2014年05月22日

パーキンソン病の治療(2)

●パーキンソン病の治療


●手術:

投薬が無効で疾患が進行した場合には,手術を検討する;視床下核の高周波電気刺激が選択治療となる。

レボドパによりジスキネジアを生じた患者の場合は,後腹側淡蒼球の定位的手術(淡蒼球破壊術)により,オフ効果による運動緩慢およびレボドパ誘発性ジスキネジアが最長4年間にわたって大幅に軽減される。

重度の振戦が認められる患者には,視床の中間腹側核の深部脳刺激が有用なことがある。

胎児ドパミンニューロンの移植は,脳内ドパミンを充実させる実験的治療法である。




●理学処置:

活動性を最大限に引き出すことが目標である。

患者は,可能な範囲でできる限り日常活動に従事すべきである。

もしそれが不可能ならば,定期的な運動プログラムまたは理学療法が,患者の体調を整え,適応方法を指導するのに役立つであろう。

疾患自体やパーキンソン病治療薬,運動不足のために便秘になることがあるので,患者は繊維の豊富な食事を摂るようにすべきである。

栄養補助食品(例,オオバコ)および刺激性緩下剤(例,ビサコジル10〜20mg,経口にて1日1回)が有用である。



以上


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2014年05月21日

パーキンソン病の治療

●パーキンソン病の診断

診断は臨床的に行う。

独特の安静時振戦,運動の減少,または固縮を示す患者の場合には,パーキンソン病が疑われる。

パーキンソン病による運動緩慢と,皮質脊髄路の病変による運動減少および痙縮との鑑別が必要である。

パーキンソン病とは異なり,皮質脊髄路の病変では,特に遠位の抗重力筋の不全麻痺(筋力低下または麻痺)が生じ,また伸展性足底反応(バビンスキー徴候)が生じる。


皮質脊髄路の病変による痙縮では,筋緊張および深部腱反射が亢進する;筋緊張は,筋に加えられる伸張の割合および程度に比例して亢進するが,突如抵抗が失われる(折り畳みナイフ現象)。



その他特徴的な徴候(例,瞬きの頻度の減少,無表情,姿勢反射障害,独特の歩行異常)の存在により,診断が確定する。

他に特徴的な徴候のない振戦は,疾患初期または別の診断を示唆している。

高齢者では,抑うつまたは認知症により自発的運動の減少や小刻みな(リウマチ様)歩行が生じることがあり,こうした症例はパーキンソン病との鑑別が難しい場合がある。

主に病歴聴取と神経画像診断検査により,原因の同定が可能である。

病歴聴取には,頭部外傷,脳卒中,水頭症,薬物および毒素への暴露,他の神経変性疾患の症状または既往に関する質問を含めるべきである。





●パーキンソン病の治療

薬物:

従来,レボドパは最初に用いられる薬物である。

しかしながら,専門家の中には,早期レボドパ治療が副作用の出現および投薬の無効を早めることになると考える人々もいる;彼らは可能な限りレボドパを控え,最初は抗コリン薬,アマンタジン,またはドパミン作動薬を用いる方を好む。

レボドパはドパミンの代謝前駆物質で,脳血流関門を通過して基底核に入り,そこで脱炭酸化されてドパミンを形成する。


末梢性脱炭酸酵素阻害薬であるカルビドパとの併用はレボドパの異化を阻止し,それによりレボドパの必要量が抑えられ,副作用も最小限に抑えられる。

レボドパは,運動緩慢および固縮の軽減に最も効果があるが,振戦もしばしば大きく軽減する。

レボドパを投与した軽症例がほぼ正常に復し,また寝たきりの患者では歩行が可能になることもある。

レボドパの中枢性副作用には,悪夢,起立性低血圧,嗜眠,ジスキネジアなどがあり,特に高齢者や認知症患者では,ときおり幻覚や中毒性せん妄がみられる。

末梢性副作用には,悪心,嘔吐,潮紅,腹部の有痛性けいれん,動悸などがある。

治療が長くなるにつれ,次第に少量でジスキネジアを生じるようになる。

一部の患者では,パーキンソン症状を低減するための最低量を投与してもジスキネジアが生じる。




カルビドパ/レボドパは,10/100,25/100,25/250mg錠,さらに放出制御製剤では50/200mg錠の固定比の錠剤がある。

治療は25/100mg錠1錠を1日3回投与することから始める。

投与量は,忍容性を見ながら最大薬効に達するまで4〜7日毎に増量する。

用量を徐々に増やし,食事とともに,または食後に服用することで,副作用は最小限に抑えられる(ただし,高蛋白食はレボドパの吸収を阻害することがある)。

末梢性の副作用が著しい場合には,カルビドパの増量が有益なことがある。

大部分のパーキンソン病患者には,レボドパ400〜1000mg/日を2〜5時間毎に分割投与することが必要である。

一部の患者では最大2000mg/日を必要とする。


ときには,レボドパによる幻覚または中毒性せん妄があっても,運動機能維持のためにレボドパを投与せざるをえないことがある。

精神病は経口クエチアピンまたはクロザピンにより治療可能な場合もある;これらの薬は他の抗精神病薬(例,リスペリドン,オランザピン)に比べ,パーキンソン症状の悪化がはるかに少なく,全く悪化しないこともある。

ハロペリドールは避けるべきである。



クエチアピンは25mg,1日1〜2回から始めて,忍容性を見ながら最大800mg/日まで,1〜3日毎に25mgずつ増量する。

クロザピンは,患者の1%に無顆粒球症が生じるため,使用が限られる。

クロザピンを使用する際の用量は,12.5〜50mg,1日1回から12.5〜25mg,1日2回までとする;最初6カ月間は週1回,その後は2週間毎にCBCを実施する。

2〜5年治療すると,大部分の患者でレボドパの効果に変動がみられるようになる(オン-オフ効果)。

ジスキネジアおよびオン-オフ効果がレボドパ療法によるものか,基礎疾患によるものかについては異論がある。

最終的には,毎回投与後の改善期間が短くなり,薬物誘発性のジスキネジアにより,強度の無動から制御不能な多動へと症状の変動が生じるようになる。

従来,こうした変動には,レボドパをできる限り低用量に抑え,投与間隔を1〜2時間毎と短くすることで対処している。

これに代わる方法として,ドパミン作動薬の補助的投与,カルビドパ/レボドパ放出制御製剤,セレギリンなどがある。



アマンタジン100mg,経口にて1日1〜3回の投与は,早期の軽度パーキンソン症候群の単剤療法として50%の患者に有用であり,その後はレボドパの効果を増強するのに用いてもよい。

アマンタジンは,ドパミン系の活動,抗コリン作用,またはその両方を増強する。

単剤療法として用いた場合,アマンタジンの有効性は数カ月で失われることがしばしばある。

アマンタジンは,抗精神病薬投与に伴うパーキンソン病を軽減することもある。

副作用として下肢の浮腫,網状皮斑,錯乱がある。




ドパミン作動薬は,基底核のドパミン受容体を直接活性化する。

薬物(いずれも経口)としては,ブロモクリプチン1.25〜50mg,1日2回,ペルゴリド0.05mg,1日1回から1.5mg,1日3回まで,ロピニロール0.25〜8mg,1日3回,プラミペキソール0.125〜1.5mg,1日3回などがある。

単剤療法も可能だが,その場合,数年以上にわたって十分な効果を上げることはまれである。

ドパミン作動薬は疾患のあらゆる段階に有用である。治療初期にこれらの薬を少量のレボドパと併用すると,ジスキネジアおよびオン-オフ効果の出現を遅らせることができるが,おそらくこれは,レボドパよりもドパミン作動薬の方が長くドパミン受容体を刺激するためであろう。

ドパミン作動薬による刺激はより生理的で,受容体をよりよく温存する。

ドパミン作動薬は,レボドパの効果が減弱し,オン-オフ効果が著明になる遠隔期に特に有用である。

ドパミン作動薬の使用は副作用(例,鎮静,悪心,起立性低血圧,錯乱,せん妄,精神病)による制約を受ける。

ドパミン作動薬の副作用はレボドパを減量することで最小限に抑えることが可能である。

まれに,ペルゴリドにより胸膜,後腹膜,または心臓弁の線維症が生じることがある。





選択的B型モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO-B)であるセレギリンは,脳内のドパミンを分解する2大酵素の1つを阻害し,それによりレボドパ1回量の作用を延長させる。

軽度のオン-オフ効果が認められる一部の患者では,セレギリンはレボドパの効果を延長するのに役立つ。

最初にセレギリンを単独で用いると,レボドパの導入を約1年遅らせることができる。

セレギリンは,疾患初期の脳内に残存するドパミンの作用を高め,あるいは脳内ドパミンの酸化代謝を抑制することで,パーキンソン病の進行を遅らせることができる。

5mgを経口にて1日2回投与しても,A型およびB型アイソザイムを遮断する非選択的MAO阻害薬に多い高血圧クリーゼ(チラミンを含有するチーズを食べると起こる)を生じることはない。

事実上,セレギリンに副作用はないが,レボドパによるジスキネジア,精神的・精神医学的副作用,悪心を悪化させる可能性があるため,レボドパの減量が必要である。




ラサジリンはアンフェタミンへ代謝されない新しいMAO-B阻害薬で,疾患初期にも遠隔期にも有効であり,忍容性も良好なようである。

ラサジリンの効果が純粋に対症的なものか,それとも神経保護効果も併せ持つのかは,今のところ不明である。



抗コリン薬は疾患初期に単剤療法として,その後はレボドパの補助薬として用いられる。

一般的に用いられる抗コリン薬として,ベンズトロピンであれば,経口にて夜0.5mg服用から2mg,1日3回までの服用,トリヘキシフェニジルであれば2〜5mg,経口にて1日3回の服用とする。

振戦の治療には,抗コリン作用を持つ抗ヒスタミン薬(例,ジフェンヒドラミン25〜50mg,経口にて1日2〜4回,オルフェナドリン50mg,経口にて1日1〜4回)が有用である。


抗コリン薬(例,ベンズトロピン)は,抗精神病薬投与に伴うパーキンソン病の症状を軽減する。

抗コリン作用を有する三環系抗うつ薬(例,アミトリプチリン10〜150mg,経口にて就寝時服用)は,レボドパの補助薬として,抑うつの治療に有用な場合がある。

抗コリン薬の増量はごく緩徐に行う。

副作用には,口渇,尿閉,便秘,眼のかすみがあり,高齢者では,錯乱,せん妄,および発汗減少による体温調節不全が特に厄介な副作用となる。



カテコールO-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害薬(例,エンタカポン,トルカポン)はドパミンの分解を阻害するため,レボドパの補助薬として有用であると思われる。

レボドパ,カルビドパ,およびエンタカポンの併用も行われる。

レボドパ1回につきエンタカポン200mgとし,1日のレボドパ投与回数分を経口にて1日1回,最大1600mg/日まで投与する(例,レボドパが1日5回であれば,エンタカポン1gを1日1回投与する)。


肝毒性があるため,トルカポンの使用はまれである。



(続く)



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2014年05月20日

パーキンソン病とは?

