の生じることがある。

のぼせは,寝汗とともに夜間に起きることもある。のぼせの機序は分かっていないが,喫煙,温かい飲料,亜硝酸塩または亜硫酸塩を含む食品,刺激のある食品,アルコール,およびおそらくカフェインが誘因となりうる。



神経精神的変化(例,集中力低下,記憶障害,抑うつ,不安)が閉経とともに生じうるが, エストロゲン の減少とは直接関係しない。

反復性の寝汗により睡眠が妨害されることがあり,これが不眠,疲労,過敏性,集中力低下の原因となりうる。


エストロゲン の減少により腟および外陰部の乾燥と菲薄化が生じ,腟粘膜の炎症(萎縮性腟炎)を起こす場合がある。

萎縮により刺激,性交痛,排尿障害が生じ,腟のpHが上昇しうる。

小陰唇,陰核,子宮,卵巣が縮小する。間欠性の浮遊感,感覚異常,動悸が起きることがある。

悪心,便秘,下痢,関節痛,筋肉痛,手足の冷えが起きる場合もある。

腹部脂肪蓄積の増加による体重増加と筋肉量の減少もよくみられるが,加齢も原因の1つであると考えられる。

閉経は正常なことであるが,健康上の問題が生じたり,ときにはQOLが低下する場合もある。

エストロゲン が減少するため,骨粗鬆症のリスクが増加し,破骨細胞による骨吸収が増加する(骨粗鬆症を参照 )。

最も急激な喪失は, エストロゲン が減少し始める最初の2年間に起きる。




●診断

診断は臨床症状により行う。

月経の回数が次第に減少し,6カ月間無月経の状態が続くようになれば,閉経の可能性が高い。

無月経の女性には検査を行い,50歳未満であれば妊娠を,さらに年齢を問わず卵巣腫瘍を除外する(無月経の評価に関しては月経異常: 診断を参照 )。

異常な骨盤内腫瘤がないか評価する(婦人科患者へのアプローチ: 評価を参照 )。

50代の女性で,不規則な月経が続いた後に月経が停止し( エストロゲン 欠乏症状の有無は問わず),他に異常所見がない場合は,診断のための検査は必要ない。

FSHレベルを測定してもよいが,必要である場合はまれである。

FSHレベルの上昇が続く場合は閉経が予測されるが,閉経は数カ月〜1年先になることもある。

骨粗鬆症の危険因子をもつ閉経後女性,および65歳以上の全女性には,骨粗鬆症のスクリーニングを行うべきである(骨粗鬆症: スクリーニングと診断を参照 )。




●治療

閉経の生理的原因,および発現しうる症状と徴候について,患者と話し合うことが重要である。治療は対症療法となる。

のぼせに関しては,誘因を避け,衣服を重ね着して必要時に脱衣できるようするとよい。

ブラックコホシュはエストロゲン様の作用をもつとされ,いくらか効果があるようであるが,長期的安全性は不明である。

大豆蛋白が用いられているが,その効果は確認されていない。

その他の医療用ハーブ,ビタミンE,鍼治療は有用ではないようである。

定期的な運動,ストレスの回避,リラクゼーション療法は睡眠を改善し,いらだちを軽減しうる;リラクゼーション療法により血管運動症状も軽減しうる。

のぼせに対する非ホルモン療法として,SSRI(例,フルオキセチン,徐放性パロキセチン,セルトラリン),セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(例,ベンラファキシン),およびクロニジン(0.1mg,経皮,1日1回)がある。

SSRIの必要用量は様々である;開始用量は抑うつ治療の場合より低用量とし,必要に応じて増量していくとよい。



OTCの腟潤滑剤および保湿剤は,腟乾燥を緩和するのに役立つ。

骨粗鬆症を予防,治療する方法を検討する(骨粗鬆症: 予防と治療を参照 )。



●ホルモン療法:

ホルモン療法を,中等度〜重度の閉経期の症状に対して行うことがある。

子宮摘出を受けた女性には, エストロゲン を単独で経口的に,または経皮パッチ,ローションやゲルとして投与すべきである。

子宮のある女性には,投与する エストロゲン の種類にかかわらずプロゲスチンを一緒に投与するが(併用療法),これは,拮抗を受けない エストロゲン が子宮内膜癌のリスクを上昇させるからである。

大部分の女性で,経口ホルモン療法のリスクは有益性を上回る。

有益性には,のぼせ,寝汗(ひいては睡眠障害),および腟乾燥の軽減がある。

併用療法により,年間疾患発生件数(治療を受けた女性10,000名当たり)が,骨粗鬆症(15件から10件へ)および直腸結腸癌(16件から10件へ)で減少する。

無症状の女性については,治療がQOLへ及ぼす総合効果はそれほど大きくない。



併用療法のリスクは,年間疾患発生件数(治療を受けた女性10,000名当たり)が乳癌(30件から38件),虚血性発作(21件から29件へ),肺塞栓(16件から34件へ),認知症(22件から45件へ),および冠動脈疾患(30件から37件へ)で増加することに反映されている。

冠動脈疾患のリスクは,治療を開始した最初の1年間にほぼ2倍になり,治療前の低比重リポ蛋白のレベルが高かった女性では特にリスクが高くなる;アスピリンおよびスタチンはこのリスクの上昇を抑制しない。

さらに,乳癌は発症すると,腫瘍の大きさはより大きく,転移する可能性も高く,マンモグラム上偽陽性となることも多くなる。



エストロゲン 単独療法は,冠動脈疾患の発生件数(治療を受けた女性10,000名当たり)には影響しないが,虚血性発作を増加させ(32件から44件へ),股関節骨折を減少させる(17件から11件へ);乳癌,認知症,大腸癌,肺塞栓への影響はよく分かっていない。

腟乾燥や萎縮に対しては,外用 エストロゲン (例,クリーム,腟錠,腟リング)が経口投与と同じように効果的である。

エストロゲン クリームを使用する場合,子宮のある女性にはプロゲスチンも投与する。

ホルモン療法が骨粗鬆症の予防と治療に推奨されないのは,他に効果的な治療法(例,ビスホスホネート系)があるためである。

プロゲスチン(例,酢酸メゲストロール10〜20mg,経口,1日1回,酢酸メドロキシプロゲステロン10mg,経口,1日1回またはそのデポ剤150mg,筋注,1カ月1回)は,のぼせを緩和しても腟乾燥には無効と思われる。

プロゲスチンには副作用(例,腹部膨満,乳房の圧痛,乳房密度の上昇,頭痛,低比重リポ蛋白の増加,高比重リポ蛋白の減少)がある;微粉化プロゲステロンの方が副作用は少ないであろう。

プロゲスチン長期投与に関する安全性データはない。


以上
posted by ホーライ at 03:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 病気の知識(婦人科) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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