臨床所見はきわめて多様である。
SLEは,熱を伴って突然発症することも,または数カ月もしくは数年の間に関節痛や倦怠感を繰り返しながら潜行的に進行することもある。
血管性頭痛,てんかん,精神病が初期の所見であることもある。
あらゆる器官系統に関係する症状が発現しうる。
周期的な病状再燃(フレア)が起こりうる。
関節症状は,間欠性関節痛から急性多発性関節炎にまで及び,患者のおよそ90%に起こり,他の症状が現れる前に数年を経ることもある。
ほとんどのループス多発関節炎は非破壊的および非変形性である。
しかしながら,長期にわたる疾患では,変形が起こりうる(例,中手指節関節および指節間関節は,尺側偏位や骨性または軟骨びらんのないスワン-ネック変形[ジャコー関節炎]を発病することがある)。
皮膚病変には,一般に鼻唇溝部を除いた頬部の蝶形紅斑(平らまたは隆起した)を含む。
丘疹と膿疱がないことは,この蝶形紅斑を酒さと区別するのに役立つ。
多様なその他の紅斑性の硬い斑丘疹状病変は,顔面,首,上胸部,肘などの露出部を含み,あらゆるところに生じうる。
皮膚の水疱形成と潰瘍化はまれであるが,粘膜の反復性潰瘍(特に,硬口蓋と軟口蓋の移行部に近い硬口蓋中央部,頬側や歯肉の粘膜,前鼻中隔)は一般的である。
広汎性または限局性の脱毛は,SLEの活動期によくみられる。
脂肪組織炎は,皮下の結節性病変を生じうる。
脈管炎による皮膚病変は,手掌および手指の斑点状紅斑,爪周囲の紅斑,爪郭梗塞,じんま疹,および明白な紫斑などがありうる。
点状出血が血小板減少に続いて起こることがある。光過敏性は患者の40%にみられる。
心肺症状には,胸膜滲出液の有無にかかわらず再発性の胸膜炎がよくみられる。
肺炎はまれであるが,肺機能の軽度の障害はよくみられる。
重度の肺出血がときに起こり,死亡率は50%である。
その他の合併症は,肺塞栓,肺高血圧症,萎縮性肺症候群などがある。
心臓合併症には,心膜炎(最も多くみられる),心膜液貯留,心筋炎がある。
まれに起こる重篤な合併症は,冠状動脈血管炎とリブマン-サックス心内膜炎である。
加速性のアテローム性動脈硬化症は,罹病率と死亡率の増加原因である。先天性心ブロックは,新生児に起こりうる。
全身性リンパ節腫脹はよくみられ,特に小児,若い成人,黒人に多い。
脾腫は患者の10%にみられる。脾臓は動脈周囲に線維化を起こす。
神経学的症状は,中枢または末梢の神経系または髄膜のあらゆる部分の障害から起こりうる。
軽度の認知障害はよくある。
さらに,頭痛,人格変化,虚血性脳卒中,クモ膜下出血,痙攣,精神病,器質性脳症候群,無菌性髄膜炎,末梢神経障害,横断性脊髄炎,小脳機能不全などがみられる。
腎臓障害はいつでも発症する可能性があり,SLEの唯一の徴候であることもある。
腎障害は,無症状で良性であることもあるが,進行性で致死的であることもある。
腎病変の重症度は,限局性の通常は良性の糸球体炎から,びまん性で致死的となりうる膜性増殖性糸球体腎炎まで多様である。
一般によくある徴候は,蛋白尿(最も多い),赤血球円柱および白血球に現れる尿沈渣の異常,高血圧,浮腫などである。
産科の徴候には,妊娠の早期および後期の胎児死亡がある。
しかしながら,妊娠は(特に寛解して6〜12カ月以降は)成功しうる。
血液学的な徴候には,貧血症(しばしば自己免疫溶血性),白血球減少症(< 1500/μLのリンパ球減少症を含む),
血小板減少症(ときに致死的な自己免疫性血小板減少症)などがある。
再発性の動脈または静脈の血栓,血小板減少症,再発性の動脈または静脈の血栓,血小板減少症,高確率で起こる産科的合併症が,抗リン脂質抗体を有する患者に起こる。
SLEの合併症の多くは(産科的合併症を含めて)血栓症により説明しうる。
胃腸症状は,腸管の脈管炎または腸蠕動の減少から起こりうる。
さらに,膵炎はSLEにより,またはコルチコステロイドもしくはアザチオプリンによる治療の結果起こりうる。
症状には,漿膜炎に起因する腹痛,悪心,嘔吐,腸穿孔症状,偽性閉塞が含まれることがある。
SLEが実質性肝疾患を引き起こすことはまれである。