●パーキンソン病

パーキンソン病は,運動緩慢,寡動,筋固縮,安静時振戦,姿勢不安定を特徴とする,特発性で緩徐に進行するCNS変性疾患である。

診断は臨床的に行う。治療はレボドパとカルビドパの併用,他の薬物投与,さらに難治性の症状には手術を行う。



パーキンソン病は65歳以上の人々の約1%,40歳を超えた人々の0.4%が罹患する。

平均発症年齢は約57歳である。

まれに,小児期や青年期に発症するものもある(若年性パーキンソン症候群)。



●病因と病態生理

パーキンソン病では,黒質,青斑,および他の脳幹ドパミン作動性細胞群の色素性ニューロンが消失する。

黒質ニューロンは尾状核と被殻に放射しており,黒質ニューロンが失われると,これらの領域におけるドパミンが涸渇する。

原因は不明である。



続発性パーキンソン症候群は,他の変性疾患,薬物,または外因性毒素により大脳基底核におけるドパミン作用の消失または阻害が生じるために起こる。

最も一般的な原因は,フェノチアジン,チオキサンテン,ブチロフェノン系抗精神病薬,またはレセルピンの摂取であり,これらの薬物はドパミン受容体を遮断する。

頻度は低いが,一酸化炭素またはマンガン中毒,水頭症,脳の構造的病変(例,腫瘍,中脳または基底核の梗塞),硬膜下血腫,ウィルソン病,特発性変性疾患(例,線条体黒質変性症,多系統萎縮症)により生じることもある。

メペリジン合成の失敗によって意図せず作られ,非経口使用されている違法薬物,N-MPTP(n-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロピリジン)により,重度で不可逆性のパーキンソン症候群が突発的に生じることがある。

基底核に生じた脳炎により,パーキンソン症候群が起こることもある。




●症状と徴候

大部分の患者では,疾患は片手の安静時振戦(丸薬丸め振戦)として潜行性に発症する。

振戦は緩徐で粗大である。振戦は安静時に最大となり,運動時には減少し,睡眠時には消失する;情緒的緊張や疲労により増大する。

通常は手,腕,脚が最も侵されやすく,この順に侵される。顎,舌,額,瞼も侵されることがあるが,声には波及しない。疾患が進行するにつれ,振戦は目立たなくなることもある。



多くの患者で,振戦のない固縮が生じる。

固縮が進行するにつれて動きが鈍くなり(運動緩徐),減少し(運動減少),始動困難(無動)になる。

固縮および運動減少は筋肉痛や疲労感の一因となることがある。

口を開けたままで瞬きが減る仮面様顔貌を呈する。

顔の表情が失われ,動きが少なく緩慢になるため,最初はうつ状態にあるようにみえる。

発声不全が生じ,独特の単調で吃音調の構音障害がみられる。

運動減少と遠位筋の制御障害により小字症(非常に小さな文字を書くこと)が起こり,日常生活活動が次第に困難になる。

こわばった関節を医師が動かすと,固縮の度合いが変動して,律動的なぴくぴくした動きが突然生じ,つめ車のような効果をもたらすこともある(歯車様硬直)。

姿勢は前かがみになる。歩行を開始する・向きを変える・止まるという動作が困難になる;小刻みに足を引きずって歩くようになり,腕は腰の方へ屈曲し,歩きながら腕を振らなくなる。

足取りが不意に速くなり,倒れないようにするために急に走り出すことがある(加速歩行)。

重心を移すと前や後ろに倒れそうになる(前方突進,後方突進)が,これは姿勢反射の消失によるものである。



認知症および抑うつがよくみられる。

起立性低血圧,便秘,排尿遅延が生じることもある。

多くの患者に嚥下困難と,したがって誤嚥がみられる。



患者は複数の動作を交互に迅速に行うことができない。

通常,感覚や力は正常である。

反射は正常だが,著明な振戦または固縮のために生じにくくなることがある。

脂漏性皮膚炎がよくみられる。

脳炎後パーキンソン症候群では,頭部および眼の強制的,持続的な偏位(注視クリーゼ),その他のジストニア,自律神経不安定,人格変化が生じる。


(続く)

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2014年05月18日

「diarrhea」とは?

問題1.次の言葉の意味は?

「diarrhea」

(A)便秘   (B)下痢






」」」」」」」」」」」」
   答え
」」」」」」」」」」」」

「diarrhea」=(B)下痢

【参考】

(A)便秘  = constipation





問題2.次の言葉の英語は?

「dizziness」


(A)めまい (B)排尿困難





」」」」」」」」」」」」
   答え
」」」」」」」」」」」」

「dizziness」=(A)めまい

【参考】

(B)排尿困難 =dysuria


posted by ホーライ at 07:43| Comment(0) | TrackBack(0) | カルテ用語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

血液中に含まれる尿素窒素。腎機能の指標として広く利用される

問題1.次の説明文に該当する項目は?

血液中に含まれる尿素窒素。腎機能の指標として広く利用され、腎不全、熱傷、消化管出血や高蛋白食摂取で上昇。

(1)尿素窒素(UN)

(2)hANP




」」」」」」」」」」」」
   答え
」」」」」」」」」」」」

(1)尿素窒素(UN)


【参考】

(2)hANP = ヒト心房性Na利尿ポリペプチド





問題2.次の説明文に該当する項目は?

筋肉内でクレアチンから産生される非蛋白性の窒素化合物。

食事など外的因子の影響を受けない腎機能の優れた指標。

(1)カルシトニン

(2)クレアチニン(CRE)



」」」」」」」」」」」」
   答え
」」」」」」」」」」」」

(2)クレアチニン(CRE)

【参考】

(1)カルシトニン 

甲状腺から分泌されるペプチドで、血中カルシウム濃度を低下させる作用がある。

甲状腺髄様癌にて高値。

posted by ホーライ at 07:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 臨床検査 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

肝障害の原因としてウイルス性のほかに何があるか?

問題1.次の問いに答えよ

肝障害の原因としてウイルス性のほかに何があるか?

最低、2つ答えよ。








=================
   正解
=================

肝障害の原因

・ウイルス性

・自己免疫性

・薬剤性

・アルコール性








問題2.次の文章は正しいか?

A型急性肝炎やB型急性肝炎では安静を保ち、合併症に注意する以外に薬物療法を行うことはあまりない。

これに対してC型急性肝炎では慢性化防止のため治療する必要がある。

(A)正しい  (B)間違い







=================
   正解
=================

(A)正しい









問題3.次の文章は正しいか?

B型慢性肝炎の治療に用いられるインターフェロンα及びインターフェロンβは「抗ウイルス薬」の効果を期待されている。

(A)正しい  (B)間違い







=================
   正解
=================

(A)正しい 





問題4.次の文章は正しいか?

インターフェロンの重篤な副作用としてはうつ病、自殺企図などがある。

(A)正しい  (B)間違い









=================
   正解
=================

(A)正しい 



posted by ホーライ at 07:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 医学知識・薬学知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月16日

喘息の治療(3)

●喘息の治療(3)


患者が4時間以内に基準値まで回復しなければ,一般に入院が必要となる。

入院基準は様々であるが,明らかに入院が適応となるのは,改善しない,疲労が増強する,繰り返しβ動薬を投与した後も再発する,Pao2の有意な低下(50mmHg未満)またはPaCO2の増加(40mmHg以上),など呼吸不全への進行を示す場合である。



積極的な治療にもかかわらず悪化し続ける患者は,非侵襲的陽圧換気の候補者となるか,重度の患者および反応のない患者の場合は,気管挿管および機械的人工換気が適応となる。


挿管を必要とする患者には鎮静が有益なこともあるが,麻痺性薬物はコルチコステロイドとの相互作用の可能性があり,遷延する神経筋脱力を起こしうるため避けるべきである。




気道抵抗が高く,変化する場合には,一定の肺胞換気を得るために,通常は補助・調節モードでの容量サイクル式の換気を行う。

呼気を延長し,自己PEEP(呼気終末陽圧)を最小にするため,人工呼吸器は吸気流量を高くし(60〜80L/分以上),呼吸数を8〜14回/分に設定すべきである。



最初の1回換気量は10?12mL/kgに設定できる。

最高気道圧が高くても,それは高い気道抵抗と吸気流量の結果生じたもので,肺胞圧により生じた肺の膨張の程度を反映したものではないので,通常無視できる。

しかしながら,プラトー圧が30〜35cmH2Oを超える場合には,気胸のリスクを抑えるため1回換気量を5〜7mL/kgに減らすべきである。

例外は,胸壁(例,肥満)または腹部(例,腹水)のコンプライアンス低下が,実質的に圧上昇に寄与している場合である。



1回換気量を減らす必要がある場合,中等度の高炭酸ガス血症は容認できるが,もし動脈血pHが7.10未満まで低下した場合にはpHを7.20〜7.25に維持するために低速での炭酸水素ナトリウム注入が適応となる。

ひとたび気道閉塞が軽減され,Paco2および動脈血pHが正常化すれば,通常患者は速やかに人工呼吸器から離脱できる。




その他の治療法も喘息増悪に有効であると報告されているが,どれも徹底した研究は行われていない。

O2 より低密度のガスであるヘリウムでは乱流が減少するので,それによって呼吸仕事量を減らし,換気を改善するために,helioxが用いられる。

helioxが理論上有効であるにもかかわらず,その効能に関しては矛盾する研究結果が報告されている;すぐに利用できないこともその使用を制限している。



硫酸マグネシウムは平滑筋を弛緩させるが,救急診療部での喘息増悪の管理に有効であるかは議論の余地がある。

喘息発作重積状態の患者への全身麻酔は,機序が不明の気管支拡張を引き起こすが,おそらく気道平滑筋への直接的な弛緩作用またはコリン作動状態の減弱によるのであろう。




●慢性喘息の治療: 適切な薬の服用により,たいていの喘息患者は救急診療部や救急病院の世話にならずに生活できる。

数多くの薬物が利用できるが,薬物の選択および順序は喘息の重症度に基づく。

“ステップダウン”療法―薬物投与量を,症状のコントロールに必要な最小限の量まで減らしていく―はどの重症度の喘息にも適応となる。




軽症間欠型喘息患者には,薬物投与を毎日行う必要はない。

急性症状には短時間作用型β作動薬(例,レスキュー薬としてアルブテロールの2回吸入)で十分である;2回/週を超える使用,年2缶以上の使用,または薬剤に対する反応低下があれば,長期にわたるコントロール療法が必要となる。


喘息の重症度に関係なく,レスキュー用β作動薬が頻回に必要となれば,喘息のコントロールが不十分であることを示している。



●軽症の喘息患者(成人および小児)は抗炎症療法を受けるべきである。

低用量吸入コルチコステロイドが選択薬であるが,一部の患者は肥満細胞安定薬,ロイコトリエン修飾薬,または徐放性テオフィリンを用いてコントロールされうる。



●急激な症状に対するレスキュー療法として,レスキュー用短時間作用型β作動薬(例,アルブテロール,2〜4パフ)が適応となる。

レスキュー療法が毎日必要となる患者は,中用量の吸入コルチコステロイドまたは併用療法が必要である。




●中等症持続型喘息患者は,吸入コルチコステロイドを反応に従って調整した用量で,長時間作用型β作動薬(サルメテロール,2パフ,1日2回)と併用して治療すべきである。

長時間作用型吸入β作動薬単独では治療が不十分であるが,併用により吸入コルチコステロイドの用量を減量でき,夜間症状に効果が高まる。

この方法の代替療法としては,吸入コルチコステロイド単独の中用量の投与,もしくは長時間作用型β作動薬の代わりにロイコトリエン受容体拮抗薬または徐放性テオフィリンを,低〜中用量の吸入コルチコステロイドと併用する方法がある。



GERDを伴った中等症持続型喘息患者では,逆流防止の治療が,症状のコントロールに必要な薬物の頻度と用量を減らしうる。

アレルギー性鼻炎を伴った中等症持続型喘息の患者では,コルチコステロイド点鼻により救急診療部受診が必要となる喘息増悪の頻度を減らしうる。




●重症持続型喘息の患者は少数ではあるが,数種の薬物を高用量で用いる必要がある。

選択肢には,高用量の吸入コルチコステロイドと長時間作用型β作動薬(サルメテロール)の併用療法,または吸入コルチコステロイド,長時間作用型β作動薬,ロイコトリエン修飾薬を併用する療法がある。

短時間作用型吸入β作動薬は,いずれの併用療法においても急激な症状のレスキュー薬として適応となる。

全身投与コルチコステロイドは,これらの投与計画では十分に管理ができない患者に適応となる;隔日投与は,連日投与に伴う有害作用の軽減に役立つ。





●運動誘発性喘息: 運動誘発性喘息は,一般に運動開始前の短時間作用型β作動薬または肥満細胞安定薬の吸入により予防できる。

β作動薬の効果がない場合,または運動誘発性喘息が頻繁で重度の場合は,そのほとんどにおいて患者の喘息は認識されているよりも重症であり,コントロールを目的とした長期療法が必要である。




●アスピリン感受性喘息: アスピリン感受性喘息の治療は,第一にNSAIDの回避である。

シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害薬は誘発物質ではないようである。

ロイコトリエン修飾薬はNSAIDに対する反応を鈍化させうる。

代替療法としては,入院による脱感受性が少数の患者において成功している。




●今後の治療法: 炎症カスケードの特定の構成要素を標的とした複数の治療法が開発されつつある。

IL-4およびIL-13を標的にした治療法の研究が進行中である。




●特別な集団

乳児,小児,および青少年: 乳児では喘息を診断するのは難しい,そのため過小認識および過小治療が一般によくある。

吸入気管支拡張薬および抗炎症薬の経験的治療がその両方に有用でありうる。

薬物は,フェイスマスクの付いたまたは付いていないチャンバーを用いてネブライザーまたはMDIにより投与できる。


治療を週2回以上必要とする5歳未満の乳児や幼児には,吸入コルチコステロイド(好ましい),ロイコトリエン受容体拮抗薬,またはクロモリンを用いた毎日の抗炎症療法を行うべきである。



喘息のある5歳以上の小児や青少年は成人と同様に治療ができるが,身体活動,運動,スポーツを継続するように奨励すべきである。

青少年における肺機能検査の予測正常値は小児(成人ではなく)の基準により近い。

青少年およびしっかりした小児は,コンプライアンスを向上させるために自己の喘息管理計画の作成や自己の治療目的の設定に参加させるべきである。

レスキュー薬が信頼できる迅速な形で利用できるよう,行動計画は先生や学校の保健婦に理解してもらっておくべきである。

クロモリンおよびネドクロミルがこの集団でしばしば試みられるが,吸入コルチコステロイドほどの有効性はない;長時間作用型薬物は,学校での投薬の恥ずかしさを防げる。




●妊婦:

妊娠した女性喘息患者の約3分の1は症状の軽減に気づき;もう3分の1は悪化(ときには重症に)に気づき;残りの3分の1は変化を感じない。

GERDは妊婦に発作を起こす重要な要因となる。

母親の疾患のコントロールが悪いと,胎児死亡,早産,出産時の低体重が増加する可能性があるため,妊娠中の喘息のコントロールは不可欠である。

喘息薬が胎児に有害作用のあることは示されていないが,胎児発育に対する安全性を証明するための大規模で十分管理された研究は行われていない。


以上

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2014年05月15日

喘息の治療(2)

●喘息の治療(2)

その他の薬物 が特定の状況下でまれに使用される。

症状がアレルギーにより誘発される場合には,病歴によって示唆されてアレルギー検査で確定されれば,免疫療法が適応となりうる。

免疫療法は成人よりも小児において成功する場合が多い。

24カ月経過するまでに症状に有意の改善がみられなければ,治療を中止する。

症状が軽減すれば,少なくとも3年間は治療を継続すべきであるが,治療の最適継続期間は分かっていない。

高用量の経口コルチコステロイドへの依存を減らすために,コルチコステロイドの減量が可能な薬物がときに処方される。

それはどれも全て明らかな毒性をもっている。



低用量メトトレキサート(5〜15mg/週)はFEV1 を軽度に改善し,毎日の経口コルチコステロイドの使用量を若干減少(3.3mg/日)させうる。


金およびシクロスポリンもある程度有効であるが,毒性とモニタリングの必要性からその利用は限られている。

オマリズマブは抗IgE抗体で,IgEレベルが高い重症のアレルギー性喘息患者が使用するために開発されたものである。

これは経口コルチコステロイドの必要性を減らし,症状を緩和する。

投与量は患者の体重およびIgEレベルに基づいた用量チャートで決定される;薬剤は2週間毎に皮下注射にて投与される。


慢性喘息の管理のためのその他の治療法には,ネブライザーを用いたリドカインやヘパリン,コルヒチン,高用量の静注免疫グロブリンがある。

これらの薬物療法の有用性を裏づける証拠は限られており,その有効性も証明されていないため,いずれも臨床での使用はまだ推奨できない。




治療に対する反応のモニタリング: 最大呼気流量(PEF)検査(気流と気道閉塞の測定)は,治療に対する反応を記録すること,および患者の記録による日誌を通し,実生活の環境における疾患の重症度の変化の傾向をモニタリングすることによって,喘息増悪の重症度を確定するのに役立つ。家庭におけるPEFのモニタリングは,中等症から重症持続型喘息患者において疾患の進行および治療に対する反応を記録するのに特に有用である。

喘息の症状がないときは,朝1回のPEF測定で十分である。

PEFが患者の最良値の80%未満まで減少した場合,1日に2回測定して日内変動を評価することは有用である。

20%を超える日内変動は,気道の不安定性および治療計画を再検討する必要性を示唆する。





●患者教育: 患者教育の重要性はいかに強調してもし過ぎることはない。

患者は,何が発作を誘発するのか,どの薬をいつ使用するのか,適切な吸入器使用の技術,スペーサーはどのようにして定量噴霧吸入器(MDI)と一緒に使用するのか,増悪時のコルチコステロイドによる早期治療の重要性など,喘息についてよく知れば知るほど,よりよく対処できる。

個々の患者は,日々の管理に対する,特に急性発作時の管理に対する文書化した治療計画をもっているべきであり,その計画は予測正常値よりも患者個人の最良ピークフローに基づくものであるべきである。

そうした計画は喘息のコントロールを大いに改善するが,それは主に治療法がより忠実に守られることによる。




●急性増悪の治療: 喘息増悪の治療の目標は,症状を軽減し,患者のPEFが自己最良値に回復することである。

急性増悪に対しては,吸入アルブテロールまたは類似の短時間作用型β作動薬を自己投与し,可能ならPEFを測定するように患者に指導すべきである。

MDIによる2?4パフを最大20分の間隔で最高で3回投与すると気分がよくなる患者,およびPEFが基準の80%以上を示す患者は,在宅で急性増悪を管理できる。

反応しないか,重度の症状があるか,またはPEFが80%未満である患者は,医師の作成した治療管理プログラムに従うか,薬物による治療のため救急診療部を受診すべきである。



吸入気管支拡張薬(β作動薬および抗コリン薬)が救急診療部における喘息治療の主力である。

成人および児童において,アルブテロールのMDIとスペーサーによる投与は,ネブライザーによる投与と効果は同じである。

幼児では,MDIとスペーサーをうまく使いこなすのが難しいため,ネブライザーによる治療が優先される;ネブライザーがO2よりヘリウム-O2. (heliox)で噴射されると,気管支拡張薬に対する反応が向上することが最近の証拠から示唆される。


小児にはエピネフリン1:1000溶液またはテルブタリンの皮下注射が代替となる。

テルブタリンは,心血管作用がより少なく,作用期間がより長いため,エピネフリンより好ましいが,大量生産されなくなり,高価である。



β 作動薬の皮下投与は,心刺激性の有害作用があるため,理論上成人には問題がある。

しかしながら,臨床的に明らかな有害作用は少ないので,皮下投与は,最高用量の吸入療法にも反応しない患者,または効果的な噴霧式治療が受けられない患者(例,過度の咳が出る,低換気がある,または非協力的な患者)には有益となりうる。


アルブテロール単独では十分に反応しない患者には,噴霧イプラトロピウムと噴霧アルブテロールの同時投与が行える;第1選択の治療に高用量β作動薬とイプラトロピウムの同時投与が好ましいことを示す証拠が一部あるが,β作動薬の連続噴霧投与が間欠投与より好ましいとするデータはない。

テオフィリンは治療にはほとんど役立たない。




全身投与コルチコステロイド(プレドニゾン,プレドニゾロン,メチルプレドニゾロン)は非常に軽い急性増悪を除いて,全ての患者に投与すべきである;気管支拡張薬の1回または2回の投与でPEFが正常になる患者には必要ない。

静注および経口の投与経路は同等に効果がある。



メチルプレドニゾロンは,静脈ラインがすでに確保されている場合は静注投与できるが,経口に変更する必要があるとき,もしくはそのほうが都合のよいときはいつでも経口投与に変更できる。

通常7〜10日目以降に用量を減らしはじめ,2〜3週間かけて漸減すべきである。





抗生物質の適応は,病歴,診察,または胸部X線により細菌感染が背景にあることが示唆される場合だけである;喘息増悪の背景にある感染症のほとんどはウイルスによるが,マイコプラズマやクラミジアも最近の研究対象集団において証明されている。

O2が適応となるのは,喘息増悪の患者がパルスオキシメトリーによる測定またはABG測定でO2satが90%未満である場合である;O2は低酸素血症を是正するのに十分な流量または濃度を鼻カニューレかフェイスマスクにより投与すべきである。



不安が喘息増悪の原因である場合は,安心させることが最良の治療である。

抗不安薬およびモルヒネは,死亡率の増加や機械的人工換気の必要性と関連があるので,相対的禁忌である。


(続く)


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2014年05月14日

喘息の治療

●喘息の治療

喘息―慢性疾患および急性増悪ともに―の治療には,誘発因子のコントロール,疾患の重症度に合わせた薬物治療,治療への反応と疾患の進行のモニタリング,疾患の自己管理が最大限できるようにする患者教育などがある。

治療の目的は,増悪および夜間覚醒などの慢性症状の予防,救急診療部の受診や入院の必要性の最小化,ベースラインの(正常の)肺機能と活動レベルの維持,治療による有害作用の回避などである。



●誘発因子のコントロール: 誘発因子は,一部の患者では,合成繊維の枕および不浸透性の敷布団カバーの使用,シーツ,枕カバー,毛布を湯で頻繁に洗うことで抑制される。

布張りの家具,ぬいぐるみ,絨毯,ペットは避けるべきで(チリダニ,動物のふけ),除湿機を地下室やその他の通気が悪く湿気の多い部屋では使用すべきである(カビ)。

住宅のスチームによるケアによってチリダニアレルゲンは減少する。

誘発因子の抑制が都市環境の中では困難であるからといって,こうした措置の重要性が減るわけではない;ゴキブリへの暴露を住宅の清掃や駆除により回避することは特に重要である。

高性能微粒子(HEPA)電気掃除機やフィルターにより症状は緩和しうるが,それが肺機能および薬物投与の必要性に影響を及ぼすかは証明されていない。



亜硫酸塩に感受性のある患者は赤ワインを避けるべきである。

タバコの煙,強い香り,刺激ガス,低温,高湿度,運動などの非アレルギー性の誘因も,可能なら回避または抑制すべきである。



アスピリン誘発性喘息患者には,アセトアミノフェン,サルチル酸コリンマグネシウム,またはシクロオキシゲナーゼ(COX)-2阻害薬をNSAIDの代わりに使用できる。

喘息は,局所製剤を含む非選択的β遮断薬の使用の相対的禁忌であるが,心選択性薬(例,メトプロロール,アテノロール)では,おそらく有害作用は起こらない。

薬物療法: 慢性喘息および喘息増悪の治療に一般的に用いられる主な薬物群には,気管支拡張薬(β作動薬,抗コリン薬),コルチコステロイド,肥満細胞安定薬,ロイコトリエン修飾薬,メチルキサンチン類がある。

これら薬物群の薬物は吸入または経口で投与される;吸入薬には霧状および粉末状のものがある。

霧状の吸入薬をスペーサーまたはチャンバーを付けた吸入器で投与すると,薬剤が喉頭よりも気道に沈着しやすくなる;細菌汚染を防ぐために,スペーサーは使用するたびに洗って乾かすよう,患者に指示すべきである。

さらに,霧状の吸入薬を使用するには,吸入器の作動(薬剤の供給)と患者の吸入を一致させる必要がある;粉末状の吸入薬は,患者が吸入するときにだけ薬剤が供給されるので調整の必要性は少ない。

さらに,粉末状の吸入薬では,過フッ化炭化水素噴霧剤の環境への放出が軽減される。





β作動薬(βアドレナリン作動薬)は気管支平滑筋を弛緩させ,肥満細胞の脱顆粒およびヒスタミン放出を減らし,気道への微小血管からの漏出を抑制し,粘膜線毛クリアランスを高める。

β作動薬には短時間作用型および長時間作用型がある。



短時間作用型のβ作動薬(例,アルブテロール)は,急性の気管支収縮の緩和および運動誘発性気管支収縮の予防のための選択薬で,必要に応じて2〜8パフの吸入投与を行う。

数分以内に効果が現れ,薬によって最大6?8時間作用する。

長時間作用型の薬物(就寝時に,または1日2回吸入,最大12時間作用する)は,中等症または重症の喘息ばかりではなく,夜間の覚醒を引き起こす軽症の喘息にも用いられる。

また,長時間作用型β作動薬は,吸入コルチコステロイドと相乗的に作用するので,コルチコステロイドの用量を減量できる。



経口β作動薬は全身作用がより強いので,一般には避けるべきである。

頻脈および振戦が,吸入β作動薬の最も一般的な急性の有害作用で,用量に依存する。低カリウム血症がまれに起こるが,その程度は軽い。



β作動薬の長期常用の安全性には議論がある;常用は,おそらく過剰使用の可能性もあり,死亡率の上昇に関連するが,それが有害作用なのか,あるいは他の薬物では治療が十分ではないため常用しているのかは不明である。

β作動薬の毎日の使用,用量の増加または効果の減弱,もしくは1カ月月に1缶またはそれ以上の使用は,喘息のコントロールが不十分であり,他の治療法を開始または強化する必要があることを示唆する。

レバルブテロール(アルブテロールのR-異性体を含む溶液)の使用は,理論的には有害作用を最小化するが,その長期的効果と安全性は証明されていない。




抗コリン薬は,ムスカリン性(M3)コリン受容体の競合的阻害により気管支平滑筋を弛緩させる。

イプラトロピウムは,喘息に単独で使用すると効果は小さいが,短時間作用型β作動薬と併用すると相加効果がありうる。

有害作用には,散瞳,眼のかすみ,口渇がある。チオトロピウムは24時間作用型の吸入抗コリン薬であるが,喘息への使用は評価が十分に行われていない。



コルチコステロイドは,気道の炎症を阻害し,β受容体のダウンレギュレーションを回復させ,ロイコトリエン合成を遮断し,サイトカインの産生および接着蛋白の活性化を阻害する。

コルチコステロイドは,吸入アレルゲンに対する遅延反応を遮断する(しかし早期反応は遮断しない)。

投与経路には経口,静注,吸入がある。

急性喘息増悪では,初期における全身投与コルチコステロイドの使用がしばしば増悪を回避させ,入院の必要性を減らし,再発を防止し,回復を早める。

経口投与と静注投与は,同等の効果がある。



吸入コルチコステロイドは,急性増悪では有用ではないが,長期の抑制,コントロール,炎症や症状の回復には適応となる。

吸入コルチコステロイドは,経口コルチコステロイドによる維持療法の必要性をかなり減らし,未治療の喘息に特徴的な肺機能の悪化を遅らせたり止めたりすることから,疾患修飾薬と考えられている。

吸入コルチコステロイドの局所の有害作用には,発声障害および口腔カンジダ症があるが,スペーサーの使用および/またはコルチコステロイド吸入後のうがいによって,防止または最小限にできる。

全身性の有害作用は全て用量依存性で,経口でも吸入でも起こりうるし,主に吸入量が800μg/日を超えると起こる。

それらには,副腎-下垂体軸の抑制,骨粗鬆症,白内障,皮膚萎縮,過食症,易傷性などがある。吸入コルチコステロイドが小児の成長を抑制するかは議論がある:ほとんどの子供は予測された成人身長に達する。

非活動性結核がコルチコステロイドの全身投与によって再活性化しうる。





肥満細胞安定薬は肥満細胞からのヒスタミン放出を阻害し,気道反応性亢進を軽減し,アレルゲンに対する早期反応や遅延反応を遮断する。

この薬は運動誘発性およびアレルゲン誘発性の喘息患者に予防的に吸入される;しかし,一度症状が出現してしまうと効果はない。

全ての抗喘息薬の中で最も安全であるが,最も効果が少ない。



ロイコトリエン修飾物質は経口で投与され,軽症持続型から重症持続型までの喘息患者において,長期管理および症状の予防に用いることができる。

主な有害作用は肝酵素の上昇である;極めてまれにチャーグ-ストラウス症候群に似た症候群を発症させる。



メチルキサンチン類は(おそらく非選択的にホスホジエステラーゼを阻害することによって)気管支平滑筋を弛緩させ,また,機序は不明であるが,心筋および横隔膜の収縮能を改善させうる。

メチルキサンチン類はカルシウムの細胞内放出を阻害し,微小血管からの気道粘膜への漏出を減少させ,アレルゲンに対する遅延反応を阻止するようである。

また,気管支粘膜への好酸球の浸潤や上皮へのTリンパ球の浸潤を減少させる。


メチルキサンチン類はβ作動薬の補助薬として長期のコントロールに使用される;徐放性テオフィリンは夜間覚醒の管理に有用である。

この薬は他の薬に比べて有害作用および相互作用が多いため,使用されなくなってきている。有害作用には,頭痛,嘔吐,不整脈,痙攣などがある。


メチルキサンチン類の治療域は狭い;また,複数の薬物(チトクロムP450経路により代謝されるものはどれでも,例,マクロライド系抗生物質)および病態(例,発熱,肝疾患,心不全)がメチルキサンチンの代謝と排泄を変化させる。

血清テオフィリン濃度は定期的にモニターし,濃度は5?15 μg/mL(28〜83 μmol/L)に維持すべきである。


(続く)


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2014年05月13日

喘息の診断

●喘息の診断

診断は病歴と身体診察に基づき,肺機能検査を用いて確認する。基礎疾患の診断,および喘鳴の原因となる疾患の除外も,重要である。

肺機能検査: 喘息が疑われる患者には,気道閉塞の重症度,および可逆性の判定ならびに定量化のため,肺機能検査を行うべきである。

肺機能検査のデータの質は,患者の努力に左右されるため,検査前には患者の教育が必要である。


気管支拡張薬は,中止しても問題がないのであれば,検査前に中止すべきである:アルブテロールなどの短時間作用型β作動薬では6時間前;イプラトロピウムでは8時間前;テオフィリンでは12?36時間前;サルメテロールおよびフォルモテロールなどの長時間作用型β作動薬では24時間前;チオトロピウムでは48時間前に中止する。


肺活量測定(肺機能検査を参照 )は,短時間作用型気管支拡張薬の吸入の前後に行うべきである。

気管支拡張薬吸入前の気道閉塞の徴候には,最初の1秒間の努力呼気量(FEV1)の減少およびFEV1の努力肺活量に対する比(FEV1/FVC)の低下などがある。

FVCも減少しうる。肺気量測定では,エアトラッピングによる残気量および/または機能残気量の上昇が示されうる。



気管支拡張薬による治療に反応してFEV1が12%以上または0.2L以上改善すれば,可逆性の気道閉塞が確定されるが,この所見がなくても気管支拡張薬による治療の試みを除外すべきではない。

肺活量測定は,喘息と診断されている患者では少なくとも年1回,疾患の進行を監視するために,行うべきである。



フローボリューム曲線も,上気道閉塞(喘息に似ている)の一般的な原因である声帯機能障害の診断または除外のために調べるべきである。

誘発検査では,吸入メタコリン(または代わりに吸入ヒスタミン,アデノシン,ブラジキニン,または運動負荷検査など)を使用して気管支収縮を誘発するが,検査が適応となるのは,喘息が疑われる患者で肺活量測定およびフローボリューム検査が正常である場合,咳喘息である場合,禁忌がない場合である。

禁忌には,FEV1が1L未満または50%未満,最近発症の心筋梗塞または脳卒中,重度の高血圧(収縮期血圧200mmHg以上,拡張期血圧100mmHg以上)が含まれる。

FEV1が20%以上低下していれば,喘息の診断が裏づけられる。

しかしながら,FEV1はCOPDなど他の疾患でも,これらの薬物に反応して減少しうる。





●その他の検査: その他の検査は状況によっては有用である。

一酸化炭素拡散能(DLco)検査はCOPDと喘息との鑑別に有用である。

数値は,喘息では正常か上昇しており,COPDでは,通常低下しており,特に肺気腫があれば低下している。



胸部X線は,喘息の背景にある原因,またはその他の診断,例えば心不全もしくは肺炎などを除外するのに有用である。

喘息の胸部X線は通常正常であるが,粘液栓の徴候である過膨張または区域性無気肺を示すこともある。

浸潤影は,特に出没し,中枢気管支拡張の所見と関連する場合,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症を示唆する。



病歴からアレルギー性誘因が示唆される小児は全て,(免疫療法の対象となる可能性があるため)アレルギー検査が適応される。

病歴がアレルゲン回避により症状が緩和されたことを示唆する成人,および治療的抗IgE抗体療法(喘息: 薬物療法を参照 )の試用が検討されている人には,アレルギー検査を考慮すべきである。

皮膚検査および放射性アレルゲン吸着試験(RAST)によるアレルゲン特異的IgEの測定によって,アレルギーの特異的誘因を同定できる(アレルギー性およびその他の過敏性疾患: 特異的検査を参照 )。


血中好酸球数の上昇(400/μL以上)および非特異的IgEの上昇(150IU以上)は,アレルギー性喘息を示唆するが診断を確定しない,なぜなら他の種々の病態でも上昇しうるからである。


喀痰の好酸球検査は一般的には行われていない;好酸球が多数見つかれば喘息を示唆するが,感度がよいわけでも特異的でもない。

安価な携帯型の流量計を用いたピークフロー(PEF)測定は,疾患の重症度の在宅モニタリングや治療の参考にするために推奨される。




●増悪の評価: 喘息と分かっている患者が急性増悪を起こした場合は,パルスオキシメトリー,およびPEFまたはFEV1のいずれかを測定すべきである。

これらの測定は3つとも,増悪の重症度の判定,および治療に対する反応の記録に有用である。

PEF値は患者の自己最良値を対象に評価するが,これは同じくらい十分にコントロールされている患者の間でも大きく異なる。

ベースラインからの15?20%の低下は,有意な増悪を表す。

基準値が分からないときは,%予測値によって,気流量制限のおおよその見当はつくが,個々の患者の悪化度は不明である。

ほとんどの増悪では胸部X線検査を行う必要はないが,肺炎または気胸を示唆する症状のある患者には行うべきである。

ABG測定は,著しい呼吸促迫,または切迫した呼吸不全の徴候や症状のある患者には行うべきである。





●予後

喘息のある小児のほとんどで喘息は治るが,4人に1人は喘鳴が成人まで持続するか,数年後に再発する。

女性であること,喫煙,若年での発症,住宅のチリダニへの感作,気道過敏性は,持続および再発の危険因子である。



米国では,喘息が原因となる死亡者数は年間に約5000人で,その大半は治療すれば回避できる。

したがって,適切な治療を受け,医師の指示を守ると,予後は良好である。

死亡の危険因子には,入院前に経口コルチコステロイドの必要量が増えること,急性増悪による入院歴,診察時のピークフロー低下がある。

いくつかの研究は,吸入コルチコステロイドの使用が入院および死亡率を減少させることを示している。



一部の喘息患者では,時間の経過とともに気道が永久的な構造的変化(リモデリング)を起こし,正常な肺機能に戻るのを妨げる。

抗炎症薬の早期の積極的使用が,このリモデリングを防ぐのに有用な可能性がある。


(続く)

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2014年05月11日

喘息とは?

●喘息とは?

喘息は,気道のびまん性炎症による疾患で,部分的または完全に可逆的な気管支収縮を生じさせる様々な誘発的刺激により引き起こされる。

症状と徴候には,呼吸困難,胸部圧迫感,喘鳴などがある。診断は病歴,身体診察,肺機能検査に基づく。

治療には誘発因子の制御および薬物療法が必要で,吸入β作動薬および吸入コルチコステロイドを用いるのが最も一般的である。

治療を行えば予後は良好である。



●疫学

喘息の有病率は1970年代以来増加し続けており,現在,世界人口の推定4?7%が喘息にかかっている。

米国では約1200万?1700万人が喘息にかかっている;1982年から1992年の間に有病者数は1000人当たり34.7人から49.4人に増加した。

有病率は,18歳未満(6.1%)が18?64歳(4.1%)より高く,思春期前では男性が,思春期後では女性が高い。

都市部の住民,黒人,および一部のヒスパニック系集団で高い。

喘息による死亡率も上昇しており,米国では喘息による死亡者は年間に約5000人である。

死亡率は黒人が白人よりも5倍高い。喘息は,小児の入院の主たる原因であり,小学校の不登校の原因となっている第1の慢性疾患である。

2002年の喘息の医療費は,総額140億ドル(約1兆5000億円)であった。




●病因

喘息の発症は多因子によるもので,複数の感受性遺伝子と環境因子の相互作用による。

感受性遺伝子には,ヘルパーT2(TH2)細胞とそのサイトカイン(IL-4,IL-5,IL-9,IL-13)の遺伝子,および最近同定されたADAM33遺伝子(気道の平滑筋および線維芽細胞の増殖を刺激したり,サイトカインの産生を調節している可能性がある)が含まれていると考えられている。



住宅(チリダニ,ゴキブリ,ペット)およびその他の環境(花粉)アレルゲンが,児童や成人の喘息発症に関連していることを示すはっきりした証拠がある。

生涯の早い時期の内毒素感染または暴露は,耐性を引き起こすこともあり,防御ともなりうる。大気汚染と喘息発症との関連は決定的ではないが,大気汚染は増悪を誘発しうる。


ビタミンCとE,およびω-3脂肪酸が少ない食事は,肥満と同様に,喘息と関連があるとされている。

喘息は周産期の要因,例えば若年の母親,母親の栄養不良,早産,出産時低体重,母乳不足などとも関連があるとされている。

小児期のタバコの煙への暴露については,寄与効果があるとする研究と防御効果があるとするものと両論ある。

窒素酸化物および揮発性有機化合物の室内暴露は,喘息の既往歴のない人における持続性の可逆性気道閉塞症候群である反応性気道機能不全症候群(RADS)の発症と関連がある。

RADSが喘息とは別のものなのか,職業性喘息の一形態なのかには議論の余地があるが,2つの病態には類似点(例,喘鳴,呼吸困難,咳)が多く,コルチコステロイドに反応する。




●病態生理と分類

遺伝的要素および環境的要素は,ヘルパーT1(TH1)細胞系とTH2細胞系のバランスを決定するという機序で,相互に作用する可能性がある。

専門家の考えによれば,乳児は,好酸球の発育と活性化およびIgE産生に特徴づけられる,アレルギー誘発性および炎症誘発性TH2免疫応答の素因をもって生まれるが,幼児期早期の細菌感染,ウイルス感染,および内毒素への暴露で,体はTH1応答へと移行し,それによってTH2細胞が抑制され,免疫寛容が起きる。先進国における小家族化と少子化,清潔な室内環境,ワクチンや抗生物質の早期使用の傾向は,これらTH2抑制性の,寛容誘発の暴露の機会を小児から奪うことにもなっており,先進国において喘息の有病率が上昇し続けている理由の一部を説明する(衛生仮説)。



喘息患者では,これらTH2細胞およびその他の細胞系―とりわけ好酸球および肥満細胞,そして他のCD4+亜型および好中球も―が,広範な炎症性浸潤を気道上皮および平滑筋に形成し,落屑,上皮下の線維化,平滑筋肥厚を引き起こす。

平滑筋の肥厚は気道を狭窄し,アレルゲン,感染,刺激物,副交感神経系刺激(サブスタンスP,ニューロキニンA,カルシトニン遺伝子関連ペプチドなどの炎症誘発性神経ペプチドの放出を引き起こす),および,その他の気管支収縮の誘因への反応性を増大させる。



気道の反応性亢進の他の要因には,気管支収縮抑制因子(上皮由来弛緩因子,プロスタグランジンE2)の欠損,および上皮や粘膜浮腫が剥離した結果生じた内因性気管支収縮物質(エンドペプチダーゼ)を代謝するその他の物質の欠損なども含まれる。

粘液塞栓および末梢血好酸球増加もまた喘息における古典的所見であり,気道炎症の随伴徴候でありうる。



喘息発作の一般的な誘因には,環境性および職業性アレルゲン;感染(幼児におけるRSウイルスおよびパラインフルエンザ感染,児童および成人における上気道感染および肺炎);運動,特に寒冷または乾燥した環境において;刺激物の吸入(大気汚染);不安,怒り,興奮などがある。

アスピリンは,より年齢の高い喘息患者の最大30%において,またはより重症の喘息患者において誘因となり,典型的に鼻および副鼻腔のうっ血を伴う鼻ポリープとつながりがある。



胃食道逆流症(GERD)は,最近,喘息の一般的な誘因として認識されている(おそらく食道の酸による反射性気管支収縮を経て,または酸の微小吸引によって喘息を引き起こす)。

アレルギー性鼻炎はしばしば喘息と共存する;しかし,両者が同じアレルギー反応の過程で生じる異なった症状なのか,または鼻炎が1つの個別的な喘息誘因なのかは不明である。


誘因が存在すると,喘息に特徴的な病態生理学的変化により,可逆性の気道閉塞や不均等な肺換気が起こる。

閉塞した領域では相対的な血流量が相対的な換気量を上回り,その結果として肺胞O2分圧が低下し,肺胞CO2分圧が上昇する。ほとんどの患者は過換気により代償することができ,それによってPaco2を正常値の範囲内に維持する。

しかし重度の増悪では,びまん性の気管支収縮が重度のエアトラッピングを引き起こし,呼吸筋は力学的に著しく障害され,吸気力を発生させられず,呼吸仕事量が増加する。

これらの状態の下では,低酸素血症および過度の労作がさらに悪化し,Paco2が上昇する。



呼吸性および代謝性アシドーシスが生じることもあり,治療しないまま放置すると,呼吸停止および心停止に至る。

喘息は症状により4つに分類される―軽症間欠型,軽症持続型,中等症持続型,重症持続型である。

喘息は様々な経過を辿るので,1人の患者の間でも分類が変わることもある。

分類に関係なく,患者には軽症,中等症,重症の増悪が起こりうる。

例えば,軽症間欠型の喘息患者の一部では,肺機能が正常で,症状がないときと軽症のときがある期間が長く続いた後に,生命を脅かす重症の増悪が起こる。

喘息発作重積状態という用語は,治療抵抗性の,重篤で激しい持続性の気管支痙攣を意味している。

喘息とCOPDはときに混同されやすい;両者は類似した症状を引き起こし,肺機能検査も類似した結果を示すが,必ずしも臨床的には明白ではない重要な生物学的機序が異なっていると考えられる。




●症状と徴候

軽症間欠型または軽症持続型の喘息患者では,通常,症状のあるときの合間に無症状のときがある。

さらに重症の患者または増悪患者では,呼吸困難,胸部圧迫感,喘鳴の聴取,咳の症状がある;しかし,一部の患者では,咳が唯一の症状となりうる(咳喘息)。

症状は日周期リズムで変化し,睡眠中(しばしば午前4時頃)に悪化する。

さらに重症の患者の多くは,夜間覚醒を伴う(夜間喘息)。



徴候には喘鳴,奇脈(吸気中に収縮期血圧が10mmHg以上低下―心疾患患者へのアプローチ: 奇脈を参照 ),頻呼吸,頻脈,目に見える努力呼吸(首や胸骨の筋肉[補助筋]の使用,直立姿勢,すぼめた唇,会話不能)がある。

呼吸の呼気相が長くなり,吸気:呼気の比は少なくとも1:3となる。


喘鳴は両相で,または呼気相だけで存在することもある。

重症の気管支収縮患者では,著しく気流が制限されているため,喘鳴が聞こえないこともある。


重症の増悪および切迫呼吸不全患者は,典型的に,意識変化;チアノーゼ;15mmHg以上の奇脈;O2飽和度(O2sat)が90%未満;Paco2が45mmHg以上(海面レベル);過膨張のうち,いくつかを有する。

まれに,気胸または気縦隔が胸部X線上でみられる。



症状および徴候は,急性喘息の発作と発作の間では消失するが,一部の無症状患者では軽微な喘鳴が,強制呼気時,運動後,および安静時に聞こえうる。

長期間コントロールされていない喘息患者では,肺の過膨張が胸壁を変化させ,樽状胸郭を来す。

全ての症状や徴候は非特異的であり,時宜を得た治療を行えば可逆的であり,典型的には1つまたはそれ以上の誘因への暴露により引き起こされる。


(続く)


posted by ホーライ at 09:30| Comment(0) | TrackBack(0) | アレルギー性疾患 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

次の説明文に該当する項目は?「筋肉内でクレアチンから産生される非蛋白性の窒素化合物。」

問題1.次の説明文に該当する項目は?

血液中に含まれる尿素窒素。腎機能の指標として広く利用され、腎不全、熱傷、消化管出血や高蛋白食摂取で上昇。

(1)尿素窒素(UN)

(2)hANP













」」」」」」」」」」」」
   答え
」」」」」」」」」」」」

(1)尿素窒素(UN)


【参考】

(2)hANP = ヒト心房性Na利尿ポリペプチド












問題2.次の説明文に該当する項目は?

筋肉内でクレアチンから産生される非蛋白性の窒素化合物。

食事など外的因子の影響を受けない腎機能の優れた指標。


(1)カルシトニン

(2)クレアチニン(CRE)












」」」」」」」」」」」」
   答え
」」」」」」」」」」」」

(2)クレアチニン(CRE)

【参考】

(1)カルシトニン 

甲状腺から分泌されるペプチドで、血中カルシウム濃度を低下させる作用がある。

甲状腺髄様癌にて高値。


posted by ホーライ at 03:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 臨床検査 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月09日

『アレルギー性鼻炎』について、ちょっと調べてみる?

アレルギー性鼻炎は,季節性または通年性のかゆみ,くしゃみ,鼻漏,鼻うっ血,ときに結膜炎をさし,花粉または他のアレルゲンへの暴露によって引き起こされる。

診断は病歴と皮膚試験による。

治療は,抗ヒスタミン薬,うっ血除去薬,鼻用コルチコステロイド,および重度で難治性の症例には脱感作の併用により行う。

アレルギー性鼻炎は,季節的に(花粉症)または1年を通じて(通年性鼻炎)起こる。

通年性鼻炎の少なくとも25%は非アレルギー性である。

季節性鼻炎は,春は樹木の花粉(例,カシ,ニレ,カエデ,ハンノキ,カバ,ネズ,オリーブ),夏はイネ科の草の花粉(例,ギョウギシバ,オオアワガエリ,ハルガヤ,カモガヤ,セイバンモロコシ)および雑草の花粉(例,オカヒジキ,オオバコ),秋は雑草の花粉(例,ブタクサ)によって引き起こされる。



原因は地域によって異なり,季節性鼻炎はときに空気中の真菌胞子によって引き起こされる。

通年性鼻炎は,室内の吸入アレルゲン(例,チリダニ,ゴキブリ,動物のふけ,かび)への1年を通じた暴露,または一連の季節の植物の花粉に対する強い反応性によって引き起こされる。


アレルギー性鼻炎および喘息はしばしば共存するが,鼻炎および喘息が同じアレルギーの過程に起因する(one airway,one diseaseの概念)のか,鼻炎は別個の喘息の誘因であるのかは,不明である。

非アレルギー性の通年性鼻炎は,感染性,血管運動性,萎縮性,ホルモン性,薬物性,および味覚性鼻炎を含む。



●症状と徴候

患者には,鼻,眼または口のかゆみ,くしゃみ,鼻漏,ならびに鼻および副鼻腔の閉塞がみられる。

副鼻腔の閉塞は前頭部痛を引き起こすことがあり,副鼻腔炎はよくみられる合併症である。

特に喘息を伴う場合は,咳および喘鳴も起こりうる。

通年性鼻炎の最も顕著な特徴は慢性的な鼻閉塞であり,小児では慢性中耳炎につながることがあるが,1年を通じて症状の重症度は変化する。

かゆみはあまり顕著でない。

徴候は,浮腫状で青みがかった赤色の鼻甲介,および,一部の季節性鼻炎症例においては,結膜充血および眼瞼浮腫を含む。



●診断

アレルギー性鼻炎はほとんど常に病歴のみで診断される。

経験的治療で患者が改善するのであれば診断検査をルーチンに行う必要はないが,皮膚試験で花粉に対する反応(季節性),または,チリダニ,ゴキブリ,動物のふけ,かび,もしくは他の抗原に対する反応(通年性)を示す場合は,追加的治療の指針となりうる。

鼻汁塗抹で好酸球増加が認められ皮膚試験陰性の場合は,アスピリン過敏症または好酸球増多性鼻炎(NARES)が示唆される。

感染性,血管運動性,萎縮性,ホルモン性,薬物性,または味覚性鼻炎の診断は通常,病歴または治療を試みることによって下す。



●治療

季節性および通年性のアレルギー性鼻炎に対する治療は概して同じであるが,通年性鼻炎には環境管理(例,チリダニおよびゴキブリの駆除)を試みることが推奨される。

最も効果的で第一選択となる薬物治療は,経口抗ヒスタミン薬と経口うっ血除去薬の併用,または鼻用コルチコステロイド(アレルギー性およびその他の過敏性疾患: 鼻用吸入コルチコステロイドおよび肥満細胞安定薬表 3: 表参照)の単独投与もしくは経口抗ヒスタミン薬との併用である。


それほど効果的ではないが,代替薬には鼻用肥満細胞安定薬(クロモリンおよびネドクロミル)の1日2回〜1日4回投与,鼻用H1ブロッカーであるアゼラスチンの2噴霧,1日1回投与,および鼻用イプラトロピウム0.03%の2噴霧,4時間〜6時間毎投与があり,鼻漏症状を軽減する。

生理食塩水の鼻吸入は,しばしば忘れられているが,粘度の高い鼻汁の流動化および鼻粘膜の水分補給に有用である。



免疫療法は,通年性よりも季節性のアレルギー性鼻炎に対して効果的であり,症状が重度で,アレルゲンを回避することができず,薬物治療の効果が不十分な場合に適応される。

脱感作の初回投与は,花粉の季節が終了したらすぐに次の季節に備えるために始めるべきである;脱感作を花粉の季節中に開始すると,アレルギー性の免疫応答がすでに最大限に刺激されているため,有害反応が強まる。



モンテルカストはアレルギー性鼻炎の症状を軽減するが,他の治療法に比べるとその役割は不正確である。

アレルギー性鼻炎治療用の抗IgE抗体が研究中であるが,より安価で効果的な代替薬が利用可能であるため,その役割はおそらく限られるだろう。

NARESの治療は鼻用コルチコステロイドである。アスピリン過敏症の治療法はアスピリンを回避することであり,必要に応じて脱感作およびロイコトリエンブロッカーを併用する;鼻ポリープは鼻用コルチコステロイドに反応することがある。


以上


ラベル:鼻炎
posted by ホーライ at 20:58| Comment(0) | TrackBack(0) | アレルギー性疾患 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月08日

アレルギー性結膜炎について

(アトピー性結膜炎;アトピー性角結膜炎;花粉症結膜炎;通年性アレルギー性結膜炎;季節性アレルギー性結膜炎;春季カタル)

アレルギー性結膜炎は,急性,間欠性,慢性の結膜の炎症であり,通常空中アレルゲンにより起こる。

症状には,そう痒感,流涙,眼脂,結膜充血がある。

診断は臨床的に行う。

治療は抗ヒスタミン薬および肥満細胞安定薬の局所投与である。



●病因

アレルギー性結膜炎は,特異抗原に対するT型過敏反応による。

季節性アレルギー性結膜炎(花粉症結膜炎)は樹木,イネ科の草,または雑草の風で運ばれる花粉による。

原因となる植物のライフサイクルに一致して,春,晩夏,または初秋にピークを迎え,冬に消失する傾向がある。

通年性アレルギー性結膜炎(アトピー性結膜炎,アトピー性角結膜炎)は,ダニ,動物の鱗屑,およびその他の非季節性の抗原による。

これらの抗原,特に室内の抗原は,通年の症状を引き起こす傾向がある。

春季カタルは,アレルギーが原因である可能性が最も高い,より重症な結膜炎である。

湿疹,喘息,または季節性アレルギーも有する5〜20歳の男性に最も多い。

春季カタルは,典型的には春になるたびに再発し,秋および冬に沈静化する。多くの小児は,成長とともに成人早期までに治まる。




●症状と徴候

患者は,両眼の強いそう痒感,結膜充血,羞明,眼瞼浮腫,水様または糸を引く眼脂を訴える。

一般的に鼻炎を併発する。

多くの患者は湿疹,アレルギー性鼻炎,喘息など,他のアトピー性疾患を有する。

特徴的所見には,結膜の浮腫と充血,しばしば多くの好酸球を含む粘稠な粘液性眼脂がある。

眼球結膜は半透明で青みがかり,肥厚したように見えることがある。

結膜浮腫および下眼瞼の特徴的なブヨブヨした眼瞼浮腫が一般的である。

季節性および通年性アレルギー性結膜炎では,上眼瞼結膜上の微細な乳頭がビロード様の外観を呈する。

慢性的なかゆみにより,慢性的に眼瞼をこすり,眼周囲の色素沈着過剰,皮膚炎を生じる。

さらに重症の通年性アレルギー性結膜炎では,より大きい眼瞼結膜の乳頭,結膜瘢痕化,角膜新生血管,変動する視力障害を伴う角膜瘢痕化を生じることがある。

春季カタルでは通常,上眼瞼の眼瞼結膜が侵されるが,ときに眼球結膜が侵される。

眼瞼型では,四角の硬く扁平で密に詰まった薄桃色から灰色の“石垣状”乳頭を,主に上眼瞼結膜に認める。

侵されていない眼瞼結膜は,乳白色である。眼球(“輪部”)型では,角膜周囲の結膜が肥厚し,灰白色を帯びる。ときに小さい限局性の角膜上皮欠損が起こり,疼痛を生じ,羞明が悪化する。

症状は通常,寒い季節は消失し,年月とともに軽くなる。




●診断と治療

診断は臨床的に行う。下または上眼瞼結膜から採取した結膜擦過標本中に好酸球を認めるが,このような検査はまれにしか適応がない。

既知の抗原の回避および涙液補充薬の使用により,症状を軽減できるが,抗原脱感作がときに有用である。

軽症例では,一般用医薬品の抗ヒスタミン薬/血管収縮薬(例,ナファゾリン/フェニラミン)の局所投与が有用である。

もし,これらの薬物で十分でなければ,局所処方薬の抗ヒスタミン薬(例,オロパタジン,ケトチフェン),非ステロイド性抗炎症薬(例,ケトロラク),または肥満細胞安定薬(例,ペミロラスト,ネドクロミル)を単独または併用して使用できる。

治療抵抗性の症例では,コルチコステロイド(例,ロテプレドノル,0.1%フルオロメトロン,0.12〜1%酢酸プレドニゾロン点眼1日3回)の局所投与が有用なことがある。

コルチコステロイドの局所投与は,眼の単純ヘルペスウイルス感染を悪化させ,場合により角膜潰瘍および角膜穿孔を引き起こし,長期使用により緑内障,場合により白内障を引き起こすため,コルチコステロイドの使用開始と管理は眼科医が行うべきである。

コルチコステロイドが必要であるが使用不可能な場合は,シクロスポリンの局所投与が適応となりうる。

季節性アレルギー性結膜炎では,多剤併用または断続的なコルチコステロイドの局所投与を必要とする可能性は低い。


ラベル:アレルギー
posted by ホーライ at 06:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 眼科疾患 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月05日

閉塞性動脈硬化症について

閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう、ASO: arteriosclerosis obliterans)は、主に下肢の、主に大血管が慢性に閉塞することによって、軽い場合には冷感、重症の場合には下肢の壊死にまで至ることがある病気である。


【疫学】

中年以降、特に50歳以降の男性に多い。


【症状】

病気の進行に従って、様々な症状を呈する。

Fontaine分類(フォンテイン分類)は、病期と症状を結びつけたものとして広く用いられている。


●Fontaine 1度(もっとも軽症) 下肢の冷感や色調の変化

●Fontaine 2度 間歇性跛行(かんけつせいはこう) - 数十から数百m歩くと痛みのため歩行継続不可能になる症状。

なお、腰部脊柱管狭窄症でもみられるため鑑別が必要。

●Fontaine 3度 安静時疼痛

●Fontaine 4度(もっとも重症) 下肢の壊死、皮膚潰瘍。糖尿病などによる末梢神経障害がない限り、患者は激痛を訴える。

その他の症状として、陰萎がある




【診断】

特徴的な病歴や、下肢の色調・冷感などから、診断は比較的容易である。

ankle brachial index (ABI) の低下。

ABIとは下肢と上肢の血圧の比であり、正常では下肢が下にあるぶんやや下肢の方が血圧が高い(ABI > 1)。

ASO患者では、しばしばこの比が1未満、場合によっては0.5未満にまで低下する。

動脈造影では動脈の狭窄像や側副血行路の発達がみられる。




【危険因子と予防】

●喫煙

●高脂血症

●性別(男性であること)

●高血圧

●糖尿病等との合併

●肥満(まれに、女性では皮下脂肪型肥満の方がなりやすい。)

などがリスクファクターであり、生活習慣病のひとつと考えられている。



【治療】

病期の進行に応じて、軽症では内服による治療が第一選択として考慮される。

抗血小板剤、魚油やプロスタサイクリンがある。

プロスタグランジンE1製剤や抗トロンビン剤の点滴が次に試みられる。

Fontaine 2度以上では、外科的手術による血管バイパスや、バルーン拡張やステント留置による血管内治療が考慮される。

下肢の壊死が重症である場合は、下肢の切断となることもあるが、合併症がない例でここまで至ることは稀である。

内服処方例(保険適応のあるもの)

プラビックス75mg 1錠 1x朝食後

アンプラーグ100mg 3錠 3x朝昼夕食後

プレタール100mg 2錠 2x朝夕食後

エパデールS900 2包 2x朝夕食後

ドルナー20μg 6錠 3x毎食後

注射処方例 プロスタンディン20μg 2〜3A + 生食500mL divリプル10μg 1A iv

生活指導も重要であり、特に、禁煙の必要性が非常に高い。

実験的治療:血管新生を促進するために、造血幹細胞移植が試みられている。

骨髄細胞、末梢幹細胞 (PBSCT, peripheral blood stem cell transplantaion) を患部に数十カ所にわけ注入する。

CD34陽性細胞を特に純化させている施設もある。

また血管新生を促すホルモンを産生させる遺伝子(HGF, VEGF)を筋肉注射して血管の誘導をはかる治験も行われている。

骨髄細胞移植、末梢血幹細胞移植、末梢血単核球移植については、厚生労働省が規定する先進医療として認められており、一部医療機関で保険診療との併用が認められている。




【鑑別】

●間歇性跛行(間欠跛行)を呈する疾患としては、腰部脊柱管狭窄症があり、鑑別のために画像検査などが追加されることがある。

●下肢の慢性動脈閉塞をきたす疾患としては、バージャー病があり、病歴や血管造影検査の結果などから鑑別する必要がある。

●下肢の急性動脈閉塞症は、血栓や塞栓によって下肢の大血管が突然完全閉塞することにより、激痛が生じ、急速に壊死に陥る。




【予後】

ASO自体の予後は良好。

手術療法などにより治療可能であり直接の死因とはなりづらい。

しかし患者は全身の動脈硬化をきたしていることが多く、10年程度で何らかの合併症により過半数が死亡するという報告もある。


posted by ホーライ at 10:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 心臓と血管の病気 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月04日

肝臓で合成される血中の主たる輸送体蛋白とは?

問題1.次の説明文に該当する項目は?

肝臓で合成される血中の主たる輸送体蛋白。

栄養状態の悪化や肝障害の程度を反映して低下する。


(A)アルブミン(Alb)   (B)ALT





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   答え
」」」」」」」」」」」」

(A)アルブミン(Alb) 



【参考】

ALTとはalanine aminotransferase 。

肝細胞の破壊に伴い血中に逸脱する酵素。

AST(GOT)よりも肝に特異性が高く、肝炎の病勢指標に用いられる。





問題2.次の説明文に該当する項目は?

血中のアルブミン(A)とグロブリン総量(G)の比を算出したもの。

重症肝疾患やM蛋白血症で低下、無γ-マグロブリン血症で上昇。


(1)A/G   (2)AST





」」」」」」」」」」」」
   答え
」」」」」」」」」」」」

(1)A/G 


【参考】

ASTとはasparate aminotransferase 。

代表的な肝機能の指標。

肝細胞障害で血中に逸脱するが、骨格筋、心筋、赤血球などの破壊でも上昇をみる。


posted by ホーライ at 21:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 臨床検査 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

狭心症は(     )等にアクシデントが発生し、心臓への(      )の供給が減少し、胸痛がおこる。

問題1.次の文章のかっこを埋めよ

狭心症は(     )等にアクシデントが発生し、心臓への(      )の供給が減少し、胸痛がおこる。








=================
   正解
=================
狭心症は( 冠動脈 )等にアクシデントが発生し、心臓への( 酸素 )の供給が減少し、胸痛がおこる。








問題2.次の問いに答えよ

狭心症にニトログリセリンの舌下錠が使われるが何故か?









=================
   正解
=================
・即効性を確保するため。 

・初回通過効果を防ぐため・・・など






問題3.

通常の心拍数は次のどれか(単位:回/分)

1)40〜50

2)80〜90

3)110〜120








=================
   正解
=================

正解は2)です。


脈拍 hart rate (HR)

基準値 
80〜90回/分

高値を示す病態
頻脈 ; tachycardia 100以上

低値を示す病態
徐脈; bradycardia 50以下
posted by ホーライ at 21:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 心臓と血管の病気 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月02日

■■■ 心不全について(5) ■■■

【手術】

特定の基礎疾患が認められるときには手術が適切であると考えられる。

通常,心不全患者の手術は専門施設で実施するべきである。

先天性または後天性の心内シャントは外科的縫合により治療できる。

虚血を軽減するための冠動脈バイパスグラフト術は一部の虚血性心筋症患者に有用である。

もし心不全が主に弁膜異常によるものであれば,弁修復術または移植を考慮する。

原発性僧帽弁逆流症患者は,心筋機能不良が術後も継続する可能性のある,左室拡張に続発する僧帽弁逆流の患者よりも利益を得られる可能性が高い。

手術は,心筋の拡大および損傷が不可逆的になる前に行うことが望ましい。



心臓移植(移植: 心臓移植を参照 )は,重度の難治性心不全を有し,他に生命を脅かす疾患のない60歳未満の患者に対する最適な治療法である。

生存率は1年目で82%,3年目で75%である;しかしながら,ドナー待機中の死亡率は12〜15%に上る。

ヒトの臓器提供は依然として少ない。

左室補助装置は移植までの橋渡しとなるが,ごく一部の特定患者では恒久的に使用される場合もある。

人工心臓はまだ実行可能な代替治療ではない。

現在研究中の手術の選択肢には,拡張の進行を減少させる抑制装置の植込みおよび心室修復術と呼ばれる改良型の心室瘤切除術がある。

力学的心筋形成術および拡大心筋部分切除術(バチスタ手術)はもはや推奨されない。



【薬物】

症状緩和のための薬物には利尿薬,硝酸薬,ジゴキシンがある。

ACE阻害薬,β遮断薬,アルドステロン受容体拮抗薬,およびアンジオテンシンU受容体拮抗薬は長期管理に有効であり,生存を改善する。

収縮機能不全と拡張機能不全とでは異なる戦略が用いられる。

重度の拡張機能不全を呈する患者は血圧や血漿量の低下に十分に耐えられないため,利尿薬や硝酸薬は低用量で用いるべきである。

肥大型心筋症患者(心不全および心筋症: 肥大型心筋症を参照 )では,ジゴキシンは有効でなく,有害となりうる。


●利尿薬:

利尿薬は症候性の収縮機能不全の患者全員に投与される;用量は,体重が安定し症状が緩和される最低用量に調節する。

ループ利尿薬が望ましい。

フロセミドが最も頻用されており,20〜40mg,1日1回で経口投与を開始し,もし反応および腎機能に基づいて必要であれば120mg,1日1回(または60mg,1日2回)まで増量する。

ブメタニドは代替薬である。

難治例では,フロセミド40〜160mg静注,エタクリン酸50〜100mg静注,ブメタニド0.5〜2mg経口もしくは0.5〜1.0mg静注,またはメトラゾン2.5〜10mg経口が相加作用を示すことがある。

ループ利尿薬(特にメトラゾンと併用時)は,低血圧症,低ナトリウム血症,低マグネシウム血症,および重度の低カリウム血症を伴う循環血液量減少を引き起こすことがある。



●ACE阻害薬:

禁忌(例,血漿クレアチニン> 2.8mg/dL[250μmol/L],両側腎動脈狭窄,片腎の腎動脈狭窄,またはACE阻害薬による血管性浮腫の既往)でなければ,収縮機能不全患者全員にACE阻害薬を経口投与する。

ACE阻害薬は,アンジオテンシンUの産生およびブラジキニンの分解を抑制し,これらは交感神経系,内皮機能,血管緊張,および心筋機能に影響を及ぼすメディエーターである。

血行動態作用には,動脈および静脈の拡張,安静時および労作時の持続的な左室充満圧低下,全身血管抵抗の低下,心室リモデリングに及ぼす好ましい作用がある。

ACE阻害薬は生存期間を延長し,心不全による入院を減らす。

粥状動脈硬化および血管障害の患者では,これらの薬物は心筋梗塞および脳卒中のリスクを低下させうる。

糖尿病患者では腎症の発症を遅らせる。

したがって,ACE阻害薬は拡張機能不全およびこれらの障害のいずれかを有する患者に用いられる。




●アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB):

ARBがACE阻害薬よりも優れているとは証明されていないが,咳嗽および血管性浮腫の発生頻度は低いようである;ARBは,このような副作用によりACE阻害薬の使用が禁じられるときに使用できる。

ACE阻害薬およびARBが慢性心不全に同等の効果を示すかは不明であり,その最適用量はいまだ研究中である。

通常の経口標的用量は,バルサルタン160mg,1日2回,カンデサルタン32mg,1日1回,ロサルタン50〜100mg,1日1回である。ARBおよびACE阻害薬の導入,漸増,モニタリングの方法は同様である。

ACE阻害薬と同様,ARBは可逆的な腎機能不全を引き起こしうる。

急性疾患による脱水または腎機能不良が生じた場合は,ARBの一時的な中止が必要となりうる。

症状が持続し入院を繰り返す心不全患者に対しては,ACE阻害薬,β遮断薬,および利尿薬にARBの追加を考慮するべきである。

このような併用療法では,血圧,血漿電解質,および腎機能のモニタリング回数を増やす必要がある。



以上


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2014年05月01日

■■■ 心不全について(4) ■■■

【治療】

特定の障害(例,急性心筋梗塞,心室拍動数の増加を伴う心房細動,重度高血圧症,急性弁逆流)による心不全を有する患者,ならびに肺水腫(心不全および心筋症: 肺水腫を参照 ),重度の症状,新規発症の心不全,または外来治療に不応の心不全を有する患者では,早急な入院治療が必要である。

過去に心不全と診断され,それが軽度増悪した患者は在宅で治療可能である。

主要な目標は心不全に至る障害を診断して修正または治療することである。



短期の目標としては,症状および血行動態を改善すること,低カリウム血症,腎機能不全,および症候性低血圧症を回避すること,神経液性因子の活性化を修正することが挙げられる。

長期の目標としては,高血圧症を修正すること,心筋梗塞およびアテローム硬化を予防すること,入院回数を減らすこと,生存率および生活の質を改善することが挙げられる。

治療には,食事および生活習慣の変更,薬物(心不全および心筋症: 薬物を参照 ),ときに手術が必要となる。



食事性Naの摂取制限は体液貯留の制限に役立つ。

全ての患者は,調理時の食塩使用をやめ,食卓に食塩を置かず,塩分の多い食品を控えるべきである;最重症患者では,減塩食品のみを摂取することでNaを1g/日未満に制限すべきである。

毎朝の体重モニタリングはNaおよび水分貯留の早期検出に役立つ;もし体重が4.4kgを超えて増加したならば,患者自身が利尿薬の用量を調整することも可能であるが,体重が増加し続けたり症状が生じたりするようであれば医療機関を受診するべきである。

粥状動脈硬化または糖尿病の患者は各自の障害に応じた適切な食事を厳守すべきである。

肥満が生じる場合があり,これは常に心不全の症状を悪化させる;患者はBMIで21〜25を目指すべきである。



症状に合わせた定期的な軽い運動(例,歩行)が一般に推奨される。

骨格筋の機能低下は機能的状態を悪化させるが,運動はこれを予防する;この方法が生存を改善するかは研究中である。急性増悪期には安静が適切である。



治療は患者に合わせて行い,原因,症状,および副作用を含む薬物に対する反応を考慮する。

収縮機能不全と拡張機能不全とで治療はいくぶん異なるが,重複する部分もある。

患者や家族は治療選択に参加するべきである。

患者や家族には,服薬遵守の重要性,代償不全を警告する徴候,および症状緩和のための追加薬物の使用について指導するべきである。

症例の一元管理,特に服薬遵守ならびに予定外の来院や救急搬送および入院の頻度をモニタリングすることで,介入が必要な局面を同定できる。

心不全を専門とする看護師は,事前に設定されたプロトコールに従って教育,経過観察,用量調整を行う際にきわめて役立つ。

多くの医療施設(例,専門外来クリニック)では,様々な分野の医療従事者(例,心不全を専門とする看護師,薬剤師,ソーシャルワーカー,リハビリテーション専門家)を集学的治療チームまたは外来心不全管理プログラムに組み入れている。

このような試みにより転帰を改善して入院を減少させることが可能で,最重症患者では非常に効果的である。



高血圧症,重度の貧血,ヘモクロマトーシス,コントロール不良の糖尿病,甲状腺中毒,脚気,アルコール中毒,シャーガス病,またはトキソプラズマ症の治療が成功すれば,患者は劇的に改善する可能性がある。

広範な心室浸潤(例,アミロイドーシスにおける)の管理は依然として不満足な状況である。



(明日へ続く)

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